表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/40

第四話 『魔王軍と紅の剣姫Ⅲ』

 ――ブオン。


 アナライズと念じると、半透明のステータスウィンドウが現れた。

 さて、ボスのステータスはどんなかな。



 名前:ギュントス

 種族:魔族

 LV.74

 HP:450,000

 MP:1,132,000



「ちょっ! めっちゃ強いじゃないっすか。ルリル様と変わんないぐらいのステータスっすよね!? 見た目もごつい奴ですし。体形は僕の三倍ぐらいあるんじゃないんすかコレ。牛みたいな角まで生えちゃってからに」


 ギュントスを指さしながら、ルリルに訴える僕。

 いくらチートな僕でも、レベル上げてないから思ってたより無双できそうにない。


「だから言ってるじゃない。ゴーフルさんたち騎士団全員でやっと追い払ったと」

「おにいちゃん、大丈夫……? サーヤも手伝う?」


 サーヤ、心配して僕の裾を掴んでくる。


「ああごめんごめん、大丈夫。サーヤはそこで見てて。お兄ちゃん強いんだから」


 サーヤに小さな力こぶを作って見せる僕。


「グオオオ……!!」


 そこへギュントスの雄たけびが、部屋に響き渡る。


「ひっ……」


 びっくりして肩をすくめる僕。


「ちょっとお! きみたち邪魔だから隠れといてくれるかな!!」


 紅の剣姫は僕に向かってそう言い放った。


「まじか、役立たずっすか、かなしす。剣姫はどんなステータスよ? 見てみよう」


 今度は紅の剣姫をターゲティングし、アナライズと念じてみる。



 ――ブオンッ。


 名前:シキ・リンガルド

 種族:人間族

 職業:剣士

 LV.42

 HP:280,000

 MP:12,000



「ふむ、普通の冒険者よりはだいぶ強いみたい。でもギュントスより低いじゃないか。これはなんとかせねば」


 仕切りなおす様に剣を構える僕。

 女の子が自分より強い敵に立ち向かってるのに、何もせずただ見てるわけにはいかない。


「ルリル様! 僕にハイディングの魔法かけてもらえます?」

「わかったわ」


 ルリルは杖を僕に向け、ハイディングの魔法をかけてくれた。

 僕の体が黒い影で覆われる。


「あざっす! とりあえずこれで攻撃は防げますね……よし! ちなみにサーヤ、ギュントスの弱点はなんだっけ!?」

「光魔法なの!」

「ふふん、じゃあ僕の専門分野だね! いくよ! ルリル様はサーヤを頼みます!」

「華やかに散りなさい」

「散らないですけどね!!」


 僕は紅の剣姫の前へと走っていき、剣の切っ先をギュントスに向けた。


「手始めにライトアローを放ってみるか。手術で使うのとは違い、思いっきり魔力を込めたやつだ……!」


 そして僕はライトアローと大声で叫んだ。

 と、その手に握られた剣の先から太く大きな光の矢が出現。

 ギュントスめがけて放たれる。


「グアアアア!!」


 ()に旋風を絡ませながら飛んでいく光の矢が、ギュントスの身体を貫通し、その腹に大きな穴を空ける。

 ぽたぽたとしたたる青色の血。


「うえ、痛そうだな……てか青色の血って何型よ。さすがに人間に輸血は無理だよな」


 こんな時でも変な考察をしてしまう。


「すごいっっ! あのギュントスが大ダメージを受けてる!」


 紅の剣姫シキ、目を丸くして僕とギュントスを交互に見ている。


「何をしているのよ。早くとどめを」


 ルリルはぶつぶつ言ってる僕に向かって声を上げた。


「ああ、やっぱ殺すのは嫌だなあ」


 するとギュントスは角の先に魔力を集めだし、赤黒い光の球を作り出した。


「えっ、まだそんな元気あるんすか……?」

「危ないよっ!」


 シキが僕の横を通り過ぎ、ギュントスめがけて走り出す。

 僕を守ろうとしてくれてるのか。

 勇敢な子だ。


 しかし、シキの攻撃は間に合わず、どんどん膨らむギュントスの球は、彼女の目の前で放たれた。

 直撃し、吹っ飛ばされるシキ。

 巻き起こる砂煙。


「きゃあああ!!」

「ちょ、大丈夫!? なんてことだ!!」


 躊躇している暇はないと気付き、僕は剣に光の付与魔法をかけることにした。


「……エンチャントシャイン!」


 そして剣の心得スキルを念じる僕。


 するとギュントスめがけて、閃光のごとく僕の体が移動する。


 気が付けば奴を八つ裂きにしていた。


「グハアアアア!!!」


 ギュントスのバラバラになった身体は、黒い霧となり消滅していく。


「……魔族は最期、こうなるのか。死体がないだけまだ罪悪感が薄れるな……」


 息を整えながら、剣を鞘にしまう僕。


「っ……!」


 シキは骨折に裂傷……見てもわかるぐらいの重体。

 やっべーよ、僕のせいだ……。


「ウォーターボール……エクストラヒール……!」


 ルリルが駆け寄り、治癒魔法をかける。

 もちろん水魔法で患部の処置をしてからだ。


「……なんとかボク、生きてるのかな……。ありがとう、魔法使いさん」


 シキはルリルに感謝を述べる。

 安堵のため息をつく僕。


「良かった、無事で」

「何を言ってるんだい! きみ、甘いよっ! いくら魔力が高いからって、そんな気持ちで戦場に出ないでくれるかなっ!?」


 シキは駆け付けた僕に怒号を浴びせてきた。


「す、すんません……」


 めっちゃ叱られるやん、とほほ。


「今後は考え無しに突っ込むのはよすよ。自分のステータスを過信しすぎた。今回はみんななんとか無事だったからいいものの、何かあってからでは遅いよね。ごめんなさい」

「わかればいいんだけどっ! もうっ」


 両手を腰にあて、ぷんすかと怒るツインテ剣姫さま。


「(それにしても若いな。まだ10代じゃなかろうか。そしてめちゃくちゃ可愛い)」


 オレンジの瞳をした金髪美少女シキに、あらためて見惚れる僕。


「ところでボクにヒールかけてくれた時、どうして水魔法も一緒にかけたんだい?」

「ああ、それは感染症予防といって――」


 おなじみの紙芝居を出してきて、即席で公衆衛生の講義を始める僕たち。

 特に前衛で戦う人たちには、知っておいてもらいたい事実である。



「そんなことが……てか、ボクの国に来てよっ! きみたちのその知識、普及させてくれないかなっ!!」

「いやそれは貴女の役割としてだね……」

「それにその魔導医療とやらで、治してほしい人がいるんだよっ。お願い!!」

「しかし僕らも帰って王様に報告しなきゃだし……」

「ちょっとぐらいいいじゃないのさ!! ケチ! あー見捨てるんだ、困った人を見捨てて自分の功績の報告を優先するんだー。薄情な人ー」


 シキ、口を尖らせ、小学生のように拗ねる。


「(仕方ない……完全に主導権を取られている気がするけど、功績より人命が大事だし。僕らにできることがあるなら行ってみるか。ボスは倒したからひとまず魔王軍の侵攻もないだろうし)」


 僕はルリルと顔を見合わせる。


「……仕方ないわね」

「よし。サーヤ、ちょっとだけ寄り道して行こっか」

「わかったの!」


 サーヤは無邪気に、にぱあと笑顔で返事をする。


「じゃ、決まりだねっ! わーい!!」


 シキもまた、無邪気な笑顔を見せるのであった。

次話からはしばらく医療パート続きます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ