閑話 VS団長×2
風が俺の前を通り過ぎて、髪を揺らす。
”炎剣”+”魔力剣”+”焔炎”によって発動している剣を握り、正面に構える。
此処、王宮の闘技場では、俺と騎士・魔道師団長との模擬戦が行われるのだ。
俺も、最初から全力で戦わないと勝てない強さなはずだ。
「”対処””適応””察知””強奪””反撃””閃光””疾風””神速””絶空”」
新しく取得した魔法も全て発動させて、俺の存在を主張する。
闘技場の中、俺の視線の先には騎士団長がおり、魔道師団長の居場所は不明だ。
そのためにも、俺は自然魔力を侵食していく。
魔力で侵食を開始したその瞬間、騎士団長が動いた。
(速いッ!?)
「シッ!!」
身を低くして俺に切り込んできた騎士団長に対して、俺は剣を振るった。
大きな風圧が起こったが、騎士団長は少し吹き飛んだだけだ。
(!?)
悪寒が走り、後方に跳躍する。
その目前を、雷が通過していった。
放出された方角を見るが、既に誰もいない。
恐らく、認識されないための魔法か道具があるのだろう。
俺は、騎士団長目掛けて踏み込んだ。
暴風が巻き上がり、俺と騎士団長との間合いはほぼ消える。
「ハァッ!!」
気合を込めて剣を振るうと、その先が剣とぶつかった。
騎士団長の剣との押し合いだ。
しかし、その勝負は一瞬で片付いた。
またもや悪寒が走り、俺は直感に従って上に跳躍する。
真下を見ると、そこを雷が貫通していく。
やはり、その方角を見ても人影は見つからない。
悔しい気持ちもするが、まずは騎士団長の相手が先だ。
握り締めた剣を両手で構えて、地を蹴り飛ばした。
地面が抉れ、暴風が後方を襲う。
「シッ!!」
短い息が吐かれ、またも間合いが詰まる。
「”爆連”!!」
俺の剣が赤く輝き、騎士団長の剣と衝突した。
__刹那、激しい爆音が鳴り響き、爆発が襲う。
俺は、その中から跳躍して退避した。
煙が晴れた所には、騎士団長が少し傷ついて立っていた。
まさか、この威力を当てて怪我で終わるとは思わなかった。
「まさか、六歳児に此処まで手酷くやられるとは、なッ!!」
今度は騎士団長が迫ってきた。
身を低くして懐に入ろうとしている体勢を見て、俺は魔法を発動した。
「”氷の狙撃手”」
一発の超高速弾が、騎士団長を襲った。
その威力は高く、騎士団長の右腕を貰った。
左腕で剣を構える騎士団長だが、やはり苦渋の顔をしている。
利き腕が取られたのはやはり辛いだろう。
__左から、高速の弾がやってくる。
キン!
それを、俺は魔力で察知して切り裂いた。
魔力を纏った剣で魔法を斬るのは簡単だ。
逆に、魔法を放ってきた場所を特定し、その場所へ駆け抜ける。
そうはさせまいと、俺の直線上に騎士団長が割り込んでくる。
魔法で応戦しながら、俺は魔道師団長の元へと走りぬけた。
「”天光”!!」
俺がそう叫ぶと、俺を中心に空から光が降り注いだ。
その光に照らされた地面が、次第に溶けていく。
これは、俺を中心とした広範囲に超高熱を当てる魔法だ。
もちろん自分に害は無いため、かなり使い勝手が良い魔法だ。
「”周破”」
回転しながら切り裂く行動を取り、騎士団長を吹き飛ばした。
それを確認せずに、俺は魔道師団長の場所に駆けた。
遥か遠くにその姿を捉えて、俺の速度はさらに上昇する。
「”神速”!!」
一瞬、世界の全てが止まったように見えた。
その中を、同じ速度で走りぬける。
動きが戻ると、俺は先程の位置から物凄く前へ進んでいる。
既に、魔道師団長は目前に迫っている。
「シッ!!」
「”雷足”!!」
咄嗟に魔道師団長は雷の如き速度で俺から離れた。
そこを追撃しようとした俺だが、そこへ騎士団長の剣が迫ってきた。
それを、寸前に剣で防いだ俺は、氷の弾を騎士団長に放った。
それを後ろに跳躍したことで回避した騎士団長に、俺は走り寄る。
_刹那、俺の目前に雷が招来した。
「クッ!!」
それを剣で受けて、俺は突き進んだ。
雷が剣を通して俺にもダメージを与えるが、今は問題無い。
剣を振り上げて、騎士団長目掛けて振り下ろした。
しかし、その剣が当たる直前に雷が飛来する。
舌打ちをしながら、俺は後ろに跳躍した。
この二人のチームは、かなり面倒で強い相手だ。
剣を構えた俺に、第二ラウンドだとでも言うように二人も構えた。
吹き抜けた風が俺に当たった直後、その速度を追い越す速さで俺は駆けた。
晴天が俺を照らすと同時に、天光によって僅かなダメージが二人を襲っている。




