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どすこいあそばせ! エレガント力士・エレガント山!  作者: 当年サトル
エレガント相撲ビッグバトル場所
16/47

十三ッ!

「……フ、ハハハ、気の強いオネエさんだ! 正式な参戦者でもない身で賞金を要求とは! ヘルマシーン乃海くんへの賞金は乱入者の始末を労うためのもの、君にはむしろ壊した施設の弁償を請求したいくらいだ!」


「ふむ……一理というか五十理はゴワシますわね」


 エレガント山は先ほど空けた闘技場の大穴を見やった。穴の周囲にはグリーン・マワシの隊員達が倒れ呻いている。そこから少し離れたところに、血まみれでピクリとも動かない超能侍──


「まぁよい、勝てたら修理代はチャラにしてやろう。勝てたらだがなフハハハハ!」


「ナイス太っ腹!」


「ナイスオベッカ!」


 にこやかに親指を立て合うボスと警視総監を尻目に、エレガント山は眉をひそめた。


「それはありがたくゴワシますが、お金が必要にゴワスのよね……あっそうだヘルマシーン乃海様」


「なんぞギガ!」


「ワッタクシが勝ちましたら、それ──いただけるかしら」


 エレガント山が指し示した土俵下には、待機したままの黒服力士。そして彼が手をかけているワゴンの上に積まれている、札束満載のアタッシュケース! その所有権は今、ヘルマシーン乃海にある!


「くっくっくっピー、いいぜギガ! 貴様が勝ったら全部やるガシャン!」


「ありがたくゴワシますわ!」


 エレガント山のカーテシーに、ヘルマシーン乃海がニタリと笑う。


 エレガント山が出てきた穴は、このドームの地下に張り巡らされた通路の天井に張り手で開けたものであろう。それは確かにすごい力ではある。だがそれが意味するところはひとつ──


 そう! 正規の出入口に立つ警備力士数名へ渡すワイロをケチったのだ!


 だからこの土俵に来るにはコソコソとどこかの壁を壊し侵入するしかなかったのだろう! 壁や天井を壊せる力はなかなかのものだが、暗黒デス相撲界においては珍しいものではない! グリーン・マワシをまとめて倒せたのも不意討ちだからで、正面から戦えば警備力士にも勝ち目がないのであろう!


 つまり大勢を正面から相手にできるくらいの実力はなく、懐柔できる金もない! 派手な乱入劇、見るからに濃いキャラ付けといった演出も、売名で金を稼ぐため! エレガントエレガント言いながら、その実はチンケなド貧乏俗物力士に違いないのだ!


 ヘルマシーン乃海はそう解釈すると、先ほど感じていた戦慄がスゥと消えていった。貧乏力士なら──やりようはある!


「行司よさっそく始めるでウィーン!」


 殺意之助へ振り向きながら、エレガント山からは身体に遮られて見えない位置でパパッとハンドサインを示した。殺意之助もニヤリと笑う。


「オッケェェェーイッッッ! ンじゃーァはっじめるぜェェェーイッッッ!」


 高らかな宣言! 沸く場内! 土俵の中央へドスドス歩くヘルマシーン乃海、しゃなりしゃなりと優雅に歩むエレガント山を、和厳親方、龍角が、固唾を飲んで見守る!


 そして、仕切り線を挟んで両者が対峙し、腰を落とし構えた、まさにその時であった──


「ほーれほれ、見合え見合え──」


 二人を煽りながら周りを回っていた殺意之助が、エレガント山のちょうど背後に位置した──


 まさにその時であった!


 殺意之助が腰に差す脇差・毀命丸(きめいまる)──かつて数多の武将の切腹に用いられおびただしい血を吸ってきた妖刀である──


 その、呪われし由来ゆえに力士の筋肉すら貫く刃が抜き放たれ、エレガント山の背後から降り下ろされたのだ!


「クケケケケ死ねゥェェェーイ!」


 残虐に嘲笑う殺意之助! 立ち合いの瞬間とは統計上、対戦相手に気を取られるため、力士の背後が最も無防備になるといわれている──その隙を狙い暗殺するよう、賞金の三割を報酬としてヘルマシーン乃山に依頼されたのだ! そのためのハンドサインだったのだ! 卑怯!


「グワハハハ銭とは貧乏力士には無い力ギガ!」


「ぬぉぉぉぉなんたる卑怯ーッ!」


 見るからに卑怯すぎる光景に和厳親方も思わず叫んでいた!


 が──


「!?!?!?………………!?!?!?」


 場内が呆気に取られた──


 エレガント山が刺され死ぬと思われたその時、場内の誰もが、信じられない光景を目にしていたのだ……ッ!

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