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第七話 『剣姫様は食欲不振Ⅳ』

 ――翌朝。

 僕とルリル、サーヤ、シキの四人は、旅の用意を持って居間に集合していた。


「おはようみんな!」

「おはようござます」


 そこへシキが突然ルリルに尋ねる。


「あっ、そういえばルリルっち、昨日の夜、どこいってたの?」

「どこも行ってないわ?」

「ホント? おやすみしてからしばらくしてルリルが出ていくの見たんだけど」

「ああ、お花を摘みに行ったけれど」

「ふーん、トイレにしては長くなかったかな? お腹でも壊した?」

「私はお花しか摘まないわ……」

「ま、無事ならいいけど! ボクの料理のせいだったらまずいなって思っただけだから!」

「いえ、ご心配ありがとう」


「では仕切り治して。さあ冒険の旅へ! いざ出発! えいえいおー!」


 シキ、右手を掲げながら三人を見回す。


「おー!!」

「おー」


「ちょっと待ったあー!!!!」


 と、僕が両手を前に出して皆を制する。


「どうしたの琢くん。せっかく盛り上がってるとこなのに」

「出発する前に僕から提案がある!」

「なんなのかしら」


「健康診断をしよう」

「けんこーしんだん?」

「うん、みんなの健康状態を知っておきたいんだ。これからしばらく旅に出るわけだしさ」

「昨日も言ったけど、ボクは大丈夫だよ!?」

「ああ、わかってるわかってる。もちろんシキだけじゃないよ。ルリル様もサーヤも、そして僕も。身体に問題がないかチェックして、もし治せるところがあるなら、悪くなる前に先に治しちゃおうというわけさ!」

「へんたい……」


 ルリル、胸の前で腕をクロスして僕を見つめる。


「いやだから胸を見るんじゃないんですってば! ちゃんと服の上からでも診察できるから。サーヤもほら、服着て!」


 上の服を脱ぎ脱ぎしているサーヤを僕が止める。


「じゃあまずやる気になってくれてるサーヤから診よっか! サーヤは心臓の手術をしてるから、術後に何度か検査がてらアナライズしてはいるけどね。念のため!」

「おねがいしますなの!」


「まずステータスから確認しよっか。アナライズ……サーヤ」


 僕がサーヤに向けてアナライズと念じると、目の前に半透明のウィンドウが出現。



 名前:サーヤ・ミナヅキ

 種族:人間族

 職業:奴隷(契約者:琢磨・毛利)

 レベル:12

 HP:720

 MP:4,320

 一般スキル:ターゲティング、採集の心得、料理の心得

 職業スキル:なし

 固有スキル:過去視



「おお、レベル7つも上がってるじゃないか。すごいぞサーヤ」

「えへへ」

「サーヤ、最近身体で痛いところや気になるところはないかい?」

「ないの! げんきー!」

「そうかそうか、それは良かった」


 ステータスを確認しながら、同時に問診も行う。


「んじゃ、今度はソファに仰向けで寝てみてくれるかな?」


 こうしてサーヤをソファに寝かせ、僕がアナライズで検査していく。

 ちょうどMRIで全身をスキャンするような要領だ。


 アナライズした画像情報はテレパシーによってルリルにも伝達する。

 解剖学(かいぼうがく)を教えるためだ。

 どこからどのように見ていけば分かりやすいか、また、どこに問題が起こりやすいかなどもルリルに説明しながらスキャンする。


「(ルリル様、覚えてますよね。ここが僧帽弁(そうぼうべん)、うまく機能しているようですよ)」

「(……良かったわ)」


 もちろんルリルが一人で診察できるようになってもらうこと、それが最終目的である。

 もともとの知識欲と、人を思いやる心を持ったルリル、良い医者になると信じている。


「よし、どこも異常なし! 健康体だよ!」

「わーいわーい!」


 小躍(こおど)りするサーヤ。


「(レベルが7も上がっているのも、心臓が治って自由に動きまわれるようになったからかな。ほんとによかったね)」


 村は壊滅し、心臓を患っているにもかかわらず奴隷という身分になり……いろんな困難を乗り越えてきた(たくま)しい子だ。

 感慨にふけり、うるっとなる僕。



「よし、じゃあ次はルリル様です。こっちへ来てください」

「へんなことしたら……持てる全ての魔力であなたを倒すわよ」

「だ、だいじょうぶですよ! そんなことするわけないじゃないですか!」


 ルリルの睨みに、ぞくっとして背筋が伸びる。


「じゃ、昨日も見たばっかりだけど、ステータスから確認するね。アナライズ……ルリル様」


 僕がルリルに向けてアナライズと念じると、目の前に半透明のウィンドウが出現。



 名前:ルリル・マギシシュ

 種族:精霊族

 職業:賢者

 レベル:79

 HP:4,010

 MP:40,100,000

 一般スキル:ターゲティング、杖の心得

 職業スキル:アナライズ、精霊魔法、死霊魔法、聖魔法

 固有スキル:テレパシー



 ステータスを確認しながら、同時に問診も行う。


「ではルリルさん、どこか気になるところとかはないかい?」

「ありません」

「おーけーおーけー」

「しいて言えば、あなたの後頭部の十円ハゲが気になるぐらいですね」

「え!? マジ!? どこ!? どこよ!?」


 あわてて後頭部をさする僕。


「軽いジョークよ」

「なんすか、びっくりしたじゃないてすかあ。ただでさえこっちに来てから神経使うこと多かったから、本当にストレスでハゲたかと思いましたよ。真顔でそんなこと言われたら信じちゃいますがな」


 ルリルは無表情すぎて冗談か本気かわからない。

 まあそのクールな顔がとっても綺麗なんだけどね。


「……んじゃ、今度はソファに仰向けで寝てくださーい」


 ソファに寝転がったルリルを、アナライズで検査していく。


 今回もまたアナライズした画像情報は、テレパシーによってルリルにも伝達される。

 自分の身体を見れるようになれば、より効率よく診察の練習ができるだろう。


「(自分で見れるようになっちゃったら、もうルリル様の身体を診ることはできなくなるのか……見納(みおさ)めにちょっとぐらい体表も……)」

「(不謹慎です)」

「(ごめんなさい! 軽いジョークです!!!)」


 きっと元の世界に帰ったら、僕のつぶやきは炎上することだろう。

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