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どすこいあそばせ! エレガント力士・エレガント山!  作者: 当年サトル
エレガント相撲ビッグバトル場所
8/47

五ッ!

 大音量で流れる悪のテーマ曲の重低音すらかき消すように、重い足音をドシンヌドシヌと鳴り響かせて、土俵へ近付いてくるその姿、身の丈三メートル近い超巨体! しかも、歩みに合わせてついてくる赤いスポットライトの中、全身が黒光りし、左目がいっそう赤く輝いている! どう見てもまともな人間ではない!

 超巨体力士はやがて土俵へ上り、中央の仕切り線の手前に立つと、勢いよく腹を叩き、大きな音が響いた。パンッ、ではなく、ガキィィィンッ、という音だ──これはまともな人間ではない!

 そこで悪のテーマ曲が終わり、場内の照明が再び灯り、大歓声の中、その恐るべき全身像が鮮明となった──。


 金属だ! 首から下の全てが黒光りする金属で出来ている! オーガニック的なパーツは腰に巻いた青い布のマワシのみ!

 サイボーグだ──ヘルマシーン乃海はサイボーグ力士なのだ! 生身なのは首から上だけ──いや、それすらも、顔の左半分の鼻から上あたりは金属パーツに覆われ、目玉の代わりに光学センサーがはめ込まれ、赤く不気味に輝いている!

 そしてヘルマシーン乃海は、生身の方の鋭い目をふてぶてしく細め、向こうの超能侍を見やると、生身側の太い眉毛を吊り上げ、傲然と言い放った──


「どすこウィーンガシャン!」


 心ある者ならば嘆かずにいられまい──あろうことか、ヘルマシーン乃海は、魂までも冷酷な機械に蝕まれるあまり、語尾までもが機械っぽくなっているのだ! いくらサイボーグとはいえ精神まで機械に売り渡してしまうなど──まともな人間ではない……ッ!


 悪だ──悪人が悪の秘密組織の超技術によって人体魔改造を受け、悪の超人となった悪のサイボーグ横綱──それがヘルマシーン乃海なのだ!


「倒さねば……ならんな」

 挑戦者として控えていた超能侍もようやく土俵へ上がった。


「でけーッスね……」

 素朴な感想を口にする龍角が土俵の傍へ歩み寄り、持参していた木桶から柄杓で水をすくい差し出すと、蹲踞の姿勢で受け取った超能侍は一口含んでプッと吐き出した。力水(ちからみず)による清めの儀式だ! 変わり果てた会場ゆえ、もう少し込み入った本来の作法を再現できてはいない。が、こんな簡略化であれ、やってみせることは暗黒デス相撲への精神的反抗なのだ! 低民度観客達が「ギャハハハハ古臭ェーッ!」「早く始めろ早く死ねッ!」などと罵声を浴びせようともだ!


「清めてやんな」

「任されました」

 次いで歩み寄った和厳親方が持参していた木箱から、超能侍は大きな手いっぱいに塩をガッシ! と掴み取ると、土俵中央へ進み、ブオンム! と豪快に撒いた!


「おわァーァァッ!? ペッペッペェッ何しやがんだこのオッサンはァァーァッ!?」

「ほう……ガシャン」

 塩は殺意之助とヘルマシーン乃海を思い切り直撃した!

「姑息よのうギゴガ……ワシ様の超合金ボデーェはこんな塩ごときで錆びる安物部品は使っとらんでガキン」

 せせら笑うヘルマシーン乃海を、超能侍は厳つい男前(いけめん)顔をニヒルに歪ませ、さらにせせら笑い返した。

「本来の意味を知らんのか。ポンコツとはいえ教育水準が低い。よかろう教えてやる。塩は邪悪を清めるものだ」

 そしてビシュッと人差し指を突き付ける!

「お前らのごとき邪悪をなッ!」

 この塩撒きは本来の作法ではない──むしろ不作法!

 相撲の伝統を背負い戦いに臨む超能侍の、あえての伝統無視──相手が悪ならばこその不作法──宣戦布告なのだ!

「くっくっくっピー…… 死にたいらしいガキン!」

 ゴウオンゴウオン、と、ヘルマシーン乃海の魔改造ボディから不気味な駆動音が響く!

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