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world a king~異世界転生譚~  作者: 抹茶
新時代
98/101

人間達の光



後悔はしていない。

目前に立つ、遠い血の繋がった少女を見ながら、そう思う。

彼女の父親を殺したこと。


そして、俺が彼女に全てを話せないことも。


「・・・・・・」


「・・・・・・」



元から静かだった屋敷が、さらに静まりかえったように沈黙する。

遠くから僅かに聞こえる物音は、イリエのものだろうか。



(それよりも――)



こんな状況でも呑気に考えてしまう癖は、どうにも治せない。

しっかりと意識を少女へと移して、その瞳を見つめた。


未だに沈黙を貫く少女が考えていることは何だろうか。

俺への恨み?憎しみ?復讐?

それでも、きっと良い方では無いと思う。



(金色、いや、黄金色かな・・・・・・光みたいだ)



視線を空中へと彷徨わせる彼女の瞳は、黄金色をしていた。

髪の色が淡いピンクなのを考えると、なんともアンバランスなのかもしれない。


暫くその瞳を見つめていると、次第にその視線が俺に集まるようになってきた。

そして、何かの意志が現れるのを。

それなら、此方から話しかけてみよう。


どうやら、かなりの人見知りらしい。



「俺の名前はリュウ。リュウ・シルバーです」














ーーーーーーーーーーーーーーーーー


聞いたことのある名前だ、と思った。

いや、聞いたことがあるだけじゃない。


私は、その人を、その人物を―――



「『World modification』は達成出来ましたか?()()()()()


(え・・・・・・・・・・?)



自分の口から放たれた言葉に、理解が追いつかない。

私は、何を?

知らない言葉。知らない言語。


しかし、確かに目前の彼には伝わっていた。



「Of course・・・・この世界は、時期に変わるよ」



今の私には、彼の言った言葉が分からない。

何を言っているのか。誰に言っているのか。

分かるのは唯一つ。



(彼が喋っているのは、私であって”私”じゃない)



自分でも理解が追い付かない事態に、けれど彼は対応している。

その表情は、先程よりも心なしか嬉しそうにも見える。



(どうして、そんな顔を・・・・?)



目前の少女が、しかしまったく違う言語で喋りかけているのに、怯えないのだろうか。

私が今、私じゃなくなる感覚を覚えるように、彼にとっても私は認識されていないのだろうか?



(何を言っている・・・・・・!?もう、何を考えているのかすら分からなく・・・・・・・)



寒い。

存在を否定されるような感覚は、感じれないし説明出来ない。

けれど、何故だかそうだ、と言い切れる自信がある。


今、私は私を否定している。

けれど、彼はそれを許さないらしい。



「おっと、まだ()()()()に行くのは早いよ。君はまだ、世界の(ことわり)を見ていないでしょ?」



大人びた声に、幼い喋り方が重なっている。

今の彼は誰だろう。

初めて助けられた時から、彼は私の前で毎回違う彼を見せる。



(本当に、何なんだろう・・・・・・・)



気付けば、寒さは完全に消えていた。

自分の思うように視線は虚空を彷徨うし、疑惑の顔を向けることも出来ている。



(・・・・って!!完全にそれは不審者じゃない!!)



視線を彷徨わせながら疑惑の顔、どんな変人だろうか。

よもや、自分で自分に突っ込むとは思ってもいなかった。



(完全に調子が狂うわ・・・・・まず、私は何も喋れないのよ?)



自分の中で勝手に解決する私は、彼と何も話していない。

なのに、何かに惹かれるように彼を知っているような感覚がある。



(一体、どうしたの?私・・・・・・・)



思わず膝を崩したい衝動に駆られるが、今は人の前だ。

それも、人生で最も謎な人の。

意識を集中させて、考えなくては。



(どうすれば良い?逃げる?無理ね。私は運動もしっかりとやったこと無いもの。なら、戦う?それこそ無理よ。魔族を一瞬で殺しちゃうくらいなんだもん)



残された道は一つ。

そう決意して、私は鉄のように思い口を開いた。



「聞きたいことがあるの。付いてきて」



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