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第四話 『魔王軍と紅の剣姫Ⅰ』  ※挿絵有

挿絵(By みてみん)


 サーヤの奴隷契約は、紙と魔法で交わされた。

 ルドルフさんは契約内容について読み上げる。

 奴隷保護法に基づき、虐待(ぎゃくたい)などの制約、あとは主従関係についてなど。

 違反すると魔法で罰則がかけられる仕組みになっている。

 普通に共に旅をしている分にはもちろん問題ない。


「ま、奴隷っていうより、お手伝いさん? みたいな関係なようですね。わりとちゃんとしてるんだなあ」

「それでは最後にここへ血判をお願いします」


 ルドルフさんは小刀を僕に渡す。


「わ、また血判!? 大丈夫です! 自分の剣でやりますから!」


 肝炎になったら大変なので小刀を断り、自分の剣で親指を軽く切って拇印を押した。


「(ルドルフさんにもちゃんと、衛生の知識を教えとかなきゃですね)」

「(そのようね)」


 ルリルと顔を見合わせ頷く。


「これで契約成立ですぞ。琢磨さん、サーヤをどうぞよろしくお願いします」

「ご主人様……よろしくなの」


 ペコリと頭を下げる可愛いサーヤ。


「じゃ、ご主人様じゃなくてお兄ちゃんって呼ぼうか」

「お……お兄ちゃん……よろしくなの!」

「何を言わせてるのよ、まったく」

「お、ルリル様ヤキモチですか? ルリル様もお兄ちゃんって呼んでくれていいんですよ――って、ちょ、グフッ!!」


 ルリルのグーパンを、顔面に食らう僕であった。




 ――サーヤをむかえた僕たちは、さっそく旅立つ準備を始める。

 サーヤの首輪も外してあげたので、自由に動き回れるようになっている。

 もともと奴隷が脱走した時などのための、GPSのような魔法がかかった首輪らしいので、主人の意向次第で外しても構わないそうだ。


「で、魔王の配下ギュントスとやらは、山の上の要塞(ようさい)にいるんですよね?」


 そう僕はルリルに尋ねた。


「ええ。この町はギュントス率いる魔王軍が侵攻してきた際、ゴーフルさん率いる騎士団でなんとか侵略を食い止めることができたのよ」

「おお、騎士団長のゴーフルさんですか。その時に破傷風菌に感染したんでしょうねえ」

「おそらく。でもそのゴーフルさんたちのおかげで、町はまったく被害を受けることなく魔王軍を退けることができたの」

「おお、かっこいいっすね! さすがは騎士。それでいったん退いた魔王軍が、あの山の上に逃げ帰ったと」


 遠くに見える山脈を指さす僕。


「ええ。魔王軍は、本国と隣国の境目である山脈の上に、大きな要塞を築いてるのよ」

「なるほど、いつまた侵攻してくるかわからない。つまりはその要塞のボスを叩けばミッションコンプリートってわけですね」

「そうゆうことね。さあ、行くわよ」


 山へ続く道へスタスタと歩き出すルリル。

 ルリルの尻をおっかけながら追従する僕。

 サーヤも病気が治ったこともあって、元気にはしゃいでいる。


「(病み上がりのサーヤには、無理させないよう見ておかなきゃな)」




 ギュントスの要塞へ続く山道だが、ルリルの精霊魔法のおかげでかなり楽な旅である。

 寝泊りする小屋から、疲れを癒す温泉まで、たいていの物はルリルなら自然の力を借りて創造できるから。

 さらにサーヤが料理スキルを持っているので、下手に安い宿屋に泊まるよりよっぽど充実している。

 疲れてもヒールで体力は回復してもらえるし。


「歩くのだけが辛いっすねえ。ゲームならオート歩行とかで一瞬なのに。ヒールで疲れないからといってこの距離歩くとか、ほんと飽きてきますよ。乗り物さえあれば完璧なんすけど」

「わがまま言わないで。魔王軍に気づかれてもやっかいだわ」


 そして三日ほど歩くと、ようやく要塞が見えてきた。


「ふう、あれか……」


 (ひたい)の汗を拭いながら見上げる。

 まがまがしい外観からして、ここが魔王軍の要塞ですよと言っているようだ。


「よし! まずは捕虜(ほりょ)をとるなりして、内部の情報や弱点を探りましょう! さっそくサーヤのスキルが役に立つね」

「がんばるの!」


 サーヤは肘をまげて、フンスと意気込む。


「さあ、ポチ。捕まえてきなさい」

「また僕ですか」


 ルリルに背中を押され、なかば無理やりスパイ役に任命される僕。

 女の子二人の手前、不承不承(ふしょうぶしょう)ながら引き受けるしかない。


「じゃあ行ってきますね。テレパシーで僕の声聞いといてくださいよ。ヤバかったら助けに来てください! 絶対!」

「はいはい。みんなの声を共有できるようにしておくから。早く行って」


 後ろを何度もチラ見しながら、僕は要塞へと近づいていく。

 ルリルはシッシッとばかりに、手をひらひらさせている。


 草むらに隠れながら忍び寄る僕。


「(あれが入口か……)」


 要塞の入り口と思われる禍々(まがまが)しい玄関が見えた。


「(門番とかはいないようですよ……もう少し近づいてみますね)」


 草むらを掻き分け、玄関のそばへ移動しようとする。

 すると何かにつまずき、すってんころりんする僕。


「あいててて……!」

「(もう……何をやってるのよ木偶(でく)(ぼう)。敵に気づかれてしまうわ)」

「(お兄ちゃん大丈夫?)」


 ルリルのテレパシーを通じて、サーヤの声も僕に届く。


「うわああ! なんだこいつは!?」


 足元を見た僕は、大声で叫んだ。


「(どうしたの?)」

「ちょ、二人とも来て! 見て見て!!」


 ルリルとサーヤを呼ぶ僕。

少しだけ冒険パートに入ります!

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