王都へ
そうだった。
この少女は、服を着ていないんだった。
急いで拘束を外した俺は、適当な服を”保管庫”から出して渡し、部屋を出た。
なんだか物凄く居た堪れない気持ちになり、俺はリリナの場所に走った。
最初の森の場所に行くと、そこにはリリナがしっかりといた。
そのことに、物凄く安堵した。
「お帰りなさい!」
「ッ。ああ、ただいまリリナ」
そう言って、もう一度抱きしめた。
俺はまだ五歳の子供だ。
でも、それでも何かをしようと思えば出来るということが分かった。
これからは、もっと鍛錬したほうが良いだろう。
そして、全てを守れるようになりたい。
もちろん、第一優先はリリナだけどな。
とりあえず、今から練習しようと思う。
これは、さっき思いついた画期的な鍛錬方法だ。
まず、自然魔力の近辺一帯を俺の魔力で塗りつぶす。
その状態で、拡散した魔力から魔法を放出するのだ。
常時魔力を使用するはずだから、相当な鍛錬になる。
これを行えば、さらに魔力量と制御力が高くなるはずだ。
このまま、暫くはこの鍛錬をすることにした。
その方が良いし、何よりもすることが無いからだ。
リリナは、そんな俺の姿を見て微笑んでいる。
◆◇◆◇◆◇◆
翌日、昨日は村の家で寝たため、此処は村の中だ。
そして、俺は今村の広場に来ていた。
騎士団の人から、来てほしいと頼まれたからだ。
広場に辿り着くと、そこには立派に着込んだ騎士達が並んでいた。
それは、王を待つ臣下のようにも思える。
剣を胸の前で、上を向けて持ち、全員が俺の行く道の隣を並んでいる。
その先には、戦いの時に指揮をしていた男性がいる。
そこに向けて、俺は歩き出した。
五歳の子供に対して過剰過ぎる気がするが、まあ大丈夫だろう。
「先日ぶりですね。俺はリュウ・シルバーです」
「ご丁寧に。私は王都防衛第三騎士団副団長のキール・クリアです」
随分と長い肩書きのようだ。
しかし、何故王都の防衛を任されている騎士団が辺境に来たのだろう。
そう思っていたのが顔に出たのか、キールさんが答えてくれた。
「実は、国王による使命で、第三騎士団は辺境駐屯任務に移行中なんですよ」
「そうゆうことですか」
確かに、騎士団を辺境に駐屯させておくのは良い案だ。
俺にとってもかなり有用になる。
まずは、魔力適正を頂かなくてはな。
「失礼ですが、本日はどのような御用で?」
「そうでしたね。・・・・・・・騎士団総員よりお伝えします。今回は、助太刀頂き、真にありがとうございました!!」
これまでとは違い、凛と響く声でそう言った。
それに習ったように、騎士達もお礼の言葉を口にした。
俺はといえば、驚きですこし固まっていた。
「そのお礼とまでは行きませんが、何か頼みはありますか?」
「・・・・・・・・・・・なら、妹と王都に連れて行ってください」
「王都、ですか?」
「ええ」
俺の頼みに、キールさんは少し難しい顔をした。
流石に、子供二人を運ぶのに騎士団を使うのは無理か。
まあ、こう考えた理由は幾つかあるのだが。
「何故、と聞いても?」
「簡単です。この村の人間はほとんどが消えました。此処では生きる術がありません」
そう、この廃村には魔物達が住み着くだろう。
その場合は、前までの洞窟に住むことになるが、食料の問題がある。
それになにより、リリナに楽をさせてあげたい。
「・・・・・・・・・・・・・良いでしょう。但し、出発は今すぐですよ?」
「分かりました」
その言葉を受け、俺は急いで家に戻った。
中にはリリナが待っていたが、事情を説明して俺の家に行った。
ほとんど中は焼け焦げていたが、少しは残っている。
その中から、必要だと思うもの、大切なものを取り出して収納した。
少しの銀貨が蓄えとしてあったので、それも貰った。
こうして準備を終えた俺とリリナは、騎士団の方に向かった。
そこでは、馬に次々と騎士達が乗っている。
俺とリリナは、別々の馬に乗ることになった。
俺の方はキールさんで、リリナは女性だ。
彼女は、囚われていたがギリギリ純情であった。
そして、しっかりとした意識もあったため、すぐに復帰したのだ。
今では、この騎士団の華になっている。
出発した俺達は、直行で王都に向かうことになっている。
理由としては、すぐに辺境に戻らないといけないから、だそうだ。
閑話休題
そんな中、俺は周囲の男達を見ていた。
なんとかして魔力適正を知れれば、複製することが可能なのだ。
そのために、打開策を考えている。
俺達を乗せた馬は、しっかりと王都へ向けて走っている。
この先の王都で出会うのは、天使か悪魔か、運命の歯車は動き出している。