5 風の街へ 大好きだよ。
風の街へ
大好きだよ。
そこはとても不思議なところだった。
そこはとても美しいところだった。
風の街と小さな白い駅の小さな看板にはそんな文字が書いてあった。
駅には美しい緑があり、年老いた一匹の猫がいた。その代わり人の姿はどこにもなかった。無人駅だ。そんな古い作りの掃除の行き届いている綺麗な木造の駅を降りると、宝は一人、駅でお金を払い、(お金を置く箱のようなものがあった)その駅を出た。
すると、世界は緑色になった。
すべてが緑色の世界だった。
不思議なところ。
宝は思った。
こんなところに、葉ちゃんはいるんだ。
そんなことを思いながら宝は空を見上げた。生い茂る木々の間から見える空は電車の中で見た色とおんなじ青色だった。
本当に晴れた青色の空。
本当の青色がそこにはあった。
「よし」
宝は気合いを入れる。
それから土色の道の上を一人で歩き出した。
手には白い手紙を持っている。
それは葉ちゃんがくれた手紙だった。
その手紙には、『宝の地図』が同封されていた。
その葉ちゃんの(いろんないたずら書きのある)手書きの宝の地図を見ながら、宝は歩く。
葉ちゃんのいるところまで。
自分の世界で一番、大好きな人がいるところまで。