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trailrunners④新たな目標  作者: 千原 文則
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新たな目標

 陣場山トレイルレースから二週間が経過する。瞳と仁は、千葉に向かっている。

「足もう大丈夫なの」 

瞳が何気なく聞く。

「全治三週間って言われたよ。でもさ‼️もう普通に歩ける」

「じゃあ、新たにレース出ようよ。今度は40キロ、行けるでしょ」

「マジか。今の倍じゃん。体力もつかな」

「また弱気、大丈夫だよ、サッカーやってたんだし」

「どこでやるやつ」

「美ヶ原。長野県。景色いいと思うんだよな」

「とおーい。宿泊しなきゃ、行けないじゃん」

「大丈夫。保養所あるんだ。長野の美ヶ原に。うちの会社。安く泊まれるよ」

「いくら位、何で行くの」

「車で行く。自分の車でね。宿泊は6000円で朝夕食事つき」

電車は千葉駅に到着する。瞳と仁は、駅から歩いて、サーモンショップ千葉に向かう。

「あらー、いらっしゃい」

板倉が二人を歓迎する。

「こんにちはー、今回はレインウエア見に来ました」

瞳が板倉に答える。

「どのタイプがいいのかな。イロイロあるわよ」

「レースの規定を満たすのが、欲しいですけど、有りますか」

「どのレースの規定かしら。どこのレース出るの」

「美ヶ原トレイルレース、40キロです」

「あー、アルアル。この辺から上かなぁ」

板倉は、棚の中段辺りを物色する。

「これなら、UTMFの規定でもクリアできる優れものよ。いっそ、若いだからUTMF目指したら。目標大きく、チャレンジすればいいかも」

「まぁ、なくはないですね。取り敢えず❗トレイル100キロ目標にしてみたんですけど…」

「それなら、美ヶ原、40じゃなくて80にエントリーしたらどうかな。時間はたっぷりあるしさ、なんたって、若いだから」

板倉は、瞳乗る肩を叩く。

「いきなり、80って、無理だよ。まだ始めたばかりだしさ、トレイルどう走るか、わかんないのに…」

仁が、答える。

「大丈夫よっ、美ヶ原トレイル迄約半年あるだし、トレイルの走り方なら、ほら、これ見て、講習会やってるから、出てみれば」

板倉は、レジ脇のチラシを二人に渡す。

「何事もチャレンジ、チャレンジ。なんとかなるものよ。私なんか、最初、陣場山トレイル、制限時間に引っ掛かったのよ。今じゃ、信州五岳、ハセツネ完走してるけどね」

「どうしたら、そんなに走れるようになるですか」

「楽しむ事よね~。何事もポジティブに考えるのよっ、難しく考えず、一歩だけ先を見る。100キロ走るってよりも、まず一キロ。クリアしたらまた一キロ先を見て走るのよ。そうすればつもり積もって100キロになるから」

「そんな簡単なものですか。何かコツとかないんですか」

「そうね~。まずは自分が走りきれるって信じることね。信じてると意外と出来ちゃうものよ。コツね~。まぁ、山を好きになることかしらね、ここは歩く、ここは走るって山によって違うけど、山で遊んでるだから、沢山の山に行ってみることよっ、そのうちにどこを走ってどこを歩くってレースの時にも分かるようになるものよっ、ともかく、経験がもの言うから」

板倉は、二、三個レインウエアを出し、詳しく説明をする。瞳と仁は、それぞれ気に入ったレインウエアを買い上げる。

「UTMFに出るには、けっこう認定レース出なきゃ行けないですよね」

瞳が板倉に言う。

「そうよっ、認定レースを確か3本かなぁっ、ちょっと定かじゃないけど、その認定レースを完走しなきゃ、出れないけど、でもねっ、日本で一番デカイレースなのよ。出る価値はあると思うよっ」

「ありがとーございます。検討してみますね」

瞳と仁は、店を後にする。 


それから二週間が経過した。瞳と仁は、高尾山でトレイルの講習会に参加している。

「はい、それでは今から山頂迄、ダッシュしましょう」

菅野がニコニコしながら言う。『えーっ、』参加者一同、びっくりした声を上げる。

「大丈夫ですよっ、すぐですから、ではスタートっ」

管野はそういって走り出す。参加者達も走りだし、それに瞳と仁はついていく。始めは緩やかで、ついていけるが、徐々に傾斜は上がっていく。参加者達も、一人、又一人と歩き出す。仁は、すぐに歩き出した。瞳は、小刻みに走っている。

「仁、ここは走ろーよ」

瞳の一言で仁も走り出すが、すぐに息が上がり、足がきつくなってくる。

「じゃあ、ここで一回休みましょう。そして登り方の講習しますね」

管野はそういって、皆を座らせる。参加者はおのおの水分補給する。

「じゃあ、講習会ね。まずは見てて下さいね」

管野は軽快に少し下ると、参加者の前を小刻みに軽快なステップで上って行く。

「こんな感じて、やってみてください。じゃあ、まずは樋口さんから」

管野は、一段登り終えたところで待機している。指命された樋口から順次参加者が、小刻みなステップを真似て上って行く。いよいよ、仁の番。仁も真似して上って行く。

「いいね、その感じ。後はもう少し重心を前にすればいいよ」

管野は仁にアドバイスする。続いて瞳が軽いステップで登ってくる。

「ナイス、マスターしたね。登り方。その調子」

菅野の助言に、満面の笑みを浮かべる瞳。その後、高尾山山頂迄行き、下りは下り方講習会をして、下山する。講習会はこうして幕を閉じた。

 瞳と仁は、高尾駅前のドトールに行く。店内はわりかし混んでいる。

「講習会にいましたよね」

樋口が、瞳とと仁に言う。

「はい、あなたは」

「樋口了一です。講習会の時、1番先に走った。良かったらご一緒してもいいてすか」

樋口の言葉に、瞳も仁もオッケーを出し、三人でドトールの一角に座り、身の上話を始める。

「てな事っでトレイル始めたんですよ。だから、長距離のレース目指して、今、伊豆トレイルジャーニーの参加資格を目標に30キロ以上のレースに出てるんですよ」

「ウルトラなってたんなら、楽勝じゃないですか、トレイル30キロ位」

「それが、そうでもないんですよっ。ウルトラは距離長いですけど、ほとんど

ロードなので。だからトレイルの登りと下り方が今一でして」

「僕らは、今、来年の7月の美ヶ原にエントリーしようって考えてて、80キロにするか40キロにするか、悩んでます。ゆくゆくはUTMFに出ればってアドバイス受けて」

瞳が樋口に素直に言う。

「時間もたっぷりあるじゃないですか、長距離になれるのに、一度ウルトラマラソン走ってみては」

「ウルトラマラソンかっ。それは考えてなかったな、いいかも、仁、どう思う」

「ウルトラって、なんキロ位の」

「当然、100キロ。出来なくないよっ、ロードだし、トレイルじゃないんだし」

瞳は、仁の肩を軽く叩く。

「ウルトラに出るメリットは。トレイル一本じゃないの」

少し戸惑い気味に仁は答える。

「ウルトラのメリットなら、有りますよ。まず距離を踏める。アップダウンに慣れる。ウルトラは、けっこう山に近い場所が会場なので、アップダウンが有りますよ。それと後、達成感を味わえる。メダルとかもらえますから」

樋口が、仁の質問に答える。

「いきなりトレイル80キロって言ったって、イメージ湧かないじゃん。それに、ウルトラで、持久力がつけばトレイルの長距離も行けると思うんだよな」

「そんなものなの、それならやってみてもいいけどさ」

「じゃ、決まり。ウルトラは100キロを当面の目標にしよう。でも、丁度いいレース有りますかね、樋口さん」

「有りますよ。チャレンジ富士五湖。時期は4月の終わり。まだエントリー出来ますし、時間もたっぷり有りますよ」

「樋口さんは次の目標レースは」

「4月のOSJ奥久慈50キロ。私はトレイルに慣れないとねってことで。その後、美ヶ原とか戸隠とか出て、ハセツネ出て、伊豆トレイルの資格を取得する予定です」

「トレイルばかりなんですね。樋口さんは」

「はい、目標の伊豆トレイルに向けて頑張る予定ですよ。ウルトラは暫くお休みですが、練習なら付き合いますよ。その代わり、トレイルの練習一緒にしてもらえませんか」

樋口は、ニコニコしながら提案する。

「俺らで、いいんですか。トレイル出てるけど、まだ最長23キロの初心者ですけど」

樋口の提案に瞳は少しびっくりしながら答える。

「全然いいですよっ、一人でトレイル行っててもつまらないし、楽しくトレイル走りましょよ」

「は、はい、仁もいいよね」

「いいよ。楽しく走れるなら、それでいいし、ウルトラの、事も聞けるし、マジ、一人だったら、そんなこと考えないもん。みんなで、目標に向かっていけるなら、俺も頑張れるかも」

仁は、後頭部を掻きながら、答える。その後、暫く話して、三人は店を後にした。帰路の列車の中で、瞳と仁は、ウルトラマラソンの大会を調べた。確かにチャレンジ富士五湖があった。

「仁、100キロ、4レークスにエントリーしよう」

「いいよ、それで。でも100キロって凄い距離だよねっ、走れんのかな」

「大丈夫、大丈夫。練習すれば、結果ついてくるって。やるだけやってみよう」

「わかった。エントリーするよ、美ヶ原はどうすんの」

「美ヶ原は80で、やってみようよっ、チャレンジレースとしてさ」

「やっぱり、そうなるよね。まぁ、やってみるしかないよね。本気じゃないと完走出来そうにないね」

「確かにね。本気でやるんでしょ、自分を変える為に」

「まぁ、そうなんだけど、心折れそうな時、サポートしてね、頼むから」

「はい、はい」

列車は、八王子に着き、二人は改札で別れて帰路についた。

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