四ッ!
超能侍が相撲界を去った後しばらくして、全日本大相撲協会は世論の厳しい非難に晒された。ある力士が後輩力士にリンチを加えた暴行事件。その隠蔽を協会ぐるみで企み、不服を唱えた親方や力士達を、買収あるいは脅迫によって黙らせようとしたことが明るみに出たのだ。
改革か、解体か──
組織の腐敗に対するケジメを迫られた協会の対応は、最悪のはるか斜め上を行くものだった。
開き直った協会は徹底的な腐敗の追求を選び、「三百人委員会」「秘密結社ショック・アンド・テラー」「MIDAS the plotter」などといった裏社会の団体と次々に手を結び、そして──
全世界を牛耳る悪の相撲結社「暗黒デス相撲協会」と成り果てたのだった……!
(俺が……糺さねばならぬ……ッ!)
スクリーンに映る旧時代の相撲に「つまんねーぞ! 死ねッ!」「死ねッ! 死ねッ! とにかく死ねッ!」と野次を飛ばす超・低民度の観客達──あれらはある意味、暗黒デス相撲協会の退廃的な雰囲気に流され溺れた被害者だ。
暗黒デス相撲協会によって歪められた相撲──暗黒デス相撲を打ち砕き、正統な相撲の凄味を見せつけ、必ず目を覚まさせてやる──ッ!
そう堅く誓う土俵下の超能侍は、闘志をみなぎらせた仁王立ちで、倒すべき敵──対戦相手の暗黒デス力士を待ち構えた。
「そォォーしてェェェーェェッ! いよいよお前らお待ちかねェーェェッ! 古臭ェーにもほどがあるゥゥーゥ旧世代チャンプを迎え討つゥゥーゥゥッ! 我らが暗黒デス力士ィィ~~──」
ドーム内が暗転した。空中スクリーンも消えている。
不気味さと荘厳さを両立した、宗教音楽めいたBGMが響き渡る。暗黒デス相撲協会テーマソングのインストゥルメンタル版だ!
超能侍の入場時には、ここまでの特殊演出はなかった。なくても何も困らないが、ここはアウェーだと肌で思い知らされ、身が引き締まる。
やがて超能侍とは反対側の入場口の中に全身を現し、横手から派手な火球がボンボンと打ち上がり、不健全なムードの赤いスポットライトに照らされる中を歩みくる、その者の名は──
「ンンンンにィィ~~しィィ~~ッッ! ヘルゥゥゥ~~~マッスィィ~~ンンンンのォォォ~~~ォォォ、うゥゥ~~~みィィィ~~~~~ィィィィィッッッ!!!!!!!!!!」
派手な節回しを控え、わかりやすく普通に表記するならば「ヘルマシーン乃海」──
その姿は──
異様! まさに異様であった!