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world a king~異世界転生譚~  作者: 抹茶
Side story
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Twilight of God②~ピクニックは亜竜討伐~

昨日、ミュアからピクニックの話をされたので、今日はギルドへ来ている。

何時も通り、騒がしいギルドの中を歩き、受付の場所へと向かった。


途中、依頼を探しておくことも忘れない。


「それでは、亜竜討伐の依頼ですね。頑張ってください」


その言葉を聞いてから受付を離れた俺は、早速暇だ。


(帰ってもミュア達はいなしな・・・・・)


今、ミュアとカレンは2人で買い物に出かけている。

昨日の夕食の時、カレンにこの話をしたら、ミュアと買い物に行きたいと言い出したからだ。


(この人混みから探すのは面倒だなぁ・・・・・)


今日は休日の一日前。

今日を乗り越えれば休みだと、人々に若干の気力を出させている日だ。

そうでなくても、王都の街並みが騒がしくないはずがない。


(どうしようかな・・・・・・)


とりあえず、ギルドから出た俺は、その足で王城へと向かい始めた。


(何かあれば良いけど)


勿論、何の用も無く、何かあればという期待だけなのだが。

それにしても、と思う。


(この国は結構平和だよな)


俺の微妙な立ち位置的に、様々な情報が噂として流れてくる。

その中には、珍しい出来事や、少し重要な情報も紛れこんでいるのだが、それを統合してもこの王都は凄いと思う。


確かに、王城の裏側、つまり王都の北側には貧民街が存在する。

しかし、そのほとんどの住民が日々暮らしていくのに困っている訳ではないのだ。

ただ、あまり大きな買い物が出来なかったりする人々が暮らしているだけである。


その理由として、北側の街並みもかなり綺麗だ。


(そうだなぁ。北側に行ってみるのも良いかもしれない)


そう決めて、俺は王城の横を通り抜けるように北街へと進んで行く。

南側よりは明らかに劣る外見だが、それでもしっかりと整備された街並みを見て、平和だなぁ、と思う。


「さてと、どうするか」


そう呟いて、進み出そうとした、その時だった。


「え・・・・・・?」


そんな声が、横から聞こえた。

振り向くと、そこには1人の少女が立っている。

放心したような少女の手から滑り落ちた籠から、幾つかの果物が坂を下り落ちていく。


ただ、それにも気付かないほど、少女は驚いた目で俺を見ている。


「誰・・・・・・?」「リュウ、さん・・・・・・」


同時に、互いに矛盾した言葉を発した。

ただ、少女からの声に、少しだけ嬉しそうな雰囲気が感じられたのは嘘じゃないはずだ。


(どういう・・・・・・?)


そう思って、声を掛けようとしたその瞬間。


――またもや、予想外の出来事が起きた。


ドオオオオォォォン!!!!!


(!?)


北側の、さらに奥にある大きな建物から、爆発が発生したのだ。

それと同時に、俺の鍛えられた瞳に、赤い翼が映った。


(竜種か!!)


そう考えたと同時に、俺は駆けだしていた。

少女はその場で、怯えたように縮こまっていたが、今はそれ処ではない。


「【天翼ファフニール】!!!」


坂の上から、大きく跳躍と同時に、俺はそう叫んだ。

刹那、背中から白銀に輝く翼が生成され、力強く羽ばたく。

一瞬で、爆発の起きた建物まで到着した。


「ガアアアアアア!!!!」


本能的な恐怖を誘う咆哮が轟き、爆発の煙が晴れた。

そこから姿を現したのは、赤い竜である。


獰猛な瞳を血走らせ、周囲に見れる黒いフードに包まれた男達を睨む。

男達は、怯えたように硬直し、今にも逃げ出しそうな形相だ。

逃げれないのは、恐怖からだろう。


だが、俺を驚愕させる出来事はさらにあった。


赤い竜の首元に深く装着された鉄の輪。


(奴隷首輪!?・・・・・・奴隷商か!)


生物を強制的な命令下へと置く道具が、この奴隷首輪と呼ばれるものだ。

それが、赤い竜の首元にしっかりと装着されている。


そして、その首輪が発しているのは、罰。


(竜を捕獲して奴隷にしたけど、暴走した・・・・・・・か。当然かな)


竜の力は侮れない。

確かに、亜竜ならば金級冒険者で討伐出来るような相手だ。

しかし、それは”亜”が付く種族だけである。


(本物の竜は・・・・・・亜竜程度では絶対に勝てない)


例え、どんな大群の亜竜が奇襲をしたとしても、竜には勝てないだろう。

それ位の差が、竜と亜竜には存在する。


「馬鹿がッ!!!」


思わず、そう呟く。

とりあえず、この竜を帰すのが先決だろう。


「【氷の狙撃手】」


冷気を放つ薄い青色をした弓が、俺の手の中に形成された。

それを、構え、首輪へと放つ。


ガキン!!!


重い破壊音とともに、首輪が破壊され、竜の首が曝け出された。

そこには、相当強い力で苦しめられていたのだろう。

深い跡が刻まれていた。


それを見て、無意識に歯軋りをしている俺。

自覚して初めて、怒っていることに気付いた。

思わず、自嘲気味に苦笑が零れた。


どうやら、随分と優しい人に俺は成ってしまったようだ。


(今、助ける)


そう内心で呟いて、押さえ込んだ魔力を解放させる。



『垂れ流せ業火よ 平伏せ激流よ 燃え盛れ大気よ 迸れ大地よ 暴れ狂え光よ 粛清せよ闇』


『全てを支配し、管理し、統治し、導く我を 全ての理を超越し、翻す我を』


『称え 崇拝し 拝み 平伏し 頭を垂れ』


『見上げよ そして、畏怖せよ』


『決して届かぬ天があるのなら、その頂点を打ち砕く』


『我は覇者であり、王である』


『今この時より、全てを革命する』


『創造神の名において、汝の世を正さん』



莫大な魔力の輝きが、周囲へと伝播していく。

あまりにも強大な魔力に、魔力の粒子が可視化される程だ。

黄金と白銀へと染まった眼を開き、竜を見下ろした。


「『帰りたまえ』」


その一言だけで、輝きがさらに強まり、世界が明滅する。

竜は、何も言わずに頭を下げ、その場を飛び去り始めた。

真っ赤な翼を羽ばたかせ、東側へと向けて飛び立った。


それを見て、俺も魔力の解放を終わらせる。



ちなみに、この輝きは未来永劫この王国の歴史として語り継がれるそうだ。

何でも、国王が大々的に自慢したとか。

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