『おまいら15年前何してたよ』
ある中学校の教室
教壇に担任の先生が立ち、男女各生徒がそれぞれの席に座り、前から4列目の窓側の席に30代の男が座っていた。
「みんなさん 残念ですが、お知らせしなくてはならない事があります。
田松慶太さん が 今朝 事故でお亡くなりになりました。」
生徒達がざわつき、男の座る 田松の席に視線が集中した。
「先生、どうして田松が事故したのか、聞いてますか?」
「うん。田松さん は、横断歩道を歩いてわたっているところを、猛スピードで走ってきた自動車にはねられ、即死だったそうです。」
続けて担任が言う。
「田松さん は、あの事件があったせいで、心を痛め、引きこもりにもなりましたが、周りの協力もあり やっと前向きに生きようと思った矢先でした。大変残念でなりません。」
「あんなに、頑張ってたのに田松君かわいそう。」
また、ざわつく教室、涙する生徒、机に伏せてしまう者、さまざまだったが 皆 田松の事を思ったのであろう。
「皆、ありがとう。」男が小さい声で呟いた。
「何を言っているの?あんなに、頑張っていたじゃない。」
「そうだ、ここにいる みんな が見てきた。」
「事故とはいえ、やるせないよ。」
「それを言ったら、同じ じゃないか。」
「田松くん、ごめんなさい。 私のせいだよ。」
「そんなこと!ない。」男が顔を上げ、教壇前に座る生徒に言った。
5列目、窓側の生徒が男の背中をポンと軽くあてがって言う。
「田松、15年間、1人で悩んで心痛めて悪かったな。」
男が泣き始めた。
「ごめんね。田松やん。心配させて。」
「こうやって話せれば、苦労しなかったのにね。」
教壇の担任が話始めた。
「田松さん 本当にあなたは優しい生徒ですね。田松さん は もう、私の年齢を過ぎてしまいましたね。でも、本当にありがとう。ずっと先生と呼んでくれて、そして クラス全員を気遣い、思い、そして供養し続けてくれた。事故にあわれた日も、ここの硯谷さんの お墓に向かう途中でしたね。」
「いつも、ありがとう。田松くん。」教壇前の硯谷が泣き笑いしていた。
「ごめんなさい。硯谷さん、また迷惑かけちゃったね。」男も泣き笑いした。
「そうだよ。田松は、いつも俺らのお墓の前では、『ごめんなさい。』ばかりだもんな。」
あははと、クラスが笑いに包まれる。
「本当にゴメン。僕、本当に みんな とスキー教室行きたかった。風邪ひいていけなくてゴメン。」
「あーあ、田松ん にはオレらの分も生きて欲しかったのにな~。」
「ほんと、それな。」
「はいはい、皆さん、田松さんが困っていますよ。せっかく15年ぶりにクラス全員が揃ったのに。では、今日は、何の授業をしましょうか?」
「先生、僕、スキーがやりたいです。」少年の姿になった田松が言った。
「おい、田松!それ禁句。それに、今 梅雨だぞ。」
あはは、また、クラスが笑い出した。
15年前 ある中学校でスキー教室に向かう途中 バスがスリップし崖に転落し乗っていた全員の死亡の事故があった。
そして今、事故現場の慰霊碑に田松慶太の名前が刻まれている。
読んでいただき誠にありがとうございます。
Twitterトレンドにあった『おまいら15年前何してたよ』で妄想作成しました。
ちょっと、悲しいお話になってしまいましたが、イイのです。
15年前・・・・・・それは、秘密です。( *´艸`)
それでは、またお会いいたしましょう。(._.)ペコッ