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第六話 『悪魔に呪われた村Ⅳ』

 スミレクに張られた結界の中へ侵入した僕たち。

 辺りを見回しながらゆっくりと歩いていく。

 ポツポツと藁葺(かやぶ)き屋根の家が建っているが、田畑は枯れ、人の気配もない。


「訪ねてみるか」


 僕は民家の玄関をノックしてみる。

 しかし、応答はない。

 その後も何軒か回ったが返事無しだった。


「あそこのお屋敷、大将が言ってたとこじゃないかな!?」


 シキが屋敷を指差した。


「ほんとだね、行ってみようか。ハイディングは大丈夫ですか??」

「任せて」


 僕らは屋敷の玄関へと足を踏み入れた。


「ごめんくださーい!」


 しかし返事はない。


「でも中から人の声がしない!?」


 耳を澄ませてみると、うめき声が聞こえているような……。


「ひいいっ!!」


 僕はルリルに抱きつこうとする……が、ハイディングの効果でするりとコケる。


「なにをやってるのよ、もう……」


 そこへサーヤが前に出て声を上げる。


「中に人間と魔族がいるみたいなの!」

「えっ、なんでそんなこと?」

「そうか、過去視だね!?」

「うん! 玄関の柱に触ったら見えたの!」

「ルリル様、サーヤのイメージをテレパシーで、僕らにも共有してくれませんか!?」

「わかったわ」


 ルリルが目をつぶると、僕たちの頭の中に過去の映像が流れ込んできた。



 この屋敷の玄関の様子だ。

 いつかの夜の出来事らしい。

 屋敷に運ばれてくる腹の膨れた村人たち。

 しかも村人を運んでいるのは、角の生えた青白い魔族と思われる者。



「うそーっ! これってほんとに魔族の仕業だったってことじゃないのかな!」

「そんな……」

「今回はあなたの魔導医療は必要なかったようね。ここでサーヤを守っていて」


 ルリルは僕にサーヤを預ける。


「魔族の子を孕んでるなら、最悪全員死んでもらうことになるかもね……」


 シキは剣を抜き、ルリルと共に中へ入ろうと歩き出した。

 すかさず僕はシキを制する。


「待って! まだわかんないじゃん!」

「お兄ちゃん?」

「やっぱりこの目で確かめたい! もし僕の知識が役に立つなら、人を救えるなら、このまま見過ごせないよ!」


「……」

「……」


「僕もついていく」

「……わかったよ」


 シキがいったん臨戦態勢を解くように剣を収める。

 ルリルはサーヤの手を取り、(きびす)を返した。


「……では私がサーヤを守っているので、二人で行ってきて。強く念じてくれればテレパシーで読み取れるから、何かあればすぐに駆けつけるわ」

「は、はい」


 ゴクリとツバを飲み込む僕。


「行こうか琢くん……」


 僕とシキは剣を構え、屋敷の中へとゆっくり歩みを進める。



 屋敷内に入った僕たち。

 ミシミシと床がしなる音。

 辺りを警戒しながら奥へと進む。

 うめき声が聞こえてくる大広間の、(ふすま)の前までたどり着く。


「ここだね……」


 シキが小声で呟く。


「結構な数の人がいそうだけど……」

「開けたら一気に片付けるからね」

「待ってよ、病人だけしかいないかもしれないじゃないか」

「……じゃあ琢くんの判断に任せるけど、襲いかかってきた奴は切り捨てる。いいよね?」

「……うん。気をつけて」

「琢くんも」


 二人で目配せした後、ついに襖を開いた。


「動かないで!!」


 シキが中に向かって大声で警告する。

 見回すと多数の人間、そしてやはり魔族の姿。


「な、なんだお前ら!?」

「やっぱり魔族の仕業だった! 琢くん、やるよっ!」


 魔族に向かって駆け出すシキ。


「ままま、待って!!」


 シキの前に飛び出した僕は、シキの剣を自分の剣で止める。

 部屋にガキンと鳴り響く、剣がぶつかる音。


「ちょっ、なんで魔族の味方するのかな!? 許さないよ!」

「でっ、でも、ほらよく見て!」


「ひえええ……!」


 魔族の男は腰を抜かし尻もちをついている。

 傍にはまた違う魔族が寝ており、その腹は大きく膨らみ、村人と同じような姿をしていた。


「魔族も病気に……?」


 よくよく見渡すと、寝かされている病人は村人だけではない。

 むしろ村人が魔族を看病し、はたまた魔族が村人を看病しているように見えるケースも。


「な、なんなのかな!? なにが起こってるんだい!?」

「……今戦うべきは魔族ではない。……そう、やはり病気だったんだ」

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