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world a king~異世界転生譚~  作者: 抹茶
幼少期編
22/101

謁見と今後



謁見の間にて、俺とクルスさんはすぐに別れた。

俺は階段のすぐ下、謁見の間の中央にて跪いている。

クルスさんは、国王の隣で立ち、俺を見下ろす形だ。


今この場所は静かなものだが、恐らく貴族たちの方では密かな会話があるのだろう。

此方を見ながら、互いに小さく口を開いているのが見える。



【複製により、スキル”威圧””殺気””威厳””王の風格””覇者の風格”を取得しました。統合し、変化させ”絶対者の威厳”を取得しました】



俺はそんな中、国王のスキルを複製していた。

まさか、此処まで有用なスキルを持っているのは驚いたが。

と、そこで国王が口を開いた。



「面を上げよ」


「は」


「そなたがリュウ・シルバーか」


「は」


「今回、そなたを読んだのは幾つか質問がしたかったためだ」



ていうか、質問以外に俺がこんな場所に呼ばれる訳無いでしょ。

呼ばれるとしたら、何か強い敵が現れた時とか、それを討伐した時くらいだ。

まず、王宮に招かれる平民自体がほとんどいないだろう。



「公爵による情報と、騎士団からの情報によると、そなたは五歳という幼さで盗賊団を圧倒したとあるが、それは事実か?」


「その通りで御座います」



その言葉に、周囲が騒ぎ出すのが分かった。

此処には防音結界が張られているようだが、その態度で理解出来るものだ。

しかし、王の前で騒ぎ出す貴族とは、なんとも大胆な。


俺は、貴族たちの態度にかなり呆れていた。

そんな俺を見て、国王も少しだけ苦笑を浮かべる。

ああ、この人は大変だな。



「では、どのようにして圧倒せしめたのだ?」


「返答を拒否します。これは、不特定多数の人物がいるための正当な拒否です」


「そうか。ならば、この後にでも密会を用意しよう」


「ありがとうございます」



クルスさんに言われた通りに進むな。

やっぱり、これは裏で糸が引かれていると見て間違いないだろう。

なら、そこまで面倒では無いはずだ。


しかし、そんな予想も空しく、国王は爆弾を投下した。



「では、公爵家令嬢のカレン・ルーティア。赤の天才と呼ばれる彼女と寝食を共にし、婚約している、というのは事実か?」


「・・・・・・・・・・・・・ええ、事実です」



物凄く面倒事になる予感がするよ。

俺は、今後の事態を考えながら、溜息を吐きそうになった。

そこで、国王がニヤリと口角を歪めた。



「そうかそうか。しかし、今はカレン嬢は私の部下が見張っている。そなたの情報を全て聞き出すためには、このまま人質になってもらうしかないだろうな?」



カレンが見張られている、か。



(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)



なんだか物凄く嫌だな。

こう、身体の奥から罵声が出てきそうな雰囲気だよ。

国王とその部下殺せばなんとかなるのかな?



(なら、全てを始末しようか・・・・・・・・・・・)



「”絶対者の威厳”」



場を、絶対者の威厳により沈黙が占めた。

全ての者がその圧倒的な力量と威圧に、全てを諦める。いや、圧倒される。

しかし、国王やクルスさん、それから一部の貴族は少し威圧されているだけのようだ。


驚愕しているのは、まあ当然だろう。



「”炎と氷の狂想曲””雷の瞬撃””剣の舞踏会”!」



一瞬で、俺の周囲を魔法が埋め尽くした。

炎と氷の弾が踊りまわり、雷が上下に存在している。

大量の黒い剣が、空中を自由に飛びまわっている。


まさに、混沌とした舞踏会である。



「カレンを、人質にすると?」


「・・・・・・・・・・・・・・試すような真似をしてすまなかった。どうか、その怒りを静めてくれないだろうか」


「・・・・・・・こちらこそ、申し訳ありませんでした」



飛び交う魔法を消した俺は、しっかりと謝った。

まさか、こんな言葉一つで怒るとは俺も思わなかった。

今度からは、もう少し怒りを出さないように気をつけよう。


貴族たちの方は気絶した者もいるようなので、かなり騒がしいはずだ。

こんな時に防音結界は立派な役割だと実感出来る。



「では、本題に戻って。これで、質問は以上だ。部屋を用意してあるので、そこで待て」


「は」



礼をした俺は、すぐに謁見の間を出た。

そのまま、全速力で”天井”を駆ける。

カレンの居場所は既に分かっている。


道を曲がり、さらに曲がり、その先に見える扉の前に着いた。

コンコン、とノックをすると、少女の声が聞こえた。

少し経つと、扉が少しだけ開いて、メイドさんが現れた。



「公爵家令嬢のカレン・ルーティアの婚約者、リュウ・シルバーです」


「・・・・・・・・・・・・・・どうぞ」



部屋に入ると、カレンと少女がお茶を飲んでいた。

しかし、俺の姿をカレンが捉えると立ち上がり、顔を赤くする。

そんな姿を可愛いと思いながら、俺は部屋の中に魔力を充満させた。


その中で、一つの場所から別の魔力が放出されている。

形から見て、人で間違え無いだろう。

俺は、瞬時にその人物の首筋に手刀を当てた。


すると、その姿が現れたが、流石に予想していなかった。



(襲撃者かよ・・・・・・・・・・・・・)



黒いフードに身を包み、腰に短剣を装備している。

この姿は、以前公爵家の屋敷で見たのと同じだ。

フードを取ると、そこからは体格の良い男の顔が見えた。


急に現れた男に少女とカレンは驚愕しているようだが、メイドさんは一流のようだ。

俺が手刀を当てた時点で部屋の外に出ていた。

そして、今は既に元の位置に戻っていることから、用事は済んだのだろう。



「リュウ・・・・・・・・・・・・・・・?」



黙っていた俺に対して、カレンが心配そうな声を掛けた。

ただ、これはちょっとヤバイ。

近寄って来たカレンの背中に手を回して、俺の胸に抱きしめた。



「無事で良かった・・・・・・・・・・・・・・・・」


「ふぇ!?」



驚き、次いで離れようとするカレンだが、俺は力をさらに込める。

恐らく、クリスさんが薬の説明をした時に言っていた、感情が大きく揺れる時期というのが今なのだろう。


すると、カレンも諦めたようで、顔を真っ赤にしながら俺に抱きついた。



「リュウがいるんだから、無事に決まってるわよ」


「・・・・・・・・・・・・・・ありがとう」



耳元でそう囁いたカレンに、本心から礼を伝えた。

信頼されていて、命も任せてくれたのが、愛おしい。



「シオン、いる、か・・・・・・・・・・・・・・?」



そこへ入って来た人物は、この国なら誰でも知っている人物だ。



「国王陛下・・・・・・・・・・・・・・」


「お父様」



その人物、レイモンド国王は、俺とカレンを見て固まっていた。

残念ながら、その位置からは俺とカレンがキスしているように見えてしまうのだ。





  ◇◆◇◆◇◆◇





「まさか、リュウ殿とカレン嬢の仲がそこまでとは」



国王のからかうような発言に、俺とカレンは真っ赤になった。

今は、少女の部屋に俺、少女、カレン、国王、クルスさんが集まっている。

先程の謁見で話していた密会???が行われているのだ。



「しかし、カレン嬢との仲が此処まで来れば、この国は安泰だな」


「大袈裟な」



既に俺の能力は伝えてあるので、話も進む。

最初は物凄く驚いていた顔の国王だったが、俺とカレンを見て笑顔に戻ったのだ。

まあ、俺としてもカレンが無事で、この国を好きなら敵対はしないさ。



「リュウ殿。貴方には、この国の王立学園に通ってもらいたい」


「何故ですか?」


「そこには、カレン嬢が通「良いでしょう」・・・・・決めるの早いな」



カレンが行くなら俺も行くのは当然だろう。



「そこへ通うのは七歳になってからだが、それまでに貴方には強くなって貰いたい」


「強く、ですか」


「ああ。王国の魔法目録、スキル目録を貴方に開示させる権利と、騎士団長、魔道師団長との私的な決闘の許可を出す」


「分かりました」



そこまで国王が協力してくれるなら、俺としても頼みたいくらいだ。

特に、目録の方は興味が尽きない。



「それでは、明日の内に公爵家に届けさせる」


「分かりました」


「二年後を、楽しみにしているよ」



その日はそれで屋敷に戻った。





それからの日々は、毎日目録を読み、団長と決闘する毎日だった。




そして、二年という、充実し過ぎた月日が流れた。


時は運命の動く時間。


この年の学園では、異常という存在と、異常の異常という存在が現れる。


それが予想出来たのは、イチャイチャし過ぎのカレン、唯一人であった。




           1章 幼少期編 THE END

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