ある2人のプロローグ
また新しい物語を始めました、よろしくおねがいします。
目の前に怪物が迫る。
「ジロー!」
「任せて!」
その怪物を、鎧を着た僕が剣で切り裂き、別の怪物を振り向きざまに素早く持ち替えた槍で貫く。
〘スキル:槍剣乱舞〙
「ひゅう〜さすがぁ!」
「茶化さないで、まだ終わりじゃないよ!」
「はいは〜い、ボクもちゃんとやってるよ!」
〘スキル:エクストラアタック〙
「ほらジロー?」
「おっけ!」
〘スキル:三段突き〙
神官風の衣装に身を包んだ少女が僕に攻撃バフをかけて、それを受けた僕の槍が怪物を突き、倒した。
「よし!」
「うんうん、終わったねぇ!」
パチンッ!
僕は隣に座る少女とハイタッチをして、コントローラーを机に置いた。
「いやぁ〜今日も順調だったね!」
「でもちょっとマンネリ気味かも?」
「んぅ~…まぁ、そうだね?狩場を変える??」
「でも今のレベルと装備だとここが1番効率が良いし……
「それよか楽しさっしょ?飽きたら意味ないじゃん?」
「ん…まぁ、瑞樹がそう言うなら。」
うん、そう。
僕は今、隣に座って無邪気に笑っている娘とエルネストオンライン…通称エルオンと呼ばれる、所謂ネトゲをしていた。
その娘は隣の家に住む【丸山瑞樹】。
出会いは幼少の頃で付き合いが長い幼馴染みであり親友だ。
少し茶色がかった黒髪をツインテールにして、茶褐色の猫目を細めて無邪気に笑う可憐な美少女………
黒目黒髪でコレといった特徴も無い僕なんかの幼馴染みとしては、ラノベかマンガかよってくらい出来すぎた“幼馴染みの女の子”……
いや、本当になんなんだろ。
家も隣同士だし、隣接してるからって窓から僕の部屋に入ってくるし、幼馴染みだからって油断してるのかスカート履いてる時も胡座かいて座る時もあるし。
本当になんなんだろ…………
窓から入ってくる事を注意したら『ラブコメっぽくて良いでしょ?♪』とか言われた。笑顔が可愛いかった。
くぅ……美少女って得だなぁ……………
その瑞樹は、話は決まったとばかりに手を合わせて鳴らし、はしゃぎ声を上げた。
「決まりっ♪と言ってもそろそろ寝ないとね?明日も学校だし。」
「はぁ…また君を起こすのに苦労しそうだ…
「思春期男子にはボクの寝姿は刺激的過ぎるかな?」(ニヤニヤ)
「…君、わざと寝坊してる?」
「いやいや、ボクが朝に弱いのは幼馴染みのキミならよくご存知でしょ、ジロー?」
「まぁ、そうだけどさ。」
ここはラブコメとは違うかな……
部屋が隣合ってるのもあり、窓を開けて声をかけ、それでも起きないから瑞樹の部屋に行って直接起こす、までが何時もの流れだ。
ラブコメ的にはそこは逆でしょう、とは思うものの、毎朝瑞樹の部屋に行くのも密かな楽しみではある。
仲のいい男友達みたいな奴だけど、部屋は思いの外女の子してるし、何だかいい匂いもするし…………
正直に言うと僕は瑞樹の事が好きだ。
勿論、異性として。LIKEでなく、LOVEだ。
一緒に居て楽しいし、気楽だ。
他にも悪友と呼べるオタク友達は居るけれど、瑞樹だけは幼馴染みである事を抜きにしても別格なんだ……
だからこそ、この関係を壊したくなくて、告白なんて出来やしない。
ラブコメマンガを読んでて焦れったいなコイツらと思うけど、当の自分が意気地無しなんだ………
美少女の知り合いを失いたくないって汚い打算だ………こんな僕に異性として好きだ、とか言われても、僕を異性として認識してない彼女からしたら迷惑だろうし………
まぁ、どちらにしてもきっとこの先、瑞樹はどっかのイケメンにでも彼女にされて僕からは離れていくのだろうけれど……
はぁ、やめやめ、せっかくこんなに可愛い幼馴染みが居る人生なんだ。
この青春だけでも、楽しまなきゃ損でしょ!
〈視点変更:瑞樹〉
…………とか思ってんだろうなぁ、コイツ。)
いきなりだけど。
ボク、丸山瑞樹は人生2週目だ。
まぁいきなりそんな事言ってもただの痛い人だから他の人には、例え幼馴染みのジロー相手でも言えないけどね。
ジローもオタクだから『瑞樹…マンガの影響でも受けたのかい?』とか言ってジト目を向けてくるかもね。
だけど事実なんだなぁ、コレが。
実はボク、前世と同じ世界、同じ人物に生まれ変わっている、所謂【逆行転生】というヤツをしている。
違う点を上げるとすれば、前回は男だった、という点だ。
まぁ何故そうなったかと言えば…………
~1周目にて~
ーって事があってさぁ〜♪」
「あははっ!瑞樹らしいねそれ!」
「だろぉ〜?」
「…って、あれ…?」
「ん?どしたジロー。」
「あれ、ヤバくない!?」
「っ!?ジロー!?」
ある日の学校からの帰り道、幼馴染みのジローと一緒に駄弁りながら歩いていると、爆音を上げて猛スピードで走ってくる暴走車が遠くに見えた。
この道は車の通りが少なくてたまにああいう輩が爆走していくんだ。
が、今日はその先の横断歩道に今まさに渡ろうとしている子供が居た。
どうやら友達を見つけて駆け出そうとしていて、周りが見えていない。
爆音がするから暴走車が、なんて発想も無いだろう。
それを判断したジローはすぐに走り出し、子供に向かっていく、ボクも遅れて駆け出した。
そしてー
「危なっーうわっ!?」
「ひゃうっ!?」
「っ!ジロォォーッ!!」
ドンッ!
「っ!?」
ガシャァァァンッ!!
ーえ?」
ジローが子供の手を掴んで引き寄せた、は良いが勢い余って反転し、車道へ飛び出してしまう。
そんなジローをボクは咄嗟に突き飛ばした。
今度はボクが車道に棒立ちだ。
そして、そのままボクは暴走車に撥ねられ………走り去る車の爆音を最期に…死んだ。
そして気付けばまっさらな空間に居た。
『………あれ?なんだろココ。まるでラノベでよくある神様が居る空間…的な?』
『はい、その通りですね。』
『わっ!?もしかして、神様…?』
『おや、最近の方は本当に察しが良いですね?
はい、私は女神です。』
『やっぱり…!なら頼むよ女神様ッ!今すぐボクを蘇らせて!?
あんな死に方しちゃったら親友のジローがきっと気に病む!!』
『いえ、それは出来ません。』
『………無理なの?』
『はい、それは規約違反なので。』
『なら、せめて霊体になってジローや両親にお別れを言うのは…?』
『それは許可しましょう。』
『そっか……それならまだ、良いかな……心残りはあるけれど、さよならも言えないままじゃあ、嫌だから。
それで、ボクはどうなるの?』
『あの、その事なのですが……今回は本来死ぬ運命だったのはあの子供だったのです。
本来なら介入出来ないはずのそれに介入出来てしまったばかりに、死の定めが親友様に移り、そして貴方に定まってしまった。
なので、子供を、親友を命懸けで救った勇気を称えると同時にお詫びとして特典付きの転生を、と思いここにお呼びいたしました。
ただ……そのぅ……最近は異世界転生ばかりが選ばれて飽和状態でして…なので貴方には〖逆行転生で人生やり直し〗をして頂こうかと。』
『えー……それが出来るなら特典とお詫びは今すぐ復活でも良くない…?
それが出来ないならさ、普通に輪廻転生で別の人生とかで構わないよ?
心残りはあっても、やり直したい程じゃないし。」
『やはり、そうなりますよね……』
『まぁ次は美少女に産まれてきてジローと幼馴染み兼恋人になれるとかのお礼が出来る、とかなら楽しそうだけどwww』
『え?可能ですよそれ!それで宜しいのですね!ありがとうございます!!』
『え?いや、冗談でー
『では貴方の家系から産まれ落ちても違和感の無い程度の美少女化を施して逆行転生とさせていただきます!
勿論、他にも特典はお付けしますよ!
では良き来世を♪』
『人の話を聞けよ駄女神!?そんなテンプレ要らなー
そうして、ボクは女の子、しかも極上とは言えなくても10人居たら6人位は振り返るかな?程度のそれなりの美少女に産まれ直したボクは、ここまで女の子として成長してきたのだった。
なお、性格に関しても特典の影響か、1周目…前世であった人見知りやらの陰キャ要素が微妙に消されて陽キャだけどオタク気質で陽キャよりオタク友達と居る方が楽しい、そんな残念美少女が出来上がったのだった。(ただ、曖昧なポジションだからイジメ対象になったり、逆にモテキャラになったりもしなかった)
いやまぁ、今世は普通に陽キャな女友達とか居るから完全に陰キャでは無いんだけどさ。
相変わらずイケメンは苦手だけど。
イケメンに興味が無いしモテないから女子に嫌われにくいってのもあるんだけど。
何よりボクには(自称)地味な幼馴染みが居た。
よくクラスで夫婦扱いされてからかわれるから、やっかみ対象になりにくかったし虫除けになってたんだ。
こんな、中途半端に美少女に産まれてきたボクと、前世と変わらず幼馴染みをしてくれて、なんならさりげなくボクを守ってくれるジローには今世でも頭が上がらない。
これは、そんなボクとジローの、なんでも無い日常を綴る、やり直しの物語だ。
【ねぇ親友、ボク美少女に産まれ直してきたよ?】