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第3話 正体(相手)

3話目です。よろしくお願いします。

第3話 正体(相手)



 何時までも私が動かないからか。

 つまり欲のままの行動を起こさない私を誘うためか、彼女は私を抱きしめた。

 体を密着させ、ふくよかな彼女の胸が私に押し付けられる。

 そして、私の唇に彼女の薄紅色の艶っぽい唇が近付き、私を抱きしめる片方の手が、私の股間をまさぐり始めた。


「!?」


 彼女は途端に私から離れた。


「何者だ! お前は!?」


 声は美しく澄んでいるが、明らかに不審な声音で裸の彼女は尋ねる。


「そりゃあ、地球人さ」


「地球人とは皆そのような者なのか!?」


 ガバッと彼女がいる大地が割け、彼女は割けた穴へと落ちて行く。

 穴はますます広がり、私の方まで迫って来るので、私は逃げ出した。


「安心しろ! オマエのような不純物など喰わぬわっ!」


 穴から声がする。初めは女の声だったが、次第に野太く、大地全体に響くような音量となっていく。

 私は大穴を覗いた。


「!?」


 中には半ば溶かされた生き物の死骸に満ちていた。

 さながら宇宙各地の知的生命体の見本市だ。

 先程、地下の構造を3Dで見ていたが、このような映像は確認されなかった。

 見事に隠避していたのか、あるいは地下内を流動的に移動させていたのか……。


 エビを思わせる頭部をした、赤褐色の屈強な身体付きと手足をした、立てば3メートルはある異星人。

 また別に、体長1メートルほどだが、地球人によく似た全身灰色の異星人。

 更に、全身緑色で猪を思わせる頭部をした、半ば溶かされた残りから察すると、丸々と太った異星人……。


 もうきりがない。あの女が彼らを襲いこの穴の中に閉じ込めたのだろう。

 よく見ると、落下したあの女もいる。彼女の身体は崩れ始め、これらの異星人の残骸へと変化し始めている。



 私は宇宙船へと走る。

 宇宙船を確認するが、仰天する。

 何と大地がうねり、草木が絡みつき、宇宙船を東の方へ。つまり海の方向へと運んでいるではないか!


 ものすごいスピードで東へと運ばれる私の宇宙船。

 私は必死に追い掛けた。

 50キロメートルもの距離を全力疾走したが、追いつかず、宇宙船はやはり動く砂浜によって、海へと投げ出される。


「くそっ! 今度は水泳かよっ!」


 私は迷わず海に飛び込み、宇宙船目掛けてひたすら泳ぎ続けた。

 泳ぎながら、私のある部分は冷静にこの現状を分析していた。


 先ず、先程見た異星人たちの死骸は、あの「女」のような姿、あるいは「男」。要するに彼らの故郷で魅力的な姿の造形をした同種族を出し、魅惑して、地の中に叩き落とした。


 何のために?

 決まっている。邪魔者なので排除して、喰らっているのだろう。

 そして、一部は先程のように彼らの体組織を使って、対象の種族を造りだすために保存。


 何故喰らっている?

 決まっている。この星の意志がそうさせているのだ!


 この惑星は、この惑星自体が意志を持った生命体(・・・・・・・・・・)で、宇宙各地から来る異星人を喰らっているのだ!


 では、生命でない物は?

 それは咀嚼できないので、惑星外へと飛ばしている。

 恐らく海を操って、高く高く、海水を巨大な噴水のようにして押し上る。それが宇宙空間に達するまで。

 あの最初に見た月にまで、飛ばして捨てているのだ。



 宇宙船は先程私が走った距離よりも、更に長い距離を流されて行く。

 だが、こいつは、私も月に捨てるつもり(・・・・・・・・・・)なので、宇宙船を流す波は次第に緩やかとなり、私はどうにか追いついた。


「緊急開錠。船内へ入ることを許可されたし」


 私は宇宙船のある部分にしがみ付き言葉を発する。

 すると、その箇所が光り、私の声と目の虹彩と胸ポケットの記章を確認すると、人ひとりが入ることが出来る緊急の入り口が開いた。 


 私が船内に入ったことを確認すると、この緊急の入り口は即座に閉じられる。

 ずぶ濡れの私は、この惑星からの脱出の準備をするため、操縦室へと急ぐ。

 周辺の海水が、恐らく「テラ004」の全海水が集まっているのか、打ち寄せる波が激しく船体に叩きつけられる。

 これがはるか上空へ、噴水のように高く吹きあがる気配を、私はひしひしと感じた。


「緊急発進! 大気圏外まで一気に上昇!」


 ほとんど全くの垂直に推進しているので、凄まじいGが操縦席に着いた私に押しつぶそうと掛かる。

 私の宇宙船は間一髪で、巨大噴水からの脱出に成功し、「テラ004」の大気圏外に出て、月の辺りまで一気に到達した。

 すぐ近くでは、噴出された海水が瞬間冷凍されている。


 月のあの例の位置にまで進み、モニターで調査車両に乗っていた時に発見した、各宇宙船の残骸を見る。

 彼ら、あの地下で半ば喰い殺されていた異星人たちが「テラ004」に来たのは、私と同じく調査のためなのか、あるいは植民のためなのか?

 いずれにせよ、この危険極まる惑星の報告は、この状況だと彼らの故郷の星へは出来てはいないだろう。


 私は一応同志と思わしき、彼らの朽ち果てた宇宙船に敬礼をした。

 意味のある行為かどうか分からないが。

 取り敢えず、エアシャワー室に入り、予備の勤務服に着替えよう。

 掃除ロボが色々と船内を動いてくれている。


 着替えた私は、狭い執務室で、この「テラ004」に対する報告書をまとめる。

 もっとも、数時間もあれば出来ることである。

 あとは冥王星基地への位置をセットして、定期的な超光速航法で、5年をかけて太陽系へ戻るだけだ。


第3話 正体(相手) 了

次は「相手」の対しての「私」の正体で、おしまいです。

まぁ、バレバレですけどね。



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