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どすこいあそばせ! エレガント力士・エレガント山!  作者: 当年サトル
エレガント相撲プロローグ場所
2/47

長い旅の始まりでゴワシましたわ

 その引退は衝撃だった。


 十二年前のことである。


 史上最年少入幕、と同時の全勝優勝。


 わずか十六歳の力士が偉業を達成した。


 相撲界の新ヒーロー誕生は当時の社会を大いに賑わせた。「新惑星発見」「超古代遺跡発掘」といったロマン溢れる同時期のニュースと相まって、世の中は新たに動き出す時代への期待感に満ちた。


 ある一人の少年も、自分とそう歳の違わない若き俊英の快挙に憧れ、胸を震わせた。


 その祝賀の席上で、だが新たな英雄は突如告げたのだ。


「ワッシには足りないものがあるでゴワス……ワッシは土俵を降りるでゴワス。ヌッシャら、さらばでゴワス」


 その日から英雄は行方をくらませた。

 社会が、今度は驚きと嘆きに震えた。

 少年の震える胸も凍てつき、しかしまたふつふつと煮えはじめた。


 なぜ──頂点に立ちながら。

 なぜ──それ以上の何を求めて。

 行ってしまったというのだろう。

 僕が憧れた君の強さは、君にとってはつまらないものだったというのか。ただの踏み台を見上げる僕など置き去りにして、まだ足りないと──そう言うのか。

 まだ、そこから更に、強く……なるのか……!

 憧憬は怒りへ、怒りは更なる憧憬へと転じた。

 やがて少年は、密かに決意した。


「僕も……力士になってやる」


 あの若き天才の見た頂点、そして更なる高み。それを今から追いかけるのだ。そう自らに宣言すると、青空の果てへと続く、風がどこまでも駆け抜ける道が、自分の前に伸びた気がした。


 そして、少年に宿った志は、十二年の時を経て、確かに果たされることとなった。


 そこまでには、少しの──回り道があった。


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