終話~叶える未来~
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意識を取り戻したカレンだが、休む間はまだ作れそうにない。
カレン自身も承知しているようで、何も言わずに俺に身体を預けてくれている。
お姫様抱っこをしながら空を駆け、大きく上へと飛び上がる。
この先に、ミュア達が待っているからだ。
雲を突き抜けた先で、4人は佇んでいた。
コオとシルバは、どちらかと考えれば主人を待つ犬の立場だが。
それと、セラもミュアの付き添いという解釈の方が正しい。
何が言いたいのかと言えば、此処で重要なのはミュアだけ、ということ。
「終わったよ。終わらせた」
俺がそう告げると、皆が一様にホッとした顔を見せた。
それと同時に、コオ、シルバ、セラの3人はその場から掻き消えるようにいなくなった。
残されたミュアと俺とカレン。
沈黙が続いた。
――かと思ったら、意外と2人とも自己主張が激しいようだった。
「私がリュウの彼女よ!!」
「いえ、私がリュウの彼女ですよ」
そんな争いが、俺の目の前で始まった。
俺としては、俺の目の前でそれを堂々とされると居心地が悪いんだけど。
思わず苦笑いが浮かび、溜息が零れた。
「ちょっとリュウ!!なんで溜息なんて吐いてるのよ!?」
「そうですよ。大体、なんでリュウは話に参加しないのですか?」
(おいおい。こっちに話振った途端に仲良くなるなよ・・・・・・)
そう言いたいのは、なんとか我慢する。
2人がこんな調子でソレを言ったら、最早俺だけが標的にされそうだからだ。
「え~っと…・・・・・・・・・ちょ~っとトイレ行ってくる、ね・・・・?」
「駄目よ!」
「だめですよ♪」
「あ、ハイ・・・・・・」
2人に両腕を掴まれた俺は、抵抗もせずに降参した。
もう、成る様に成れ。
「じゃあ、まずはリュウの説教からね」
「そうですね。私も、それには賛成します」
「え?あ、え、あ、ちょ、待っ!!」
恐ろしいくらいの笑みで歩み寄る2人に、本能的な危機感を覚える。
思わず引き攣った笑みのまま、転移を発動しようとした。
――バフッ!!
だが、それは杞憂だったようだ。
両側から俺の身体を半分ずつ、器用に分けて二人は抱きついてきた。
そして、俺の胸に顔を当てて、身体を震わせる。
それを見て、俺は嬉しい気持ちも合わさって、笑みを浮かべた。
両腕を広げて、2人を包み込むように抱きしめる。
ビクッ!
と、一瞬だけ反応した2人だが、すぐに力を抜いた。
そのまま、泣きじゃくる子供のように顔を押し付けてくる。
(確かに、説教だなぁ・・・・・・・)
2人を見て、俺はそう思った。
愛おしい2人が泣いている理由が、俺なのだ。
何も出来ないし、悪いのは一方的に俺だ。
だから、心苦しい。
でも、それと同時に、嬉しい気持ちも溢れるように広がっていく。
「ごめん。・・・・・・・ありがとう。・・・・・・・・・ただいま」
囁くように、しっかりと、俺が居ると刻み込めるように、そう告げた。
さらに、俺の身体を抱きしめる腕に力が入った。
「うんっ!!」
「はいっ!!」
でも、それが酷く暖かく、嬉しい。
ミュアは、これから今以上の壁に打ち当たるはずだ。
それに、俺と久しぶりに会えたばかりで、整理が必要な時間に入る。
カレンも、俺と戦った記憶が、深く根付くかもしれない。
どうやら、記憶があるというのは確認済みだからだ。
これから、どうなるのかは俺にも分からない。
でも、今この瞬間に俺の腕の中で泣く2人を、笑顔で居させ続けるようになりたい。
だから、これからも頑張ろうと思う。
「「お帰りなさい、リュウ!!」」
「ああ、ただいま」
2度目の言葉。
でも、それで良い。
何回だって、2人の元へと帰るのだから。
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「起きてくださいリュウ」
「ん、~~?おはようミュア」
「はい。おはようございます♪」
ベッドから起き上がり、横を見ると、可愛らしいワンピースに身を包んだミュアが微笑んでいる。
それと同時に、廊下から慌しい足音が扉の前へと近付いてきた。
「ああ~!!またミュアに取られた~!!」
「ふふっ」
「別に取られた訳じゃないんだけど・・・・・・」
扉を開けた途端、そう言って悔しがるカレンに、ミュアは嬉しそうに微笑んだ。
そんな2人を見て、俺はそう呟くが、カレンには聞こえなかったようだ。
あれから2日が経って、大きな山は乗り越えた。
王様に報告して、クルスさんに事情を説明した。
それと、ミュアが一緒に住むことになった。
婚約は、指輪はなし、ということでカレンが許可した。
それでも、婚約出来ただけでミュアにとっては充分らしくて、とても嬉しそうなのだが。
若干、それを後悔した、とカレンが前呟いていた。
「はぁ。とりあえず、朝食にしよう?」
「うぅ~!分かった」
「はい」
2人の返事を聞きながら、俺は部屋を出た。
それに続くようにミュアとカレンも部屋を出て、俺の隣を歩く。
今日から、以前よりも楽しい毎日が始まりそうである。
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