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world a king~異世界転生譚~  作者: 抹茶
Side story
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Twilight of God⑭~ピクニックは亜竜討伐~



眩い閃光と激しい爆音が鳴り響いた。

魔力の奔流が狂わしく彷徨い、音の反響が耳に直接入って来る。



「これで片付いた、かな・・・・・・・・・」



今の爆発で、かなりの異形を巻き込めたようだ。

煙の中から姿を現した俺は、そう考えてからもう一度索敵を行った。



(大丈夫。少女はまだ居る)



どうやら、先程の位置からほとんど移動していない少女の反応を捉えて、俺は安堵のため息を漏らした。

今の爆発の余波や、異形の壊滅によって逃げる可能性を危惧していたからだ。



(ただ、そうなると俺に勝てる見込みがあるのか・・・・・・・・・それとも――)



――馬鹿なのか、という意見を頭の片隅へと追いやった俺は、少女の元へと歩き出した。

こんな考えをしたとしても無駄だ。

恐らく、というかほぼ確実に少女は何か切り札を持っているだろう。


なにせ、あの少女が今持っている感情は俺への憎しみだけだ。

憎しみを晴らすためなら、あの少女がどんな手段を使ってでも俺を殺しに来る。

そんな予感がすると同時に、もう1つ、思考に浮かぶことがある。



(彼女の思考を増幅させたの誰だよ・・・・・・・・)



もう、ホントに溜息を吐きたい。

いや、いっそのこと胃薬飲みたい。

勘弁してほしい、と切実に願うのは、もう何回目だろうか?


っと、そんな無駄な考えをしている間に、どうやら少女の間合いに入ったようだ。

今まで感じていた濃厚な殺意が、視界を埋め尽くすように巨大なものとなって襲い掛かってきた。



殺意の化身(デス・フォロール)が既に実体を持つってどういうこと・・・・・・・?)



感情の余波だけで強烈な風が吹き荒れるのを見て、もはや呆れ。

こんな面倒な敵を生み出した現況を絶対に呪うと誓ってから、俺は真面目な空気を出す。



「『星稜希剣(ソード・オブ・エイズ)』」


(この剣は、星の輝きと大地の加護を受けて鍛え上げられたモノ。だからこそこれは・・・・・)



そこで区切って、俺は木々の奥にいる少女を”視て”告げた。



「これは・・・・・・・保険だ」



挑発されたと思ったのだろう。貶されてるとも思っただろう。

一瞬にして、俺への殺意が膨れ上がった。



(悪いのは俺じゃないんだけどな・・・・・・・・)



そんな思いが届くわけも無く、少女は俺へと歩み始めた。

そして、呟く。



「『復讐剣(リベンジ・ザ・ソード)』」



そう呟かれた少女の右手に、次の瞬間――紅い剣が握られた。

鋸の様な鋭利な突起が良く目立つその剣からは、これまた強大な殺意が放たれている。

もう、胃が痛くなって来たように感じるのは俺だけだろうか。


まあ、そんな馬鹿みたいな思考が出来るくらいの余裕はある。

この剣は強力だ。だが、それ以上に俺の持つ剣の方が強力だ。

だから、負けは無い――


一瞬で間合いを詰め、剣を振り被ってきた少女に対して、俺はそう考えた。




―――しかし、まあそれがフラグだったのだろう。


俺の握っている剣と、少女の握る剣が衝突した、その瞬間だった。

まるで、夢でも見ているかのような光景だった。

幾重にもの輝きに包まれた俺の剣、その中心の部分が音も無く、切れていく。


そのまま、少女の持つ剣は減速すらせずに、俺へと襲い掛かった。


















「っぐぁ!!!」



思わず叫び声をあげながら、俺は無理矢理に魔力を収縮させた。

そして、叫ぶ――



「【転移】!!」



恐ろしいくらいの悪寒と、今にも消えそうな意識を残して、俺はその場から姿を消した。

振り切った反動で一瞬だけ硬直してしまったことへの猛烈な悔しさが、少女の瞳に浮かんでいるように見えた。そして、もう1つ。



「【豪癒(ガンツァ)】!!」



癒しが、俺を包みこんだ。

視界が回復した先に見えるのは、少女の間合いから少しだけ離れた森の中。

今にも少女の殺気が傍から現れそう、という恐怖を意識して押し込みながら、俺は苦痛に眉を潜めた。


見れば、俺の全身、ほとんどが血に染まり、手は真っ赤な液体でドロドロになっていた。

もはや、貧血で死なないのかと心配になるレベルだ。

事実。俺がこの魔法を発動させなければ死んでいた可能性もあるだろう。


この魔法は、自然治癒力を”未来から拝借”する魔法。

未来の、日々無駄に消え去っていく自然治癒力を微量ずつ回収し、自身の回復に当てる魔法だ。

その分、未来での自然治癒力は下がるが、今この瞬間を乗り越えられる。


痛みは凄まじいが一命を取り留めたのを感じて、すぐさま俺は思考に戻った。



(どういうことだ・・・・・・・・?なんで耐久でも切れ味でも階級でも劣る剣に負けた・・・・・・・?)



もし、あれが生身の人間同士ならば感情の強さで変わっていたかもしれないが、これは物だ。

確かに、心が宿っている物もあるだろうが、本質的には物だ。

越えられない限界というものがある。


だが、あの剣はそれを無視した。

背中を伝う冷や汗が、それが何故か酷く不快に感じた。

こんなにも、嫌な雰囲気のする戦いは始めてだ。



(考える時間も少なさそう・・・・・・・なら、あの剣は全て回避するか・・・・・・?)



そう考えて、すぐに決定した。

対処法があるのだとしても、今この瞬間にそれを探すにはリスクが高い。

それならば、安全マージンをしっかりと取った行動をするべきだ。


幸いにも、少女の速度はそこまででは無い。

俺は、再び戦いの始まる森を見据えて、密かに溜息を吐いた。











()()()()()()()が、酷く痛んだ。

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