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world a king~異世界転生譚~  作者: 抹茶
新時代
87/101

プロローグ



※他人称視点

_______________________________



2000年。

私達人間は、700年ほど前から、地下世界と呼ばれるジ・アースで生活している。


歴史を振り返ると、その分岐点はおよそ1000年ほど前からだと分かる。

1000年前頃は、人々は魔物を討伐し、魔族と戦いながら生きていたという。


今から見れば、魔物と戦える人間なんて生活区分・最上級(貴族)に位置する人、さらにその中でも極一部の人が雇えるくらいだ。

私達は、何時襲ってくるかも分からない魔物に、抵抗する手段すら持っていない。


1000年前は、魔物への戦いは、冒険者と呼ばれる人ならばほとんどの人が下位魔物、今では全てが災害指定だけれど、の魔物を倒すことが出来たらしい。


そうやって生活する中、その数年後に、稀代の少年が居たらしい。

名前はリュウ。登録して数日程度で冒険者の中でも角上な金級に成った人らしい。


そうやって、新しく、そして強い人が現れていく時代だった。

けど、それも続かなかった。


1270年かな。今から730年ほど前に、魔族達は魔物を束ねて人間へと総攻撃を始めた。

その時、人々が期待していたリュウという少年。

そして、その近しい人の数人が居なくなった。


人々は、彼等を責めなかった。


私だったら絶対に、全てをぶちまけるくらいに怒ると思う。


けど、人々は彼等をまったく恨まなかった。

その理由は、年月とともに忘れ去られたけど、私は知っている。

何故なら、本で読んだから。


今の時代、本を買うことすら一生掛かって出来るかどうかだけど、私の家は違った。

魔族達からの総攻撃を受けてから、降伏した家はその早さによって区別されている。


勿論、降伏しなかった人々は死んだ。

総攻撃が始まってから数日以内に降伏した家が200、それで<貴族>と呼ばれている。


次が、幾つかの都市が滅ぼされてから降伏した家。

その数が1200、上流階級と呼ばれている。


その下に、中級階級、下位階級、奴隷階級と続いているの。


その中でも、私の家は貴族に分類されている。

最も信頼していたリュウという少年が、去る寸前に祖先に何かを告げていったらしい。

その言葉に従い、私の家はすぐに降伏し、そのお陰で今も不自由は無い。


魔族には頭が上がらないが、魔族の中の階級で最も下の魔族よりは上だ。

だから、私の家は末端の魔族よりも権力が高い。


その事実が、私達の心に余裕を与えてくれている。



街を歩くと、様々な階級の人が見れる。

奴隷として這い蹲る奴隷階級。それを見て恐怖しながら密かに生きる下位階級。

不安で一杯の中級階級。


そして、上流と貴族の2つは余裕がかなりある。


だから、街並みを歩けば誰がどの階級に居るのかが大体―――



「きゃっ!」


「あ?」



そうやって思案していると、前を見ていなかった所為か誰かとぶつかった。

思わず声が出て、後ろに倒れそうになるのを必死に我慢して、顔を上げる。


サッ、と顔から血の気が引くのを感じた。


気付けば、周りにいる人々も、恐れるように非難している。

それもそうだろう。


何故なら、私がぶつかったのは――



「オいテメェ。俺ガ誰だカ知っテてやってルのカ?」



酷く、言葉を理解するのが大変で、私には片言で聞こえた。

――魔族階級で、上位に君臨する上級魔族。



「俺は魔族の中で上から2番目に位置するんだぞ?」



今度は、それがしっかりと耳に流れ込んできて。



「俺にぶつかったんだ。死刑なのは確定だぜ?」



私は死を宣告された。

馬鹿、馬鹿!!

今から後悔しても意味無いことだけれど、それでも自分を叱咤する。


嬲るのが趣味なこの魔族、グレイは口角を吊り上げる。

それと同時に右の腕も上がって――



「や、やめ・・・・・・・」


「ヒッヒィッ!!愉しませてくれよォ!!」



――その手が、私には視認出来ない速度で振り下ろされた。

分かったのは、その手があった位置から腕が消えていること。

次の瞬間。


私の意識は薄れるように身体が―――



ドオオォォォン!!!



―――激しい音が、私の耳を千切るように近くから聞こえた。

頭の中がビリビリと痛む。

けど、何故か安心するような影に守られているような気がして。


私は、顔を上に上げた。






――見えたのは、私よりも少し背の高い少年の背中だった。



「おっと、ごめんなさい。まさかこんなに弱いとは思わなかった」


「なッ!!」



何よりも驚きだったのは、その少年の手が、グレイの手をしっかりと止めていることで。

私は、思わずそれが夢だと思って、そして否定した。



・・・・・・・・・こんなにも、胸が高揚するのは何故だろうか。



まるで、私の中の何かがこの人を知っているように。

上級魔族の攻撃は、人々が誰一人として見れた者はいない。

それは単に、攻撃速度が速過ぎるからだ。


けれど、この少年はそれを止めてみせた。



「何者だ!!」


「さぁ?俺も・・・・・・・・・・・・・・・・・・て変わったからね。試さないと」



途中の言葉は聞こえなかった。

けれど、それを思い出そうとする前に、さらなる驚愕が身を包んだ。



ダァンッ!!!!!



そんな激しい音とともに、私の前から2人が消えた。

その音の衝撃に驚いて振り返ると、後ろには先程と同じ形で止まる2人の姿が。



どういうこと・・・・・・・・・・・?



理解することが出来ないのは私だけじゃなかったようで。

けれど、上級魔族は一気に警戒を高めて、告げた。



「お前に、俺の本気を見せてやる。人間にもこんな強者が居るとは予想外だ」








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