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world a king~異世界転生譚~  作者: 抹茶
創造神と神々、人々は未来へと――
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終話~叶える未来~

_________________________________


意識を取り戻したカレンだが、休む間はまだ作れそうにない。

カレン自身も承知しているようで、何も言わずに俺に身体を預けてくれている。

お姫様抱っこをしながら空を駆け、大きく上へと飛び上がる。


この先に、ミュア達が待っているからだ。


雲を突き抜けた先で、4人は佇んでいた。

コオとシルバは、どちらかと考えれば主人を待つ犬の立場だが。

それと、セラもミュアの付き添いという解釈の方が正しい。


何が言いたいのかと言えば、此処で重要なのはミュアだけ、ということ。


「終わったよ。終わらせた」


俺がそう告げると、皆が一様にホッとした顔を見せた。

それと同時に、コオ、シルバ、セラの3人はその場から掻き消えるようにいなくなった。

残されたミュアと俺とカレン。


沈黙が続いた。





――かと思ったら、意外と2人とも自己主張が激しいようだった。


「私がリュウの彼女よ!!」


「いえ、私がリュウの彼女ですよ」


そんな争いが、俺の目の前で始まった。

俺としては、俺の目の前でそれを堂々とされると居心地が悪いんだけど。

思わず苦笑いが浮かび、溜息が零れた。


「ちょっとリュウ!!なんで溜息なんて吐いてるのよ!?」


「そうですよ。大体、なんでリュウは話に参加しないのですか?」


(おいおい。こっちに話振った途端に仲良くなるなよ・・・・・・)


そう言いたいのは、なんとか我慢する。

2人がこんな調子でソレを言ったら、最早俺だけが標的にされそうだからだ。


「え~っと…・・・・・・・・・ちょ~っとトイレ行ってくる、ね・・・・?」


「駄目よ!」


「だめですよ♪」


「あ、ハイ・・・・・・」


2人に両腕を掴まれた俺は、抵抗もせずに降参した。

もう、成る様に成れ。


「じゃあ、まずはリュウの説教からね」


「そうですね。私も、それには賛成します」


「え?あ、え、あ、ちょ、待っ!!」


恐ろしいくらいの笑みで歩み寄る2人に、本能的な危機感を覚える。

思わず引き攣った笑みのまま、転移を発動しようとした。


――バフッ!!


だが、それは杞憂だったようだ。

両側から俺の身体を半分ずつ、器用に分けて二人は抱きついてきた。

そして、俺の胸に顔を当てて、身体を震わせる。


それを見て、俺は嬉しい気持ちも合わさって、笑みを浮かべた。

両腕を広げて、2人を包み込むように抱きしめる。


ビクッ!


と、一瞬だけ反応した2人だが、すぐに力を抜いた。

そのまま、泣きじゃくる子供のように顔を押し付けてくる。


(確かに、説教だなぁ・・・・・・・)


2人を見て、俺はそう思った。

愛おしい2人が泣いている理由が、俺なのだ。

何も出来ないし、悪いのは一方的に俺だ。


だから、心苦しい。

でも、それと同時に、嬉しい気持ちも溢れるように広がっていく。


「ごめん。・・・・・・・ありがとう。・・・・・・・・・ただいま」


囁くように、しっかりと、俺が居ると刻み込めるように、そう告げた。

さらに、俺の身体を抱きしめる腕に力が入った。


「うんっ!!」


「はいっ!!」


でも、それが酷く暖かく、嬉しい。



ミュアは、これから今以上の壁に打ち当たるはずだ。

それに、俺と久しぶりに会えたばかりで、整理が必要な時間に入る。

カレンも、俺と戦った記憶が、深く根付くかもしれない。


どうやら、記憶があるというのは確認済みだからだ。


これから、どうなるのかは俺にも分からない。

でも、今この瞬間に俺の腕の中で泣く2人を、笑顔で居させ続けるようになりたい。

だから、これからも頑張ろうと思う。


「「お帰りなさい、リュウ!!」」


「ああ、ただいま」


2度目の言葉。

でも、それで良い。

何回だって、2人の元へと帰るのだから。




___________________________________





「起きてくださいリュウ」


「ん、~~?おはようミュア」


「はい。おはようございます♪」


ベッドから起き上がり、横を見ると、可愛らしいワンピースに身を包んだミュアが微笑んでいる。

それと同時に、廊下から慌しい足音が扉の前へと近付いてきた。


「ああ~!!またミュアに取られた~!!」


「ふふっ」


「別に取られた訳じゃないんだけど・・・・・・」


扉を開けた途端、そう言って悔しがるカレンに、ミュアは嬉しそうに微笑んだ。

そんな2人を見て、俺はそう呟くが、カレンには聞こえなかったようだ。


あれから2日が経って、大きな山は乗り越えた。

王様に報告して、クルスさんに事情を説明した。

それと、ミュアが一緒に住むことになった。


婚約は、指輪はなし、ということでカレンが許可した。

それでも、婚約出来ただけでミュアにとっては充分らしくて、とても嬉しそうなのだが。

若干、それを後悔した、とカレンが前呟いていた。


「はぁ。とりあえず、朝食にしよう?」


「うぅ~!分かった」


「はい」


2人の返事を聞きながら、俺は部屋を出た。

それに続くようにミュアとカレンも部屋を出て、俺の隣を歩く。

今日から、以前よりも楽しい毎日が始まりそうである。


__________________________________


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