プロローグ編
第1回
Aという言葉に僕は何を考えるだろう。
それは何?何も考えない?
なぜか、Aに対して何も浮かばない何故だろう・・・・
「はあああ」僕がおきるのはいつもこの時間である。
目覚ましは必要ない。目覚ましがセットしてあるのは
7時5分。僕は目覚ましより先に目を覚ますのだ。
ここ何年かは目覚ましに負けていない。
まあ、そんなものに勝った事でなにも得しないけど。
朝起きるといつもと同じ風景が僕の目に映し出される。
窓から入るかすかな光が僕の目を照らす。
時計を見ると7時を少し過ぎたぐらいだった。
「さてと・・・」
僕はそういうとベットから降り、階段を下りて1階に下りた。
1階に下りるとなにやら、声が聞こえてくる。
無論、いつも朝見ているmezamasuTVである。今日も
大田さんが頑張っている。いつも思う、若い人が続々と
出てくる中、大田さんは頑張っている。なぜか、少し僕は
尊敬してしまう。どうでもいいことでもあるけども。
「あっ起きたの。朝ごはんできてるわよ」
母の声である。僕の家は5人家族である。公務員の父(45)
に元アイドルの母(35)と妹(13)と僕である。あと1人は犬の
ラズベリーである。今年で1歳になるチワワのメスだ。
勿論、とあるCMのせいで父が衝動買いしてきた。
まあ、かわいいから良かったんだけど。最近はラズベリーの
性格がひねくれてきた。僕に対して、対抗心だろうか?吼えて来る。
犬にまでなめられてる。
悲しい感じだ。
「何作ったの」
TVでは大田さんがスポーツの解説をしている。
食卓には即席で作ったような食パンに昨日の残りのポテトサラダが
包まれたサンドイッチ。それに牛乳だ。何かうんざりする。
「コレよ見て分からないの?」
母は僕の言葉に少し怒ったようだ。
何作ったのという言葉だ。
「分かるけどさ」
僕も馬鹿じゃない。見て分かる。どう見ても、昨日の残りで作ったサンドイッチ
と牛乳。それ以外に見るほうが難解であるし、あり得ない。
「分かるなら、文句言わずに食べなさい」
そういうと母はTVを再び見始めた。
まあ、いつものことだ、考えても変えようとしてもいつもどおり。
変ることもない風景。
僕は朝食を食べ終わり、学校に行く準備をする。僕は高校生である。
今は2年生。真ん中だ。中途半端な学年ともいえる。
「わんわん」
靴を履き家を出ようとするとラズベリーが出迎えに来る。
これもいつもの風景だ。変わりないいつもの風景が今日も訪れる。
僕はラズベリーに送られると一路学校へ行く。
学校までの距離は13.3KMだ。実際に
はかっては無いけど、入学前に車で行ったときに
車のメータがそのくらいだった。かなりの誤差はあるかもしれない。
とりあえずは近くの佐久崎駅まで10分ほど歩いて、そこから
20分ほど電車に乗り市役所前駅で降りる。駅を出て左向い
たらそこには僕が通う高校がある。
なんて無い道のり。
だから何も起こらない。ただ平凡に・・
いつも思うけど、駅までの10分の道のりが長い。
7時半に家を出て、7時50分の電車に乗る。それまでに友人
と待ち合わせしてる。この友人を待つのも長い。いつも
友人の家ではドタバタ劇が繰り広げられる。
「ピンポーン」
僕の家から駅までの半分ぐらいのところに友人の真鍋正太郎
の家はある。
家は1軒やだ。たしか彼の親はとある銀行の幹部だった。
僕とは少し違うところの人間だ。
「あっ、俊君ゴメン。あいつさあ、まだご飯食べてる」
インターフォンを鳴らすと、正太郎の双子の姉の姿がある。
セーラー服に髪型はショートカット。典型的な体育会系。
正太郎は2人姉妹。双子の姉、真鍋夏と正太郎。僕が小さい頃からの腐れ縁だ。保育園からの友人も
沢山いるけど、真鍋姉妹とはそれ以前からの仲である。
「えっ、まだ食べてんの?」
もう電車には間に合わない状況だ。いつもであれば、マンガ
のように正太郎は食パン口にくわえて、急いで出てくるのだけど
「うん。あいつさあ。寝坊したみたいで5分くらい前に
起きてたよ」
そういいながら、夏は靴を履いている。
僕は心なしか、あせっていた。それは今日の1時間目は体育である。少しでも遅れると凄く
怖い先生から頭をたたかれる。それが涙が出るほどに痛い。僕はたたかれてあの世を見た気もする。
僕は正太郎のせいで3度もあの世を見た。
今日も経験したら正太郎と並ぶ4回目。天国ではなく地獄行きの
汚名ももらう形になる。嬉しくも無い勲章だ。
「正太郎!」
夏が正太郎を呼んだ。
「なんだよ!」
ご飯を口に入れているせいかモゴモゴした口調で正太郎の
声がする。
「俊君来てるけどさ。あんたまだ出れないよね?」
夏は僕に救いの手を差し伸べてくれた。コレで僕が勲章を
得る可能性は低くなった。代わりに正太郎が単独トップに
なる。
「当たり前だろ。俊先に行ってろ」
可能性は消えた。
「体育には間に合えよ!」
僕はそういうと真鍋家の玄関を出た。
出る間際に正太郎の今日は体育かという声が聞こえた気がした。
僕は駅に向けて少し早めに歩き始める。
電車の時間は7時50分。今は39分だ。
まだ余裕圏内ではある。
「待ってよ」
・・・・早歩きの僕を後ろから邪魔する。
「夏。何さあ」
後ろを向くと勿論、夏がいる。
「そんなに、急がなくたって良いじゃん」
「っまあ、電車には待にあうけど」
夏とも同じ高校である。夏は3組。僕は2組。正太郎は
2組。
「こうやってさ、一緒に通学するのも小学校以来だね」
・・・気が付くと夏は僕の横を歩いていた。歩く先には
駅が見えていた。
「うん。中学からは部活はじめたし」
僕は中学時代は陸上部。今は帰宅部。内緒で近くのコンビ二
でバイトをしている。夏はテニス部である。
「なんかさあ。懐かしいね」
・・・・
「あの頃はさあ、よく3人で遊んだし」
・・・・
「今度の休みに3人でどこかに行かない」
・・・・
「うん。いいけど」
夏の話を聞いているうちに自然に約束してしまう。
定期を眠そうな駅員に見せてホームへ行く。
この時間帯は通勤時間帯ということもあり
たまらないほど、つぶされそうなほど人が多い。
「今日も多いね」
夏も嫌そうな顔をしてホームに詰まりきった人魂をみる。
「この時間帯はどうしようもないよ」
「だねえ・・・・」
久しぶりに夏と駅まで歩いたのがなぜか新鮮だった。
「夏さあ。いつもは誰と通学してるの?」
「いつもはね。ハルとしてるんだけど。仕事で1週間いないの。
明日までは1人通学の予定だよ」
ハル?よくは知らないけど、夏の友人だろう。
「じゃあさ。明日は3人で行こうか?」
明日は正太郎も含めて通学しようかと誘う。
「うんいいよ」
うれしそうに夏はニコッとうなずいた。
「2番乗り場に市役所前行き電車が到着します。黄色い線までお下がりください」
アナウンスが聞こえる。
いつもと変わりない風景が今日もある。変わらない。
その物語が展開されるはずだった。
ザッ・・・・・何か鋭い音がした。
「・・・・・」
何か僕は感じた。
・・・・・へっ・・・・何か違う。
アナウンスがあるとすぐに電車は来るのにこない。
僕は周りを見た。
・・・・・夏がニコッとしたまま動かない。
・・・・・周りの人やトリも動いていない。
えっ?
「どういうことだ」
僕は時計を見る。時計は7時49分30秒で止まってる。
・・・・
信じられないが僕以外のすべてのものがとまっている。
動いているのは僕だけだ。僕だけの時間は進む。
「・・・・・夏、からかってるんだよな?」
僕は夏の顔を見てそういう。情けない顔をしているだろう。
しかし、夏はニコッとしたまま動かない。
何が起きたのか?僕には分からない。
「集団でドッキリ企画だな!」
僕はそう思い隠しカメラを探す。
無い。時計は動かない。人も動物も太陽も。すべてがとまっている。
動いているのは僕のみ。
「・・・・・うわああああああああああ・・・・」
僕は何か分からないものに押しつぶされその場にしゃがみ
叫んだ。・・・・どうしようもない。何か分からない。
「どうなってるのか?何故とまってるの?」
僕はしゃがみこみつぶやいている。
・・・・絶望に僕は覆いかぶさられた。
「君さあ。何者なの?」
背後からしないはずの声が聞こえた。
声がした方向を見ると、黒いサングラスをかけた男がいた。
髪型はぼさぼさの金髪。服装はジーパンに東京ファンと大きく
書かれたTシャツである。見た目は10代のようなかんじ。
「何者って・・・・」
僕はそういうと何もいえなくなる。
男は少し苦笑いした。
「何者もないよ。何でお前は動いてる?」
サングラスのしたの鋭い目が僕をにらんだのが分かる。
何故動いているといわれても困る。逆に僕は聞きたい。なにも誰とも変わらない
普通の人間。代わったところといえばアイドルの子供ということぐらい。
僕は少しおびえている。
「おびえてるのか?俺は脅しては無いぜ!聞いてるだけだ」
・・・男は僕に詰め寄り、僕の胸倉を掴む。
「ぐっ・・・・・」
僕は息ができないぐらい苦しい。
「脅すってのはこういうことだろ?」
そういうと男は僕から手を離した。
「・・・・げほ・・・・」
・・・・殺される?それ以上の恐怖かもしれない。
動いてるのは僕とこの男だけ。だれも助けることは無い。
どうする?僕の頭に選択肢は浮かばない。
「聞いてるだけだ。何者だ?」
男はしゃがみこみ僕の顔まで顔を近づける。
「・・・・・普通の人間です・・・」
恐怖のあまり僕は震えながら答えた。何もできない、僕自身は。
「。普通の人間ねえ。まあ、セーフな答えだ。あのなあ。俺は名倉って言うんだ」
・・・・
男はそういうとにこりと笑う。少しだけ僕から恐怖が消える。
「僕は薙沢 俊といいます・・・」
自己紹介をなぜかしてしまう。
「薙ねえ。アンタさあ。この状況をどう思う?」
この状況。無論、僕と名倉以外がとまっている状況のことだろう。
「何がなんだか・・・・」
今の僕にはコレしか答えることができない。
「まあ。そうだろな。時が止まってんだ。何がなんだかわかんないよな」
そういうと名倉は高笑いをする。音も無い中で笑い声だけが響き渡る。
「誰がこんなことしてるんだと思うか?」
「・・・・」
・・・・そんなことが分かれば苦労しない。
「神ぐらいしかできねえと思わないか?時間止めるなんてさ」
「・・・・神ですか?」
僕は異空間にいる。それとも夢?そう思いたい。しかし、これは夢でもなんでもない
現実の世界。
「神=俺だよ。ということは分かるか?薙」
・・・・
「名倉さんが止めてる?」
・・・・・現実にはありえない。名倉は僕のその言葉を聞くとにやりと口元が動いた。
「そうさ。時間を止めるのは俺。凄いだろ。自分の好きなときにとめれるんだぜ!」
嬉しそうに語る名倉。
「・・・・」
「俺以外はとまった空間ではいないはずなんだけど、薙はいるんだよなあ?それが
わかんねえ」
・・・・・僕にも分からない。どうせなら僕も一緒にとまればよかったと思う。
「まあ、コレもなんかの縁かもな。もしかすると薙もこの能力があるかもしれないぜ」
・・・・時を止める能力ということだろうか?
「・・・・・」
「神は同じ能力は与えないはずだしな、俺も何年も生きてきて動いてる奴に出会ったのも初めてだ
他の能力かもしれないぜ。ははははははっは・・・」
名倉はそういうとまた高笑いする。
「さて、そろそろ動かすかな」
そういうと名倉は指をピンと鳴らした。
・・・
「またな。薙」
・・・・そういうと名倉はその場から歩いていく。
「助かったのか?」
・・・・
「何しゃがみこんでるの?」
不思議そうに夏が見ている。
「ああああ・・・良かった」
僕はそういうとなぜか涙が出ていた。
「どうしたの?俊君・・・・・」
・・・・・・僕はもう現実へは戻れないのかと思っていた。その分の嬉しさかもしれない。
「なんでもないよ・・・・」
僕はそういうと満員の電車に乗った。
・・・・佐久崎市繁華街
「誰か。能力つかったね?」
・・・繁華街を歩く3人組がいる。
1人は小学生だ、パソコンを見ながら歩いている。
「知らない。関係ないじゃん。能力者同士は干渉できないんだから」
制服姿の女子高生である。髪の毛は後ろで束ねてある。
「能力なんて、ほとんどが使えないものですよ」
後1人は牧師のような格好をした大男である。背中には神命と書かれている。
異常な3人組といえるだろう。
「つかえるか。つかえないかも能力次第です。僕のコンピュータによると2人の能力者が同時に
使ったみたいです」
そういうと小学生はメガネを手で上げる。
「ふうん。故障でしょ?これポンコツだし」
そういうと女子高生は少年のパソコンを指でぴんぴんとたたく。
「ポンコツじゃありません。故障もしてません!」
ポンコツといわれ、少年は怒る。少年はパソコンをいじり始める。もしかするとと思ったのだろう。
無論、繁華街を歩いているほかの人から見れば異常な3人組だ。
「けど、ありえないでしょ。干渉できないのよ?」
「故障はしていませんね。パソコンは正常ですよ」
牧師はそういうと少しにやける。
「ありえないじゃん」
「確かに考えることはできませんけどね。まあ、流クラスが能力を使ったのかもしれませんね」
「・・・・どういうことよ」
「彼クラスならありえると思うからですよ」
不適に牧師は笑った。