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どすこいあそばせ! エレガント力士・エレガント山!  作者: 当年サトル
エレガント相撲ビッグバトル場所
13/47

十ッ!

 コー……ホー……


 不気味な呼吸音を出しながら土を踏みしめ進み来るのは、迷彩グリーン柄のマワシに赤いベレー帽、顔は黒いガスマスクに覆われた外国人力士達──


 表向きは米軍所属の相撲兵、だが実態は暗黒デス相撲協会の私兵、特殊部隊〈グリーン・マワシ〉である!


 隊員はみな大関以上の相撲力を持ち、常人ならば十人がかりで一人に挑んでも十秒で死ぬ! それほどの手練れが群れ集う恐怖の部隊だ!


 が──


「いや……違ぇガピー……???」


 ヘルマシーン乃海はメカ首をひねった。

 常人ならば脅威でも、暗黒殺人機械横綱であるヘルマシーン乃海にとってはさほどの相手ではないのだ──


 ならばこの戦慄をもたらす気配の主とは一体──


「一体──何をなさるんかの?」


 和厳親方が進路にスッと立ち塞がり、グリーン・マワシ達は一旦足を止めた。


「ソレを回収するドスコーイ」


 先頭に立つ米国訛りの部隊長が指し示す先、和厳親方の背中の向こうにあるのは、血まみれで倒れた超能侍……!


「強い力士の死体は改造してバイオロボット兵にリサイクルできるドスコーイ。それに細胞から優秀なクローン力士兵が造れるでドスコーイ。さぁそのバイオ資源を渡すドスコーイ……!」


 逆らうならば殺す──


 冷淡な口調に込められた言外の脅しに、だが和厳親方はわずかな動揺も見せなかった。


「すまんのう超能侍──」


 大きく息を吐く和厳親方。


「正義の志を持つ力士、いわば正義力士(ジャスティスモウトリ)の力をもってして暗黒デス相撲協会を倒し、正しき相撲を取り戻す──そんな夢をこんな老人が語ったばかりに、お主は勇んで戦いに赴き、こんな結末を迎えてしもうた」


 ウヌヌゥ、と唸り、両の拳に力を込める和厳親方──


「心身老いぼれ、自らの手で戦うことに躊躇したせいで失わせてしもうた生命ッ! せめて悪の手に落とすことなく丁重に弔おうぞッ!」


 大きく息を吸い、カァッと雄叫びを上げる和厳親方!


 辺りの空気がビリビリと震える!


「老い先短い生命と引き換えにしてでものうッ!」


 部隊長の眼光から、老人相手ならではの余裕が消えた!


「急にハネ上がる体感戦力──ナルホドこれがギョクサイカクゴでドスコーイ!」


「老いて枯れたが元横綱でのう……!」


 腰を落とし、今にも掴みかからんと構え、部隊長を睨みすえる表情には、現役時代の気迫がみなぎっている!


「面白い──ジャパニーズ・コヤツデキルというやつか! よろしい、ならば──オープン・コンバットでドスコォーイッ!」


 一触即発! まさに戦場の空気! タダで予定外の血みどろ殺戮ショーが楽しめるお得感に場内が沸いた!


 そのざわめきが相手の気をわずかにでも反らす一瞬に合わせ、グリーン・マワシ達は一気に距離を詰める! 常人ではありえない速度の跳躍だ!


 だが元横綱である和厳親方もまた常人ではない! 老いた腕でも有効な打撃を叩き込むべく、急所へのカウンター張り手を狙い、複数人の攻撃動作を冷徹に、コンマ数秒のうちに観察する!


 その臨戦態勢に研ぎ澄まされた感覚ゆえに──


 ただならぬ気配を直感的に察知し、反撃を諦め、後ろへ、可能な限り遠くへと飛びすさった!


「ド、ドスコ──ッッ!」


 グリーン・マワシの面々も気付いたが、どうにもならなかった。


 ドゴウゥゥゥ────


 轟音とともに、塔が建った──


 いや、違う! 塔かと見まがうばかりの巨大な土柱! 土砂を巻き上げ、突如地面から噴出した衝撃波だ!


 それは、一瞬前まで和厳親方がいた地点で発生し、親方に飛びかかって滞空していたグリーン・マワシの面々を飲み込み吹き飛ばしたのだ!


 その衝撃波は周囲の空気を押しのけ、ドーム内に急激な気圧変化をもたらし、多くの人々がめまいを起こした。


 そして観客達は、遠のきかけた意識の中、さらに信じがたいものを見た……ッッ!

 


 

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