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world a king~異世界転生譚~  作者: 抹茶
Side story
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終話~始まりの竜と付き人~



始祖天竜が咆哮をした事は、その日のうちに街中に知れ渡った。

なんと、竜の森から王都までの距離を越えて尚、始祖天竜の咆哮は人々に聞こえたらしい。

パニックになると思われた事件だったが、始祖天竜のその勇ましい咆哮に、混乱に陥る者はいなかった。


その隙に俺は王様に事情を説明して、国民への説明を丸投げした。


っと、かなり急ぎで行ったことにより、人々の混乱はほぼゼロ。

しかも、かなりの観光客が王都へ来ることが予想される、と財務卿は喜んでいるらしい。



(まあ、その反動があるのは当然で・・・・・・・・・・・)



で、その事を起こした俺はといえば、屋敷でミュアとカレンに説教をされていた。

ただし、向こうは半泣き状態である。



(いや、まさかこんな大事に成るとは思わなくて・・・・・・・)



なんて言い訳も言えるはずなく、ただ謝るしか無かった。

正座で、2時間くらい。













まあ、それの埋め合わせのような感覚で、俺は2人とデートをしていた。

今はもうほとんど道も覚えた王都の中で、露店めぐりだ。

本当はギルドへ依頼達成の報告に行きたかったのだが、2人に言われれば仕方無い。


・・・・・・・・ホントは行きたかったから嬉しいのだが。


と、そんな事を考えているとミュアが立ち止まっているのに気付いた。



「どうした?」


「あ、あれって何ですか?」



そう答えるミュアの先には、1つの露店があった。

そこで売られているのは、何かを限界まで焼いたのか真っ黒な物体。

近くを見れば、他の人も買うかどうか思い悩んでいるようだった。



(なら・・・・・・・)


「ほら、買いにいこ?」



ミュアの手を掴んで、先導するように俺は歩き出した。

突然のことに、ミュアは整理が出来ていないようだが。



「え・・・・・・・・・・?」


「おじさん!それ3つ頂戴!!」


「あいよー!」



声を張り上げて頼むと、今も何かをしている男性が声を返してくれた。

そして、網に乗せられていた何かを3つ取り、俺に渡す。



「銅貨3枚だ!」



気前の良さそうな顔でそう言う男性に銅貨3枚を渡し、俺はその場を後にする。



「また来いよ!」



そんな声を聞きながら、俺は手に持った何かを見ていた。

黒くて、熱い。



「それにしても、何なの?ソレ」



俺に置いていかれて不満そうなカレンがそう言うと、ミュアも頷く。

それに対して、俺も首をかしげながら答えた。



「何だろう?とりあえず、害は無いみたいだけど」


「それ食べる物なの?」


「そうみたいだよ。じゃあ、カレン食べてみる?」



怪しそうに俺の手に握られた何かを見るカレンに、俺はそう提案した。

と同時に、カレンはバッ、と後ろに飛―――ぼうとして、此処が街中だと気付いた。

そして、悔しそうな顔をしながら何かを見つめる。


そして、一言。



「食べてやるわよ」


「どうぞ♪」



その返事を聞いて、俺は笑みを浮かべて何かを渡した。

それを受け取って、微妙そうな顔をするカレン。


恐る恐る・・・・・・・・・・食べた。



「・・・・・・・・・・・・・・・美味しい」



小さく、カレンはそう呟いた。

それを聞いて、俺は笑みを浮かべる。



「じゃあ、俺も食べようかな」


「っそれでは、私も」



俺も何かを口に含み、それを見てミュアも食べ始めた。



――焼き魚だった。



何の変哲も無い。川で獲った魚を焼いただけの物だった。

ただ、2人にとっては違かったようだ。

特に、カレンの表情は珍しく楽しそうだ。


珍しい、というのも、カレンはあまり珍しい物に対して反応しない。

なのに、今は反応しているから、珍しいのだ。



(それに、ミュアも食事は初めてなのかな・・・・・・・・?)



そう考えながらミュアを見ると、食べるのに苦戦しながら食べているミュアがいた。

天に居た頃も、俺の意向で食事はしていたはずなのだが、この様子だと人間として食べたことはあまり無さそうだ、と思った。


そんな訳で、焼き魚を食べ終えた俺達はそのまま次の露店巡りへと向かった。

宝石を売っている店。食べ物を売っている店。

剣や防具を売っている店。


様々な店が立ち並ぶ市場に、やはりミュアは少し興奮しているように見える。



(良かった・・・・・・・・)



今回のデートで、ミュアとカレンがさらに成長するのなら、嬉しいことだ。

自分のことを棚に上げて、俺はそう思った。


ふと、耳を澄ますと、遥か遠くから1つの咆哮が聞こえた。

勇ましくも幼く、そして聞き慣れた咆哮。



「また咆えてるわね。どうせ、水浴びを嫌がってるんでしょうけど」



咆哮をカレンも聞いたのか、そんな言葉を漏らした。


始祖天竜は、今も尚少女によって世話をされている。


ただ唯一、水に浸かることは苦手なようで、始祖天竜でありながら全力で逃げる。

それを一瞬で止めて、強制的に水浴びをさせているのが、少女だ。

この咆哮は、子供が「嫌だぁぁぁぁ!!!」っと言っているようなもの。



(まあ、それを知る人なんてほぼいないけどね)



知っているとすれば、俺とカレン達と国王くらいだろうか。

そんな事を考えながら、俺は姿は見えない竜に向かって告げた。



「ドンマイ!」






      【サイドストーリー】~始祖天竜事件編~ 完

次話から、第二部です。

初めに読者の皆様に忠告です。

第二部の舞台とする世界は、およそ8百年後の世界。

その中で、リュウ達が千年間何をしていたのかを明らかにしながら生き抜くストーリーです。


そのため、一部のキャラは”生きた状態で登場しません”

また、完全に登場しないキャラも存在します。

そして、纏め書きにある別の国の情報などはまだ伏線です。


今後、作品を続けることが出来た場合、第三部にて使う予定です。

それでは、今後もこの物語をお楽しみいただけると幸いです。


この物語をもっと読みたい。

面白い、楽しかった。


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