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どすこいあそばせ! エレガント力士・エレガント山!  作者: 当年サトル
エレガント相撲ビッグバトル場所
21/47

十八ッ!

 ニタァーリ──


 ヘルマシーン乃海のメカ顔が邪悪に歪んだ。メカ暗黒笑いだ!


 なにしろ牛六頭を吹き飛ばす程度の威力のミサイルが全弾命中したのである。いかに強力な力士といえど耐えうるものはそうそういまい。現に赤いものがパァッと飛び散った! エレガント山の血! 手足! 生首臓物筋肉片! 残虐ショーとして充分以上の成果、ゲス観客達も満足を通り越しドン引きに違いあるまい!


 だが次の瞬間、愉悦は驚愕へと一転する!


「なッなんじゃこりゃギガーッッッ!?!?!?」


 驚いたのはヘルマシーン乃海だけではない。観客達が、VIP室の暗黒デス相撲協会幹部達が、場内の全ての者が、赤いものに目を奪われていたのだ!


「は、花──」


 誰のものともつかない呟きがどよめいていた。


 そう、花だ! 赤い薔薇の花が、いつしか場内中の空中をふわりふわりと漂っていたのだ!


 飛び散った、赤いものとは、なんと薔薇!


 そして──


 土俵の上にはドーム状に厚く折り重なった薔薇の花の塊があった! それらがほどけるように渦を巻きフワァッと空中に飛び拡散していくと、頭を抱えうずくまる殺意之助、エレガントに仁王立ちしたエレガント山の姿が現れる! 二人とも全くの無傷!


薔薇の壁(ローゼンフォート)──血中エレガント濃度を根性で極限以上の限界突破まで高めることで、余剰エレガントが体外へ放出される──放出されたエレガントはエレガント粒子化し、エレガントなイメージを見せながら物理現象に干渉! こうして物理的ダメージをシャットできる障壁にもなる──というわけでゴワシますわ」


「つまりこの薔薇はエレガントの化身! 質量を持つエレガントか! まさにエレガントの極みじゃあ──ッッ!!」


 泰然と語るエレガント山、エレガントの妙技に目を輝かせる和厳親方! だが納得いかないヘルマシーン乃海!


「な、なぜだピガ……スピードとパワーを両立できない出力の限界! それがエレガント術の弱点だとテメェ自分で言ったギガ! なのにそれほどの力……さっきまでの力を軽々と超えているピポッッ!?」


「ええ、エレガントだけでは無理でゴワシますわ──ですが──ワッタクシは何者だとお思いゴワシますの?」


「ハッ! そうか、エレガント力士──ッ! 華麗ではあるが力の足りないエレガントに、相撲の力を注入する──ということかッッ!!」


「そう──それがエレガント相撲!」


 エレガント相撲の真髄に気付いた和厳親方にエレガント山が微笑む! そしてヘルマシーン乃海には、なんと──


「あァァ──ッッ!?!?!? 頭を下げたァァァ──ッッッ!?!?!?」


 殺意之助、驚愕の絶叫実況! そう──エレガント山はヘルマシーン乃海に対し、深々と、エレガントに、お辞儀をしたのだ!


「失礼つかまつりゴワシます」


「なんぞギガッ!? 後ろから撃ったワシ様の方が謝られるとは意味不明すぎゴガッ!?」


「なぜならば──」


 エレガント山は身を起こし、凛と宣言する!


「これからおヌッシャ様を──おしおきしてしまうからでゴワシますわ」


「なん……だと……ギガ……?」


 ナメているのか? ヘルマシーン乃海のメカ顔面が怪訝と苛立ちに歪む! だが、ヘルマシーン乃海を見据えるエレガント海の瞳は、超真剣!


「おヌッシャ様の卑怯メカ(ぢから)の手数、予想以上にお見事でゴワシますわ。卑怯とは弱さを補う虚飾なれど、次々と繰り出す勝利への執念、それはある意味背徳の黒き輝き! おヌッシャ様はまさに卑怯を産む機械! それほどまでのお相手ならば、こちらも手の内の全て、真のエレガント相撲をご覧に入れゴワシますのが礼というものでゴワシますわ」


「真の……エレガント相撲ギガ!?」


「えぇ──それはおヌッシャ様への鉄槌──そして──ワッタクシの真の姿!」


「エレガント山の──」


「真の姿!?」


 和厳親方と龍角が怪訝そうに鸚鵡返しをした、その直後であった──


「エレガント・メタモルフォォォ────ゼッッ!!」


 高らかに澄み渡る声! 歌劇めいた麗しいポーズを決めたエレガント山の身体が、恒星のごとく眩く発光した!


「ぐぬおァァ──!?!?!?」


 あまりの眩しさに眼を開けてはいられぬ場内の人々! だがその閉ざされた瞳には、あるイメージが鮮明に見えていた!


 宇宙だ! 蒼く広がる一面の星空だ! その視界の中央には、少女──エレガント山の姿が浮かび上がる!


 そして、バレエのようにくるくると、華麗に舞う少女は──なんと、全裸!


 しかし、全身が眩く輝き、白いシルエットとなったその肢体は、決して卑猥などには見えず、宇宙の神秘を人の形に流し込んだような神々しさを感じさせる!


 宇宙を自由に駆け回るシルエットは、虹色に輝く光の粒子を全身からたなびかせ、妖精のように舞い踊り──やがて一点に留まり、片脚で立ち、両腕を高く掲げ、クルルルルルと麗しく回転を始めた!


 その回転に引き寄せられるかのように、虹色の粒子が少女に吸い寄せられ、渦を巻いて塊となり、すっぽりと全身を覆い隠す!


 繭だ! これはまさに光の繭だ!


 永劫とも刹那ともつかない時間ののち、光の繭はキャラァァァンッと麗しく弾け飛び、虹色の粒子に(かえ)った!


 消えた繭の跡から溢れ出すように、朝露に濡れたような虹色の輝きを帯びた薔薇の花々が咲き乱れ、広がり、宇宙を埋め尽くす! その薔薇の園の中央に、背を向けて立つ、これまた虹色の輝きを帯びた人影──


 しかし、その形は、先程までの幼い少女のものではない!


 光の繭の中で変化を遂げたのだ!


 人影が、ゆるりとこちらを振り返る──


 その姿は──!!


 

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