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world a king~異世界転生譚~  作者: 抹茶
幼少期編
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亜竜討伐の金級冒険者

前に行った鍛錬を終えて振り返ると、そこには静寂が生まれていた。

リリナはどうやら興奮しているようだが、残りの全員が違う反応だ。

どれも、驚愕が第一として存在している。


まあ、誰がどう見ても今のは可笑しいだろう。

あんな少しの魔法しか弾けないのはまだまだ力不足なためだ。

俺はそう考えて、カレンの方を見た。


カレンは、何故だが呆然と俺を見て立ち尽くしていた。

そこで振り返り、俺はその惨状を目にした。

俺の鍛錬で、地面が抉れ、草花が散っていたのだ。



「す、すいませんでした!」



思いっきり頭を下げてカレンの父親に謝った。

貴族相手に無礼なこををしたのは承知している。

だから、本気で謝らないといけないのだ。


全ては、今後の俺の自堕落で快適な生活のために。

俺は、決意を胸に立ち上がり、大きな声で告げた。



「すませんでしたぁぁぁ!!」



the DOGEZA だ。

日本人としては、この程度を一発で出来ないと意味が無いだろう。

土下座無く日本人の豆腐心はつくれない。


なんて勝手に言ってるけど、本当は早く家に帰りたい俺である。

ギルドの依頼を受けて金を稼がないと生きていけないのだ。

カレンの父親を窺うと、顔を俯かせたまま固まっていた。



(あ~・・・・・・・・・不味い奴だ。逃げよう!)



俺は急いでリリナの手を握り、屋敷を後にした。

なんだか、無償にあの場所には嫌な予感がしたのだ。

まあ、実際にその不幸は明日に降りかかってくるのだが。


俺とリリナは、そのままギルドに入っていった。



  ◆◇◆◇◆◇◆



ギルドの中は昨日とは別物のように賑わっていた。

多くの若い男達が武装して板を見つめていたり、はたまた酒場で酒を飲み騒いでいる。

そんな中に入った俺達により、場は一瞬で静まり返った。


小さな声で、「あれが金・・・・・」「子供じゃねーか?」「餓鬼は帰れ」などと聞こえてくる。

まあ、別にどうでも良いのでその横を通り、俺は受付に向かった。

昨日と同じ女性の場所に行き、声を掛けた。



「すみません」


「はい?」


「収入の高い依頼、または日帰りで出来る依頼をお願いします」


「わかりました」



既に俺を子供扱いはせずに、しっかりとした対応で応えてくれる。

こうして子供扱いをされないのは良い気分だ。

数分ほど待っていると、女性は数枚の紙を渡してきた。



「はい。これが提示された条件の依頼になります」



そう言って出された紙には、三つの依頼があった。

亜竜の討伐依頼と、護衛依頼の二つだ。

もちろん、亜竜の日帰りというのはこの近辺で目撃情報があったためだ。


迷うことなく、俺は亜竜討伐の依頼を選んだ。

そちらの方が簡単な上、護衛は苦手だからだ。



「それでは、ご武運を」



そう女性に言われて、俺はギルドを出た。

向かうのは、この王都から東に位置する森の奥だ。

そこで、亜竜が目撃されたらしい。



  ◆◇◆◇◆◇◆



「此処がその森か」


「うん」



そう俺が呟くと、リリナの肯定が返って来た。

最近、リリナの言葉使いが四歳にしては可笑しい気がしてきた。

もしかしたら、俺の常識が間違っているのかもしれないが。



「それじゃあ、行こう!」



そう言って、俺の腕をひくリリナはまだ幼い。

しかし、既に大人顔負けの可愛さと、言葉遣いを覚えている。

その事実に、俺は少しだけ驚愕した。


まあ、そんなことはすぐに良くなってリリナに引っ張られている。

既に索敵の中には亜竜の反応があるので、そこに向かって進むだけだ。

俺とリリナは、暫く会話しながら森を進んだ。






「ガアアアアアアァァァァ!!!」



亜竜の領域に入った途端、この声が聞こえた。

恐らく、亜竜が自分の領域に俺が入ったことを怒っているのだろう。

そう判断して、俺はそのまま進んだ。


なんにせよ、討伐することに変わりはない。

それで、リリナの生活が安定するなら尚更だ。

俺は、右手を前方に翳して魔力を集めた。



「”粒子砲”」



魔力の光線が、前方に向かって放たれた。

それは、索敵によって把握していた亜竜の身体に直撃する。



「グワアァァァァァ!!」



効果は高く、その翼を貫いて消えた。

怒り狂う亜竜に対して、俺は二発目、三発目と撃っていく。

その度に亜竜の身体は貫かれていく。


そして、丁度一二発目だろうか。

亜竜はその場に崩れ落ち、絶命した。

なんとも惨い殺し方だが、別に何も感じない。


流石に可愛そうな奴だな、程度しか思わないのだ。

早速、”保管庫”に収納した俺とリリナは帰宅しようと進み出した。

どうやら、リリナはまたもや俺の凄いところを熱弁したいらしい。



(あれ、長い上に差恥心が強烈に刺激されるから嫌なんだけど・・・・・・)



リリナの自慢は、ハッキリ言って美化され過ぎている。

俺のただの”粒子砲”もリリナに任せれば「幻想的な粒子の集合たる光線は、亜竜のその身体を幾重にも貫き通した」なんて言うのだ。


物凄く恥ずかしいし、そして怖い。

一体、この妹は何を目指してこんな兄の自慢をしているのだろうか。

それだけは、俺の中で今も残っている数多くの疑問だ。


まあ、そんなこんなで王都に戻って来た。

最初は昼ごろだったのだが、今は既に夕方だ。

歩くだけでこんなに時間が経ったのは初めてかもしれない。


そんなことを考えながら、俺はギルドに戻って行った。



「終わりましたよ」


「え?あ、え、きゃっ!?」



女性にそう報告すると、何故か二度見してから可愛らしい声を上げた。

一体、俺の何処が変なのだろうか。

俺は自分の姿を見回してみた。


身体には何も変化が無いし、服も汚れていない。

唯一、魔力が何時もより多く漏れているが、これはどうしようもない。

亜竜戦で中途半端に使って余った魔力が自然界に溶け込んでいくのだ。


つまり今、俺は何も変では無いはずだ。

なのに、この女性は驚いている。何故?



「えっと、どうしたんですか?」


「あ、あああああの!」


「は、はい?」


「もももももしかして、リュウ君、ですか?」


「ええ」


「ほんとに?」


「ほんとに」



どうしたのだろうか。

俺がそう思って首を傾げると、後ろの方から女性達の黄色い悲鳴が聞こえた。

ふむ、一体なにがあったんだ?


そういえば、途中からリリナが物凄く落ち着いている。

しかし、先程からチラ、チラと此方に視線を向けて来るのが気になる。

本当に何だろうか。



「あの、本当にどうかしたんですか?」


「あ、え、その・・・・・・・・・・魔力が膨大に溢れてまして・・・・・・・・その、かなり・・・・・・・」


「えっ・・・・・・・・・・・・」



まさかの魔力問題!?

とりあえず、微量の魔力で鏡に似たものを生成した。

それで自身の姿を見てみる。



(・・・・・・・・・・・・・・・あ、うん。イケメンだわ)



そこには、身体から溢れる金色のオーラを纏った俺の姿があった。

この金色は、恐らく魔力なのだろう。

そして、魔力が膨大過ぎて可視化されている、と?


ていうか、今の俺の美男さが凄い。

魔力によって髪が少しだけ揺れていて、なによりも顔がかなり美化されている。

何故こうなったのかは不明だが、自分でもちょっと怖い。


魔力の漏れはどうしようも無いが、それが止まったら直るのだろうか。

もしも直らないと俺は正直悲しい思いになる。

なにせ、生まれ持った顔が使えなくなるのだ。


俺にも心がある。

できるなら、顔は戻るようにしてもらいたい。

そう思った俺だが、まずは依頼の達成報告をすることにした。

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