過去へ
なんもないです
どこにあるかは分からない
少し小さな鳥居の下の
階段を登り切り
戻りたい時間を言うと
過去に戻れる
昼下がりの体育館、監督の怒号が聞こえてくる体育館で、
俺はどうやったらサボれるかをずっと考えていた。
「鷲塚ァ!ぼさっとしてんじゃねえ!」
「うぃーす」
はぁ...早く帰りてぇ...
今怒られたのがこの俺鷲塚鳴
わしずかなると読む
俺はその場のノリでこのバスケ部に入ってしまったが、正直後悔してる。過去に戻れるならあの時の俺を絞めてやりたい
「あとちょっと..あとちょっとだ...」
俺は体育館の時計を見ながら、そう呟いた。
〜15分後〜
「終わった...お前ら帰んぞぉ」
「俺先生に用事あるー先帰っといてー」
「僕もー」
「しゃあねぇなぁ..じゃあ谷帰んぞ」
「2人っきりだね」
「きめえよ」
こいつは谷啓介。
たにけいすけと読む
白い髪が特徴の少し変わったやつだ。
「せっかくだから寄り道して帰ろうよ。」
「俺早く帰りたい」
「ちょっとだけだから!」
「分かったよ..」
その後俺たちは色々な所を回った。
行きつけの駄菓子屋や初めて行く古本屋。
谷の後をついていってると、
「ここどこだ?」
「迷ったね。」
「俺スマホ持ってきてねえぞ。」
「僕も。」
「どうすんだよ。」
「適当に歩いてれば何処かに出るでしょ。」
「まあそうだな。」
「ん?お前どこ見てんだ?」
谷の視線の先には、少し小さく、綺麗な鳥居があった。
「僕さ、おじいちゃんに聞いたことがあるんだけど」
「んだよ」
「少し小さい鳥居の下にある、階段を登り切った後に、戻りたい時間を言うと、過去に戻れるって。」
「しょうもな。」
「一回やってみてよ。」
「一回だけだからな。」
こいつは断っても聞かないやつだ。さっさとやって早く帰ろう。
階段を一段一段登っていき、最後の一段を登ろうとしたその時、
「鳴!」
「んだよ?」
「僕を、いや皆を助けて。」
後ろを振り返ると大粒の涙をこぼしている谷がいた。
こいつって、こんな顔するんだな。
「何言ってんだよ?」
「登り切ったら時間を言うんだろ?」
「5時間前へ」
「やっぱ何もねえじゃん。早く帰んぞ。」
後ろを振り向くと、誰もいなかった。
そこにいたはずの谷の姿はなかった。
何かがおかしい。
さっきまで夕日が鳥居を照らしていたのに、ずいぶんと明るくなっている。
「もしかして俺、
過 去 に 戻 っ た ?」
俺の人生の歯車が、大きく動き出した?
多分続きます