勇者&英雄VS邪神(2)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(最早弁解の余地無し!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(テンション最低潮)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ごめんなさい)
よっし(よくない)!それでは皆様お待たせ致しました(誰も待ってない)!
勇者達の戦いが帰って参りました!今回で中盤風な感じで、次回が終盤を迎える予定で御座います。
それでは、内容に乞うご期待を。
風が吹き抜ける。
普通の夏で、一般の家庭なら心地の良い言葉だろうが、此処では違う。
風なんて生温いモノは吹かないし、そんな渓谷も無い。
風圧だけで四肢が千切れるような暴風が、常に吹き荒れている。
そんな中、勇者と英雄は油断無く邪神を見据えていた。
先ほどの攻撃でも、致死傷には程遠い、子供が転んだ程度のダメージにしかならなかった。
そして、その傷も既に消えている。
圧倒的なまでの防御力と、それを支える再生力。
伊達でも何でも無く、最大級に厄介で恐ろしい敵だと、勇者も英雄も思う。
世間一般で云う、勇者と英雄にあまり違いは無い。
けれど、その称号の与えられ方を見れば、その戦闘には大きな違いがある事が分かる。
一騎当千するのが”勇者”で、将軍に成るのが”英雄”だ。
1人で国を幾つも滅ぼせる戦闘力を有した勇者。
何百万という軍隊を指揮し、しかし一切の乱れも無く戦争を蹂躙へと変える英雄。
本人が戦う勇者。
周囲を強化して戦う英雄。
それが、勇者と英雄という称号の違いだ。
現に、勇者と英雄が一騎打ちしても確実に勇者が勝つ。
けれど、勇者に近い実力を持つ者と英雄がチームを組めば、圧勝まで持っていける。
英雄の支援効果は、例えるなら勇者を複製するようなモノだ。
「”神々の恩恵たる硬化”」
紫をしたオーラが勇者と英雄を包み、絶大的な安定感を得る。
先ほどまでの邪神の威圧を感じさせなくなる程の、全能感を勇者は感じた。
それと同時に、邪神も動く。
「”輝度朱落”」
勇者と英雄の足元が赤黒く輝きを放つ。
それを、2人が跳躍して回避する―――寸前。
「”呪縛”」
「勇者・英雄」と続けて告げた邪神の視線の先では、禍々しい鎖に縛られた2人の姿が映っていた。
そこへ、足元の輝きが最高潮を示す!
一瞬にして強大な魔力が身体を抉るように突き刺さる――!!
槍の穂先が勇者と英雄の足元から容赦なくその身体を貫いた。
紅をしていた槍は、2人の血を吸収してさらに朱を濃くし、生々しい液体を空中に残して霧散した。
槍から解放された2人は、止められていた衝撃を解放されたように吹き飛ばされる。
――勇者の手に刻まれた蒼い薔薇が、美しく輝いた。
”万瞬癒”
安直な名前だが、その効果は群を突き抜けて強靭だった。
身体を貫かれた勇者と英雄は、たちまち無傷の状態へと肉体を再生させていく。
さらに、薔薇から放たれる緑の輝きに包まれ、精神を癒し、魔力を回復させていった。
その光景を、邪神は悦を持った表情で見下ろす。
「面白いでは無いか。さあ、もっと踊ってくれたまえ!!」
決して、常人には理解出来ない理性と感性を以って、邪神はそう叫んだ。
そこには、紛れもない本心が感じて取れる。
最高に高揚した気分と、喜びと――そして凍てつく程の殺意を持って。
「こりゃあ、本当の化け物だな」
「そうだな。・・・・・・楽しんでやがる」
冷や汗が背中を伝い、今にも恐怖で逃げ出したい。
けれど、勇者と英雄の背中に乗った重みがその思考を消し去っていった。
――俺達は、引くことは許されない。
ほとんどの人からは責められないだろう。
之ほどの化け物と戦ったのだ。
これまでも、世界中で人々を救ってきた。
希望を与えてきた。
だから、責められない。
けれど――
「違うな。違う」
噛み締めるように、勇者はそう呟く。
それに肯定するように、英雄も勇者の隣へと飛翔した。
瞬時に現れた英雄に、一瞬だけ意識を移し、そして戻す勇者。
「俺達は、勇者だ。英雄だ」
その存在を。
その称号を。
世界で最も命を知り、命と触れた者。
人々へ希望を与え、導く者。
それは――
「戦う義務があるから戦うんじゃない」
「責任から逃げるために戦うんじゃない」
――きっと、とても単純なこと。
「「俺達が助けたいと思った人々を、導くためだ。世界中から、褒め称えられたいからだ。守りたい笑顔が、守りたい願いが、叶えたい思いがあるからだ」」
理由なんて後から付ければ良い。
今この場所で、こうして邪神を殺したいから此処にいるのだ。
そう言い聞かせるように2人は告げ、そして剣を構えた。
邪神にとって、幾度となく見た聖なる輝き。
その閃光を視認した瞬間には、刃がその心臓を抉らんと迫り来る!
「フン!」
その声と共に、勇者の聖剣は大きく弧を描いて後退した。
「我にも、守りたいモノはある。叶えたいモノもある。貴様等と戦う理由など、たった1つしかないだろう?」
決定的な隙を見せる勇者へと、邪剣を――英雄へと、振り下ろした。
邪神の死角からの強烈な一撃を溜めていた英雄は、その斬撃を防ぐことは叶わない。
――けれど!何も疑うことも無く、英雄は溜めを続けた。
邪剣が英雄の首を刎ね飛ばす、その寸前。
勇者の姿が、突如として現れた。
「そうだな・・・・・そうだ。戦う理由なんて1つしかいらない」
そう呟きながら、握られた聖剣を邪剣へと打ちつけた。
ニィッ、と邪神から笑みが浮かんだ。
そして、聖剣へと邪剣の力を込めて押し返す。
「「お前の叶えたい理想が気に入らないから、それを潰すだけだッ!!!」」
照らし合わせたような、邪神と勇者の声。
それが重なったと同時に、行動を起こしたのは”英雄”だ。
「”永劫封印”」
輝きが、勇者と邪神、英雄をも巻き込んで広がっていった。




