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world a king~異世界転生譚~  作者: 抹茶
少年期
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模擬戦



模擬戦の開始を合図に、先程までの雰囲気はかなり変わった。

そこは、流石に王立の学園だな、と感心させられる。

敵である生徒全員が、しっかりと俺達の隙を狙い、そして警戒しているのだ。


一瞬でそこまで切り替えられるのは、素直に感嘆してしまう。

ならば、俺も本気で戦うのが礼儀だろう。



「”魔力剣”」



炎の剣を手に握り、俺は地を蹴った。

その動きに警戒する生徒の中の男子に狙いを絞り、ほぼ一瞬で背後に回る。

そのまま手を掴み、足を引っ掛けて後ろに思いっきり投げた。


七歳の身体からは想像出来ないほどの力で男子生徒は投げ飛ばされ、そのまま場外となった。

その出来事に唖然とする生徒達を尻目に、カレンとシオンの攻撃も始まった。

二人は、得意とする魔法を放ち、しっかりと気絶させている。


その攻撃を受けて復活し始めた生徒達は、今度は攻撃を始めた。

それぞれが魔法を展開して、攻撃を放ち始める。

それは、炎であったり雷、氷、霧に近い状態のものもあった。



「凄いな・・・・・・・・・・・・」



俺は無意識のうちに、そう呟いた。

別に上から目線で言っているのでは無く、本心から凄いと思うのだ。

俺と同年代で、俺の方が修行しているはずなのに、この生徒達は魔法を”使えている”


それが、どれだけ大変なのかは俺も理解出来る。

小学校一年の時に、皆は自身の声を”大きな”では無く、最高に”綺麗”な歌声が出来ただろうか?

これが出来た人は、そういう才能があるのだろう。


少なくとも、俺は出来なかったのだ。

それと同じように、魔法というのは難しい存在である。

この生徒達は、その魔法を理解し、扱っている。


炎の弾を発動させて、それを放ち、後ろに男子生徒が続く。

俺が炎の弾を切り裂くと、その先から男子生徒の短剣が迫っていた。

それを、さらに高速な剣で防ぎ、逆に蹴り飛ばす。


此処で、俺はさらに驚いた発見をしたのだ。

この生徒達は、吹き飛ばされても泣かない。

七歳なんて、まだ泣き盛りなのに、必死に歯を食いしばって立ち上がるのだ。


俺は、この世界の、このクラスの生徒に対して、笑みを浮かべた。

楽しい。

素直にそう感じるのは、かなり久しぶりなはずだ。


俺は、一人ひとりに対して、しっかりと相手をしていく。

流石に、カレンの婚約者である以上、負けは許されない。

そんなことをしたら、最悪の場合は護衛を外されて退学になってしまう。


騎士団長と魔道師団長の二人に勝てる俺が、生徒に負けては意味が無いのだ。

右手をつかって武器を弾き、左手を使って魔法を打ち消す。

両手を使って迫る魔法を打ち落とすのは、かなり難しい技だ。



「おりゃあああああ!!」


「はッ!」


「ぐハッ!?」



かなりの速度で突進してきた生徒に対して、俺は腹を殴り飛ばした。

手加減をしていたら、舐めていると思われてしまうのだ。

そんなこと、俺の意地が許さない。



「”霧の誘惑”」



発動させた魔法により、訓練場が霧に包まれた。

俺は、全部見えるのだが、他の者は違う。

霧の所為で、たった数歩先も見えないほどの視界が悪くなるのだ。


彷徨う生徒達の背後に忍び寄り、俺は意識を刈り取っていく。





霧が晴れた時、生徒達は全員倒れ、荒い息をするカレンとシオン、そして俺だけが立っていた。

その結果を見て、ミリア先生は満足そうに頷いた。



「やっぱり、”黒帝”に勝てる生徒はいないか~」


「その二つ名辞めてもらえますか?」



ミリア先生が口にした”黒帝”という言葉。

これは、国王が俺に与えた二つ名で、かなり厨二病の香がする。

俺としては固辞しているのだが、まったく聞き入れてくれない。


既に一部の地位が高い者には知れ渡っており、たまにそう呼ばれるのだ。

しかし、剣聖にそう呼ばれるとはまったく思っていなかった。

一つ、溜息を吐いた俺は、カレンの傍に行った。



「大丈夫か?」


「ええ、ありがとう」



俺の差し出した手を握って、カレンは立ち上がった。

その顔には、未だに疲労が見えるが、それでも笑顔を浮かべている。

同じようにシオンも立ち上がらせると、ミリア先生がやってきた。



「今日の授業はこれまでなので、貴方達は割り振られた寮に戻りなさい。ちなみに、三人とも同じ建物で同居よ」


「「「え?」」」



突然、ミリア先生が爆弾を投下しやがった。

同居?どうきょ?とうきょ?東京、かな?

いやいやいや。絶対同居って言ったよ、この先生。


俺達が、それぞれ驚いたような顔をしていると、ミリア先生はニヤリと笑った。

何処か、とても悪戯が成功した子供のような雰囲気な気がするのは、俺だけだろうか。



「それじゃあ、これが鍵で、場所は此処の裏よ」



そう言って、ミリア先生は倒れた生徒達の方に向かった。

それを見つめていた俺達だが、顔を見合わせてから、溜息を吐いた。

まったく、七歳の子供が一日でこんなに溜息を吐くとは思わなかった。



「じゃあ、行こうか?」


「ええ」


「わかりました」



俺が声を掛けて、二人が頷いた。

それを見て、俺は訓練場の裏に向けて進み始めた。






  ◇◆◇◆◇◆◇






俺達の住む家は、確かに訓練場の裏にあった。

しかし、その見た目はなんとういか・・・・・・・・・・・・



「リュウの考えていることを当てるわよ。・・・・・・・・・・ぼっろ」


「ぷっ・・・・・・・・・・・」



確かに、俺の考えであっている。

俺達の目前には、壊れかけの、三階建ての建物が立っていた。

その建物からは魔力を感じるとともに、物凄く古びていた。


木々が生え、草で覆い尽くされた建物を見て、此処に住みたいと思える程、俺の生活は貧乏ではないのだ。

恐らく、俺達がなんとかすると思って、この場所を選んだのだろうが。



「これは、流石にどうしようも無いと思うよ?」


「私もそう思うわ」


「同意します」



溜息をさらに吐いた俺は、右手を建物に翳した。



「”浄化”」



そう呟くと、建物に光が纏われた。

綺麗な光景だが、これのカラクリは簡単だ。

俺の適正である”神力”の行使によって修復させているのだ。


神力の行使には、俺の体力を使うのだが、俺の体力はかなりある。

今の発動でも、ほとんど減少しなかったのだ。

しかし、逆に無闇に使って良いわけでもない。


この魔法は、使い過ぎると人間ではなくなるのだ。




_綺麗になっていく建物を見て、俺達は苦笑した。



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