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風の街の駅から出ると森を抜けたところに小さな建物があった。そこは風の街の交番だった。(ちゃんと風の街交番と看板に書いてあった)
でも遠くから見ても近くから見ても全然交番だとわからないような建物だった。交番の中もからっぽでおまわりさんはいなかった。
「この街は『安全』だからあまりおまわりさんの出番はないんだ。でももし『おとしもの』をしてしまったときは交番にきてみるといいかもしれない。誰かがおとしものを交番にとどけてくれているはずだから」と宝を見ながら葉ちゃんは言った。
駅の近くにはいくつかの家が点々として建っていた。それぞれの家の前までは駅の前から土色の道が伸びている。交番の反対側には郵便局があった。郵便局も遠くから見ても近くから見ても郵便局だとわからないような郵便局だった。(普通のお家みたいだった)
人の姿はどこにも見えない。それどころか動物の姿も駅長さんをのぞいてはどこにもみることができなかった。(そういえば鳥の鳴き声も聞こえないな、と宝は思った)
そんなのどかな街の風景を駅前から葉ちゃんと一緒に宝はぼんやりとしばらくの間、眺めていた。(空の青と大地の緑の色がとても鮮やかだった)