プロローグ ※挿絵有
お手柔らかに、どうぞよろしくお願いします!
「勇者召喚……っ!」
そんな声が男の頭に鳴り響く。
目を覚ますとそこは魔法陣の上だった――
地面から発する光。
目の前には魔法使いのようなローブを着た美少女が立っている。
人形のような顔立ち、白く透き通る肌、まるで天使のような美しさ。
彼女は魔法陣の上にいる男を見て呟く。
「ああ…………失敗してモンスターを召喚してしまいました」
「人間ですけど!!!」
――数分前
男はいつものように大学の構内で勉強をしていた。
彼の名は毛利琢磨、今までモテ期なども来ることなく、パッとした人生を歩んできたとは言えないが、一応これでも医学生だ。
国家資格に合格できたので、この春から研修医として勤務することになっている。
立派な医者になって酒池肉林……いや、社会貢献するのが夢らしい。
彼いわく、顔はそんなに悪くないはずなので、あとは金と名声があれば完璧とのこと。
いまはモテないけれど、いつか自分を必要とする人がたくさん現れるはず。
そう信じて勉学に励んでいた。
「……勇者様」
ふと頭の中に声が響く。
透明感のあるウィスパーな女性の声。
「……どうか私の声にお応えください」
「ん? なんだ?」
まるでテレパシーだ。
なんて、勉強しすぎの寝不足で頭おかしくなってきたかな。
ちょっと休むか。
そんなことを考えるも、頭の中で声は続けて鳴り響く。
「勇者様……私たちをお救いください……」
お救いください、か。
医者を目指して生きてきたからには、たとえ幻聴でも自分が頼りにされるのは不快じゃない。
きっと妄想だろうとは思うものの、気をよくした琢磨は呼びかけに返事をする。
「あー、いいよー、任せなさい」
すると、しばし沈黙の後、キュイーンという音が頭に鳴り響いた。
そして再び頭の中に声が響く。
「……召喚の契約が締結されました」
「……ん?」
「では……ゲートを開きます……」
「へ??」
急にあたりが暗くなる。
いや、琢磨自身が暗くなっているのか。
手足を見ると、どんどん消えていっているではないか。
末端から粒子となって拡散していくのだ。
手足、体幹、そして頭へと。
「ちょっ! だれかっ!!!」
しかし周りには誰もおらず、琢磨の声は誰にも届かない。
彼女とか親友とかがいれば、こんな時に助けてくれたりするんだろうが。
一緒に勉強する友達すら作ろうとしなかった琢磨は今、自分を責めても責めきれないことだろう。
「た、たすけてー!!!」
そう叫んだ甲斐もなく、琢磨は完全に暗闇に包まれ、意識を失った。
これが彼の、異世界を救う波乱万丈な旅の始まりであった――
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