王都(3)
更新が今日となりました。
また、話の変更によって周辺への編集をするのですが、その際に幾つか変更点も御座います。
カレンとの約束が、「明日」では無く「明後日」に変わります。
それによって、(4)の話も若干変更が加えられます。
その編集はこの話を投稿した時点では行っておりませんので、少々お待ちください。
リリナの元へ追い付くと、そこには瞳を輝かせる妹の姿があった。
その視線を辿った先にあるのは、何かの液体に漬けられた蟲。
そう、蟲である。
「も、もしかしてリリナ。あれ、食べたかったりする?」
思わず、否定してほしいという願いを込めながら聞くと。
リリナは、その顔を歳相応の可愛らしい笑みに染めて――
「うんっ!」
――そう告げた。
(ま、マジですか・・・・・・・・・・・?)
っと、考えてしまうのも仕方無いと思う。
なにせ、あれは見るからに駄目な雰囲気が漂っている。
お腹を壊すだけで済むのか・・・・・・・・・・・
そんな思考を中断することになったのは、奇しくも昨日の少女の言葉によるものだった。
「そうね。私も気になるから食べてみましょうよ」
「え・・・・・・・・・・・・?」
驚いて、少女の顔を確認。
どうやら、本気で言っているようである。
(え?嘘だよね?まさか本気で食べるの?えぇ~・・・・・・・・・・・・・)
ゲテモノ好きも此処まで来れば極まれるのだろうか。
俺は、苦笑いを隠すことも出来ないまま、露店へと近付いていった。
「すみません、これを三つ」
俺の言葉は、随分と理解出来なかったようだ。
よもや、こんな子供がこんなゲテモノを、しかも三つも頼むとは思わなかったのだろうか。
たっぷり数秒ほど俺の顔を見つめてから――
「あ、はい!銅貨7枚になります!」
焦ったように対応しながら、蟲の入った瓶ごと俺に渡してきた。
それを手に持って、一言。
(き、気持ち悪い・・・・・・・・・)
まだ若干生きているのか、中にいる芋虫のような蟲は、その無駄に多い足を動かしている。
それが、堪らなく気持ち悪い。
「ほ、本当に食べるの?2人とも・・・・・・・・・」
「うん!」
「ええ」
リリナが笑顔で頷いて、少女は肯定する。
どうやら、本気で食べないと駄目な雰囲気のようだ。
2人に瓶を渡し、俺は手に持つ蟲を見つめる。
芋虫だ。
誰がどう言おうと、生きてる芋虫を液体に漬けている。
俺が、悩んでいる間に、リリナは液体から芋虫を取り出して――
「はむっ!」
口の中に押し込んだ。
瞬間、芋虫の身体から溢れ出た緑色の液体が、リリナの口元から見える。
恐らく、相当な量あるのだろう。
今にも口から汁が滴りそうだ。
それを横目で見ながら少女の方を見ると・・・・・・
「ッ・・・・・・・ッ・・・・・」
物凄いビクビクしてた。
リリナの手前、強気になっていたのだろうが、今更になってその見た目に気付いたのだろう。
俺も、これは見たくない。
というより、これを食べようとする人なんて居るのだろうか?
そんな事を考えるくらいには、俺の意識はコレから離れていた。
(でも、彼女がこのままは良くないかな)
流石にこんな気色悪いモノを少女に持たせていたら、あらぬ疑いも掛けられない。
コレを持って立っているだけで通る人々から視線を集めているというのに。
「はい。俺が食べるから、君はこれを食べな?」
この子の性格だ、普通に受け取ってもダメだろう。
そう考えた俺は、持っていた甘いパンのような物を代わりに渡して受け取った。
というより、奪うように取って、後ろに下がった。
そんな俺に、彼女は驚いたように目を見開き――
「べ、別に食べれたのよ?・・・・で、でも、貴方がこれを食べれないなら、代わりに受け取ってあげるわ」
(素直じゃないな・・・・・)
そんなことを考えながら、俺はこの食べ物を見つめた。
(さて、どうやって処分しようか)
元から食べるつもりは無い。
残念だけど、無い。
無理。嫌だ。受け付けない。
ーーーーーーーーーーーーーー
それからも、少女はリリナと競うように何かに挑戦していった。
しかも、毎回俺が助けに入る始末・・・・・・
負けず嫌いな所は別に嫌いでは無いが、それを処分する此方の身にもなってほしい。
なんて、本人には決して言えない。
「さて、そろそろ帰るよ?」
日が暮れる頃、リリナが眠くなるタイミングを見計らって俺はそう切り出した。
すると、少女は少し驚いたように俺を見――次いで空を見た。
それで把握したようだ。
朝から、ずっとこの少女は一緒にいた。
「うん。帰る」
口数少なく答えたリリナに、これは少し急がないとな、と考える。
この兆候なら、きっともう少しで寝てしまう。
(仕方無いな・・・・・)
なんて内心で呟きながら、眠そうに目を擦るリリナを背中におぶった。
子供の体重なんて軽いけど、それ相応に俺も筋力が少ない。
どうしても、腕に込める力が強くなっていく。
加減が出来ない俺にとって、それは致命的だ。
”力”を無意識に使ってしまうと危険。
それは、大人でなくても分かるような簡単なことだ。
リリナを”押し潰さない”ように、けれど落とさないように持ち上げる。
――そこで、俺の視界に赤い髪の娘が入った。
どうしてだろうか。
それが凄く綺麗に見えたのは。
華の様に、気高くも幼い姿。
何かが、熱く広がっていく。
「それじゃあ、また明日」
この感情を例えるなら、何が良いだろうか。
この歳で一目惚れだろうか?
胸の中に渦巻く一時の熱く高揚する想いを表に出さないように、俺はそう告げた。
それは、次を願う言葉で、今を終わる言葉。
「・・・・・・ええ。助かったわ。けど、昨日についてはまだ納得してないわよ?」
なんて言葉を残してくるりと向きを変えて歩き出す少女を見送って、俺もまた歩き出した。
この一時の熱も、きっと冷める。
何かが、そう言う。
それと同時に、反対する何かも、言う。
どうか、熱を帯びたまま結晶のように固まれますように。
夕暮れの太陽だけが、何故かきらりと光った。
次回の更新は、9/11(火)となります。
作者のリアルの都合上、土日、月曜は予定が御座いまして、更新が出来ず、真に申し訳御座いません。
学校の、体育祭で御座います。
引きこもりを自称する私めが、果たして運動ばかりの祭り事に付いていけるかどうか・・・・・・
何故、徒競走に出場する、と言ったのか。
1ヶ月前の自分を叱りたい気持ちです。
それでは、紅組が勝つために、まずは読書に専念しようと思います()