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第四話 『魔王軍と紅の剣姫Ⅱ』

 僕の悲鳴がテレパシ-で二人に伝わり、サーヤは心配して声を返してくれる。


「(お兄ちゃんどうしたの!? ……ルリルお姉ちゃん、行こ!)」

「(ええ、何事かしら)」


 駆け寄ってくるルリルとサーヤ。

 僕の足元を見ると……


「こいつは、モンスターじゃないんすか!?」

「ふむ、これは魔族ね。おそらく魔王軍の。気絶しているみたいだけれど」

「なんでこんなところに転がってんすか」


 青白い人間風だが、角が生えている。

 僕はこの人物に足を引っかけて転んだようだ。


「こいつが魔族か……ちょうどいい、サーヤ。過去視たのめる?」

「わかったの!」


 倒れている魔族にそっと手を触れ、目をつぶるサーヤ。

 ルリルはサーヤの見たイメージをテレパシーで受け取り、三人で共有する。


「これは……」


 三人の脳内に映し出された映像は、この魔族がボコられているシーンだった。

 美少女が馬乗りになって素手でボコっている。

 金髪をツインテールに結んだ女の子だ。

 腰に剣を携えていることから、冒険者かと思われる。


「怖ええ! ボッコボコですやん!!」

「つおーいの!!」

「ん、この人どこかで……」


 ルリルは頬に手を当て首を傾げ、考えるしぐさをする。


「知り合いなんすか!?」


 するとルリルは閃いたように手を打った。


「あ、思い出したわ。彼女は『(くれない)剣姫(けんき)』。隣国で最強と(うた)われる剣士ね」

「紅? 金髪なのに?」

「ええ。たしか、盗賊か何かが攻めてきた際、多勢の敵を一人で斬り倒し、返り血で紅に染まった姿があまりにも恐ろしかったことから付いたそうな」

「こえええええ!!」


 身をぶるぶるさせる僕。


「……けど、今その剣姫様も来ているってことですよね? なら心強いっす。協力してギュントスとやらを討伐できれば助かりますよ」

「たしかにそうね。すぐ追いかけましょう。サーヤ、この魔族から要塞の内部構造を読み取ってくれるかしら?」

「はいなの!」


 サーヤはもう一度魔族に触れ、過去視を発動させる。

 おかげでこの魔族が行ったことのある要塞の内部情報や、敵の弱点などを読み取ることができた。

 読み取った地理情報を、ルリルがマップとしてイメージ化。

 それを頼りに、ボスの部屋までそのまま乗り込むことにした。


「あー、着くころには剣姫様がやっつけてくれてたら最高なんすけどねえ」

「あいかわらずヘタレね。着いたら床でも舐めときなさい」

「床ペロ!? って死ねってこと!?」



 ――サーヤのおかげで得られた情報を有効利用して、裏口から侵入できた。

 そのまま駆け足気味でダンジョン攻略していく。

 途中で出くわした魔族は、僕がさくっとみねうちで倒していった。

 念のためアナライズしても、案外大した強さじゃないので楽勝であった。

 冒険者ギルドでカツアゲしてきた輩たちより少し強い程度。



 そうこうしているうちに早くもボスマップへたどり着いた。

 入口のドアを蹴飛ばして中へ入る僕ら。


 バンと開いたドアの奥では、禍々しいオーラを纏った筋骨隆々の大男が、金髪の女剣士と戦っていた。

 女剣士が斬りかかるも、鋼鉄のような腕ではじき返されている。

 ガギンッと金属がぶつかり合うような音が部屋中に鳴り響く。


「おいおい……ギュントスってあんなごっついんすか!? 聞いてないっすよぉ!」

「さっき過去視でチラっと見たじゃないの」

「いやいや、間近で見ると全然違うっすよお! ほら、剣姫さんもやられてんじゃないんすか?」


 そこへ、女剣士が僕たちを見て声を上げる。

 イメージで見た紅の剣姫だ。


「きみたち、何者かな!?」


 敵か味方が判断できないからか、剣姫はボスと僕たち双方に警戒する。


「グモールの冒険者です! 手伝いますよ! ボコられたくないし! (ボスにも剣姫にも)」


 そう言って剣を抜き、ボスのいる方へと駆け出す僕。

 剣の心得スキル発動だ。


「ちょっと! そんな装備で無謀じゃないかな!!」


 紅の剣姫、ボスへとまっしぐらに突っ込む僕を見て声を上げる。


「……グオオオ……」


 そこへ魔族ギュントスが僕の方へ手のひらを向け、魔法を放った。

 赤黒い炎の塊が僕めがけて飛んでくる。


「ぐああああっ!!」


 正面からギュントスの魔法を受けた僕は、入口のほうまで吹っ飛ばされた。


「いてて、こんな強いんすか……?」


 身体のほこりをパンパンと払いながら立ち上がる僕。


「え、なんで生きてるんだい!? きみはいったい!?」


 紅の剣姫、僕がぴんぴんしている姿を見て驚き、目を見開く。


「いやあ、異世界にきて吹っ飛ばされる経験をしたのは初めてだったので、びっくりしたっす……痛いよー。ルリル様、洗浄とヒールおなしゃす」

「がっかりね、まったく」


 しぶしぶヒールをかけてくれるルリル。


「ちょっと……いや、かなり油断してました」

「首の紐は絶対に守りなさいよ」

「ああ、だからこれ、なんの意味があるんすか? 切れたら死んじゃうとか?」

「……いずれ分かるわ。今は教えたくないの」


 教えたくないって……また横暴(おうぼう)な。

 まあ同じ魔導医療を扱う者同士、僕のことも無下(むげ)に死なせたりはしないだろうと信じている。


「早く立ちなさい。私にギュントスの攻撃が当たったらどうするの」


 ……信じたいなあ、とほほ。


「とりあえずアナライズからですね。真面目に戦います!」


 僕はギュントスをターゲティングし、アナライズと念じる。

 するといつもの、半透明のステータスウィンドウが出現。

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