表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
world a king~異世界転生譚~  作者: 抹茶
Side story
75/101

Twilight of God⑥~ピクニックは亜竜討伐~

翌日。

俺は朝早くから街の中を駆け回っていた。

予定では、今日の昼頃から出発するはずだったのだが、予定が変わった。


カレンとミュアにはほとんど情報を流してはいないが、恐らく何かは感づいているだろう。


(少し暖かくなってきたな・・・・・・・・・・)


ロングコートを着ているのも、もう少しだけかもしれない。

そんな事を頭の片隅で考えながら、正面の建物へと一気に跳躍する。


バッ、と軽快な音を立てて屋根を蹴り、目的の屋根へと移った。

すぐに、次の屋根へと跳躍する。


バッ、バッ、バッ・・・・・・・・


繰り返している間に、目的はおおよそ完成してきた。

これさえあれば、最悪の場合を防ぐことは出来るだろう。


(その可能性が一番高いのは、最悪だな・・・・・・・・・)


悪いことに思考が変わりそうだったので、すぐに街全体へと眼を向ける。

どうやら、ほとんど準備も終わっているようだ。


(それじゃあ、戻るか・・・・・・・・)


そう決めて、すぐに反転して来た道から少し逸れて帰る。

屋敷へは、数分程度で戻って来れた。


そこには、カレンとミュアが待っている。


「ただいま。じゃあ、行こうか」


「はい」


「ええ」


2人が頷いたのを確認してから、俺達は馬車に乗った。

今回は、あくまで前提はピクニックだ。

魔法で急ぐような事は出来ないため、馬車でのんびりと行くことになっている。


御車台に俺が乗り、カレンとミュアは荷台から外の見学だ。


「それじゃ、出発するよ」


「はーい」


カレンの嬉しそうな声を聞いて、馬を走らせる。

僅かに、予定よりも速く走らせるのが、最大の譲歩だった。




◆◇◆◇◆




結局、竜の森に辿り着いたのは、昼を越えた頃だった。

一目で分かるほど、強大な魔物が跋扈しているのが理解出来る。

それと同時に、この森の神聖さも伝わってくる。


空高く聳え立つ巨木が、見通せる全てに生えている。

木々の葉から差し込む日差しが一筋の輝きを生み出し、水は透き通っている。


「綺麗・・・・・・・」


ミュアがそう呟き、同意するようにカレンは頷いた。

どうやら、まだ異変には気付いていないようだ。


「それじゃあ、此処等辺で昼食にしようか」


そう提案すると、二人とも目を輝かせて同意した。

すぐに馬車に戻って、弁当を取り出してくる。

これは、ミュアとカレンが昨日作った弁当だそうだ。


中を見れば、日持ちするような物が大半で作られている。


(ありがとう・・・・・・・・それと、ごめん)


カレンとミュアとの約束を破るのは、これで最後にする。

だから・・・・・・・・・・・・


そう内心で呟いた所で、俺は――



――地面が、俺の目の前にあった。


(え・・・・・・・・?)


行動する時間も、考える余裕も無く、俺はその場に倒された。

確認してみれば、どうやら仰向けの状態で地面に転がっているようだった。

ただ、近くに明確な敵意は1つも無い。


あるのは、純粋な不安・・・・・・・・・・・


(え・・・・・・・・・・?)


2度目の、驚きの言葉が零れた。


視界に映った、カレンとミュアの瞳を見て。


「何処に行くつもり?」


「何をするんですかっ?」


2人の瞳には、大きく明確な、不安が宿っていた。

まるで、飼い主に捨てられた子犬のように、寂しそうで、辛いのを我慢するような、そんな瞳。


その時になって俺は、頭から冷水を掛けられたように、自分の馬鹿さを知った。


「・・・・・・・・・・・ごめん」


ただ、その言葉だけが零れた。

言いたい言葉も、言い訳もある。

でも、何よりもこの2人には、その言葉しか出なかった。


「「馬鹿ですっ!」」


「うっ・・・・・・・・・・・」


瞬間、強い衝撃が体に走り、俺は小さく呻き声を上げた。

俺の上から抱きしめてくる、カレンとミュアを見て、成す術は残っていない。

俺は、なされるがままに、腕を2人の背中に回して、抱きしめた。


そして、もう一度。


「ごめん」


そう呟く。


どうやら、今日中に始祖天竜のことをどうしにかするのは無理なようだ。

胸の中で、瞳を涙に濡らした2人を見て、俺はそう思った。


ふと、記憶の中から1つの思い出が浮かんだ。

学園に居た頃の、思い出だ。

俺はカレンにネックレスを渡した時の、あの時の記憶。


「大丈夫」


「!!」


そう、カレンの耳元で囁いた。

もう、覚えて無いかもしれない。

でも、あの時俺が、確かに救われたように、今は、これでカレンを救いたい。


「大丈夫、大丈夫」







――胸の奥が、少し痛んだ気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 一体どうすれば、目の前に地面がある状態で仰向けに倒れる事が?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ