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1話 サキュバスの世界に転生

 目の前が、真っ白だった。


 頭がぼおっとして、足の感覚がない。何も感じない。なのに、何かを強く実感していた。


(あ、俺……死んだな。)


 あの朝、いつもと同じように通学して、イヤホンをつけたまま信号を無視して……


 トラックのクラクションが、最期に聞いた音だった。


 トラックの運転手に迷惑をかけまくっちまうな。


 やっぱ歩きイヤホンはやめるべきだったか。もう後悔しても遅いけど。


 そして今、俺は真っ白な空間の中にいた。

 

 体も、声も、何もない。でも、意識だけが漂っている。


「……ふむ、やっと目覚めましたね。運命の精気の持ち主さま」


 女の声だった。静かで、それでいて凛として、美しい旋律のような声。

 

 気づけば、目の前に金色の瞳を持つ女性が立っていた。白く輝くドレス、背中には光の羽。神々しすぎて、正視できない。


 明らかに普通の人間とは違う美人だ。


「あなたの名は………“雄大”でしたね。ようこそ、死後の世界へ」


「……あの、俺、死んで……?」


「ええ。即死です。内臓破裂、脳への衝撃即停止、というわけで」


 あまりにもさらっと言われて、リアクションが遅れた。


「生々しく言うなー!……想像しただけで痛い、、」


「でもご安心を。あなたには“転生”のチャンスが与えられます」


「は? 転生? 俺、異世界転生とか興味ないんだけど……」


 いきなり別の世界で生きるなんて無理だろ。


「あなたの“精気密度”、異常なのです。今のこの世界

 “夢淫界”は、精気不足により滅びかけております」


「……精気って、アレのこと?」


「はい、性的なエネルギーです♡」


 さらっと微笑んだ。言葉の意味はわかるが、頭が追いつかない。


「雄大さん、あなたの精気は、一度も発散されなかったがゆえに、極限まで高濃度に蓄積されているのです。だからこそ……」


「ふざけんな! 言わせておけば好き勝手よー、俺の悲しい前世のことを声に出して言うなー!!」


 俺がキレてたら女神は手をすっと振る。そこには、赤い月の下、艶めかしい姿の少女たちが、暴れ狂う光景が映っていた。


「これは……?」


「“夢淫学園”です。サキュバスたちの学園。しかし彼女たちは定期的に精気を摂取しなければ、理性を失い暴走してしまう種族……。今、暴発寸前なのです」


「そこに俺を? 俺を差し出すわけ?」


「あなたしかいないのです、雄大さん。ただし、あなたの身体には“封印”を施しました。すぐには発散できません。真実の愛によってのみ、妊娠可能な精気=生命精気が解放されます。あっでも常に妊娠しない精気は溢れてますよ。」


「精気がオーラみたいに出るってことか。後、それじゃあ俺、勃たないってこと?」


「言い方……でも、はい♡」


なぜか嬉しそうだ。


 つまり、俺は精気を常に気体で出してるのか。目に見えないらしいけど。そして、一人を選んで愛し合うと妊娠できるようになって、そしたら色んなサキュバスが、俺の常に出てる精気で妊娠するのか。


「でも、俺、童貞で女の子に免疫なくて……」


「……だからこそ、あなたは“純粋”なのです。サキュバスたちと出会い、心を通わせ、愛し合い、そして、世界を救ってください」


 光が満ちる。女神の手が触れた瞬間、意識が途切れていく。


「がんばって、雄大さん。あなたの精気は世界を救う、奇跡なのですから♡」


---


 目覚めた瞬間、視界には柔らかな桃色と、すごく近い顔があった。


「おはよう、雄大くん♡」


 にっこり笑うその少女、ツインテのサキュバス・リリムが、甘く囁いた。


「うわっ!? ち、近っ……! 誰……?」


「うふふ、リリムだよぉ。今日から一緒に、いっぱい“学ぶ”んだから♪」


 こうして俺の、唯一の男としてのサキュバス学園ライフが、始まった。

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