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第六話 『悪魔に呪われた村Ⅰ』 ※挿絵有

挿絵(By みてみん)


 翌日、僕とルリル、サーヤ、シキの四人は、船着き場に集合していた。


「じゃあ行こっか!」

「はいなの!」


 と、リスターキでの滞在も早々に、隣国の呪われた村を目指すことになったのだ。

 とりあえず王太子妃の術後経過をみても、城の人たちに任せて大丈夫だと判断したからだ。


「で、なんでシキまで……」

「なんでってそりゃあ、あんな戦い方じゃ心配だから、付いてってあげるんだよっ」

「まあ可愛い子がパーティに増えて、僕としてはうれしいけど……」

「かかか、かわいくないけどっ……ボクに手伝えることがあるならなんでも言ってね!」


 頬を赤く染めるシキは、アイドル級の可愛さだ。


「さあさあ、はやく行くわよ」

「あ、はい」


 ルリルが僕をせかす。

 不謹慎(ふきんしん)かもしれないが、知識欲の高い賢者だけに、新しい疾患や魔導医療を見たいってのもあるのだろう。

 見送りも来ないうちに国を出ることになったのだ。



 ――こうして僕たちは、グモールと反対隣にあるリスターキから、さらにその隣国、ゴモクという国に船で向かっている。

 シキのお父さんが騒ぎにならないように密かに手配してくれた船だ。

 船内で一泊もすれば着くらしい。

 ちなみにゴモクはサーヤの生まれ故郷でもある。

 魔王に滅ぼされた、前勇者の末裔(まつえい)が住んでいた村のある国だと、奴隷商人ルドルフさんから聞いている。

 そこも最近新たな村として復興し始めた矢先のことらしい。

 なにか元の世界に帰還するための情報などが仕入れられるかもしれないので、そういう意味でも行く価値があるだろう。


「呪われた村か」

「ただの呪いなら私が解くわ」


 賢者ルリルは呪いを解く魔法も使えるらしい。

 複雑な呪いは解けないものもあるそうだが、自分のレベル以下のものなら大抵は解呪できるんだって。


「けど、そうなんだよな。異世界は天災でもなんでも、呪いとか魔王とかのせいにするみたいだからな。今回もわからないんだよなー」


 顎に手をあて、困った顔でそうつぶやく僕。




 地球でも昔、黒死病などの疫病(えきびょう)で村ひとつがなくなったりして、呪いだと考えたりもされていたそうだ。

 黒死病といえば()()()という細菌による感染症。

 ノミやシラミが媒介して人間にも感染してしまう。

 14世紀頃、ヨーロッパ当時の人口の()()()()()()したという、歴史の中でも最も恐ろしい感染症のひとつだ。

 今でこそ元の世界なら、治療薬や環境整備などで対策されて大流行することはないが、もし今から行く村がペストによるアウトブレイクなら大変である。

 城下町でさえあの衛生状態だ。

 安易に乗り込むのはまずいだろう。



 船内で一泊した僕たち。

 ようやくゴモクへとたどり着いた。


「島が見えてきたよっ!」


 港では貨物船から積み荷を降ろす人たちや、露店の片づけをする人などが行き交う。

 意外と港にも人が多いようだ。


「よし、聞き込みを開始しよう!」


 と、意気込む僕。


「ダメだよ。先に宿の確保!」

「あ、はい……」


 シキにバッサリと否定されてしまう。

 しょぼーん。


「それに細菌対策はどうするのよ、死にたいのかしら?」

「ずーん……」

「よしよしなの」


 サーヤは前かがみになっている僕の頭を、背伸びして撫でてくれる。


「ううっ、泣けてくるよサーヤ」

「……仕方ないわね」


 と、ルリルが魔法の杖を振りかざし、全員にハイディングの魔法をかける。


「そうか、ハイディングで常に自分の周りに細菌が入らない防護壁を作るわけですね。さすがはルリル様」

「ルリルっち、ありがと!」

「でもずっと魔法かけっぱなしじゃ、ルリルおねえちゃんしんどくなっちゃうんじゃないの?」

「大丈夫よ。心配ありがとう」


 ルリルはそう言ってサーヤに微笑みかけた。


「僕と態度違いすぎないですかね!?」

「耳が腐るので喋らないで」

「ううっ……」


「お父さんの知り合いがやってる宿屋があるんだ。ひとまずそこへ行こっ!」


 と、シキがついてこいといわんばかりに右手で合図する。


「ほんとに東洋ちっくな街並みだなあ」


 きょろきょろと辺りの建物を見回してみる。

 (かわら)の屋根や着物チックな服装をした人など、割と日本に似た雰囲気がある。


「サーヤはどこに住んでたの?」

「もちょっと島の真ん中にある村なの! でもここも覚えてるの」


 サーヤは楽しげに答える。


「(サーヤにとって奴隷になったってのは悲しい思い出じゃないのかな? 過去視があるからハッキリ思い出せるだろうし。それが少し心配だったけど杞憂(きゆう)だったかな)」


 サーヤを見つめながら安堵する僕。


「あそこにバーがあるわね」

「ほんとだー! 宿を確保したら行ってみようよっ!」

「おお! やはり冒険者の情報収集といえばバーですね! うんうん!」

「サーヤは?」

「お、おるすばん……かな」

「ぷぅ……」


 頬を膨らませ、()ねるサーヤ。


「ではサーヤ、別の美味しそうなお店で私と聞き込みしに行きましょうか。シキさん、豚をお願いします」

「わかったー任せて!」

「ちょい! また豚に戻ってますよ!」

第六話もまたまた医療パートですが、第一章で一番書きたかったお話に入ります!

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