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world a king~異世界転生譚~  作者: 抹茶
新時代
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魔族撃破





『カハッ?・・・・・小僧、何故此処に・・・・・・・・?』



偽りの血を口から流す魔族へ、俺は刺線を向けながら爪を抜き取った。

その瞬間、黒い魔力が魔族の身体を包み、少しずつ再生していく。



(やっぱり、自動再生(オート・リジェネ)はあるんだ・・・・・・・・・)



その現象を見て、俺は内心でそう呟いた。

魔族は、魔力で構成されている身体のうち、何処かに核を持っている。

今、俺はその格を貫いて活動を停止させようとしていた。


だが、上級の魔族ともなると、核の位置を任意で少しだけズラす事も可能になるのだ。

恐らく、寸前で気付かれてかわされたのだろう。



(ただ・・・・・・・・・)



俺の攻撃は、これで終わりではない。

ニヤリと口角を上げて、俺は内心で叫んだ。



(”龍爪解除”!・・・・・・・・・からの、選択の魔力(ディスチャージ)!!)



一瞬で腕が元の俺のものへと戻り、爪が消え去る。

それと同時に、解放された魔力が再び俺の元へと集まり、展開した。


本来、必要な詠唱という魔法の大部分を、こうすることで省略することが出来る。

今から使うのは魔法では無いが、魔力を使うために同じ原理が発動するのだ。



(”龍技・龍足(ドラゴン・ソル)”)



魔力は、光となって俺の中へと溶け込む。

数瞬後、俺の足は膝から龍の鱗が現れ、強靭なものへと変化した。

性能で言えば、速度が先程までの5倍ほどまで上がっているはずだ。


その足を機動力として、俺は魔族から一歩後ろへと引く。

右手を空中へと広げて、俺はまた、唱える。



(”龍足解除”!・・・・・・・で、”選択の魔力”!!)



一瞬で龍の鱗が消えうせる。

そして、俺は再び先程と同じ状態へと戻るのだ。



(”龍技・翔爪(ドラゴン・クロー)”)



右手だけを指定して意識を傾けると、広げた右手のみが龍へと変貌した。

踏み込み始めた足は、人の身に戻っていても尚、先程までの速度を保っている。

かなりの集中力を削る行為だが、それと同時に最も瞬間的な効率の良い工程だ。


振り広げた右手を、高速で魔族へと叩きつける。



「ハァッ!!」



ダンッ!!!!

砲撃をするかのように重たい音が鳴り、魔族の老人は吹き飛んでいった。

今度は、刺突の攻撃ではない理由としては、恐らく対応されているからだ。


上級の魔族ともなれば、その核は一筋縄ではいかないほどに硬い。

それを一撃で貫くには、今の俺ではどうしても攻撃を小さく、一点に絞るしかないのだ。


しかし、それを見越して核の位置を動かされるだろう。

ならばと、ダメージを与えることにした。


今の一撃だけで、恐らく暫く動けないほどのダメージが入っただろう。


俺は、吹き飛ばされて飛んでいく老人を横目で見てから、龍の眼をもう1人の魔族へと向けた。


そちらでは、未だに戦闘が持続しているようであった。

カレンが魔法を放ち、ミュアがその強靭さで攻撃を防いでいるような構図だ。



(やっぱり、慣れてるな・・・・・・・・)



2人の戦いは、全て俺によって決まるようなものだ。

俺が駆け付けるまで耐えて、耐えて耐え続けるだけの戦い。

所謂、守りに徹するタイプということだ。


俺が攻撃を担い、二人が防御を行う構図で見ると楽だろう。

ただ、俺敵にはやはりあまり賛同出来ない。


戦ってほしくないのだ。


勿論、そんな事は言っても無駄なので言わないが。



「カレン、ミュア!後方へ跳躍!」



俺の声を聞き、二人は即座に後方へと跳躍した。

その2人の間から、強襲するように俺は飛び出す。



(”龍閃の軌翔(ドラゴン・レイズ)”!!!)



俺の身体を、蒼い輝きが包み、優しく加速する。

魔族の男は、短剣で以って俺を迎え撃とうと、腰を低くして構えた。

そこへ、突撃した俺は一瞬で間合いへと詰め寄る。



「!?」



驚いた様子の男の腹を、鉤爪でクロスを描くように切り裂いた。

魔力の残滓が斬られた腹から漏れ出す。



(まだぁッ!!)



振り降りている両手を、同じくクロスを描くように振り上げた。

先程と同じ場所を、さらに深く抉る――


左肩を捻り、右から左へと身体を回転させ、右手で横から切り裂く。

そのまま返って来た左手で同じ場所を切り裂き、引き絞られた右手で、その左胸を貫く。


ザシュッ!!


肉体を切り裂き、魔力が漏れ出す音を出しながら、爪は正確に胸を貫いていた。


爪を抜き取ると、魔族の男は気絶したように倒れ込んだ。

その魔力が霧散しないことから生きていることが分かるが、今すぐに戦闘を復帰することは不可能だろう。


俺は、倒れた魔族を見下しながらそう判断した。


先程吹き飛ばした魔族を見れば、未だに倒れたまま動こうとはせず、魔力を止めることも出来ないようだ。

これで、決着。



(ふぅ~)



内心でそんな息を漏らしながら、俺は振り向いてカレン達の下へと戻った。

見れば、吹き飛ばされたカレンの親族は、未だに伸びている。


その姿を見て―――俺は何も思わなかった。

カレンの親族。

それは、クルスさんの子孫だということを示す。


そう思うと、この男性はクルスさんの遺伝子をほとんど受け継いでいないのだろう。

そう思えるくらいに、愚かに思えてきた。



「どうして、こんな男が”アレ”の中枢に名を連ねているのかしら?」



カレンも、俺と同じような意見を持ったようだ。

そんな声が聞こえて、俺はカレンの方を向いた。


そこには、心底あきれたような顔をしたカレンが立っていて。



「ふふっ」



小さくミュアが笑った。



「な、何よ!なんで急に笑うのよ!?」


「なっ、何でもない、ですっ」



未だに笑いが絶えないのか、ミュアはクスクスと笑う。

そんなミュアを、カレンは少し恥ずかしそうに、それでいて少し怒ったように見ていた。






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