王都へ(3)
翌日。
騎士の人達が慌しく出発の準備をする中、俺は魔法の鍛錬をしていた。
する事が無い上、最近魔力の最大値がかなり多くなって来たので、朝から使わないと減らないのだ。
そのため、今から魔力を使用して魔法を発動している。
”炎剣”を手で持ち、周囲の魔力から俺に向かって魔法を放つ。
それを、炎剣で切り裂いていく。
これで、体力と魔力が使え、魔法を放つ鍛錬にもなる。
まあ、こんなふうに毎日試行錯誤しながら鍛錬するのだ。
右から飛んでくる氷弾を確認したまま、後ろに剣を振るう。
そこにあった雷の弾が切り裂かれた時には、前方で氷の弾を切り裂いた後だ。
一瞬で四つ程度の魔法を切り裂いて行き、その場でステップを刻んでいく。
「フッ!!」
だんだんと魔法も上昇していく。
フェイントや同時攻撃も仕掛け、その度に俺の体力は削れる。
荒い息になっているのを自覚しているが、それでも止まれない。
右、左、右、後ろ、上空、斜め、右、右、前、左、後ろ___!!
「クッ!!」
捌く、捌く。
次々と襲い掛かる魔法の弾は、当たればかなり痛い。
既に二発ほど喰らっており、その場所が動く度に痛む。
そのまま回転をするように大きく剣を振り回す。
四つの角でそれぞれ剣を振るい、最後に中央で振り下ろす。
「”天空破”!!」
風圧と衝撃が周囲の魔法弾に当たり、弾いた。
一瞬だけ出来た余裕に、俺は息を整えた。
また剣を手で握り、真っ直ぐに構えた。
「ハァッ!!」
◆◇◆◇◆◇◆
鍛錬が終了すると、周りには騎士達が集まってきていた。
そして、誰もが俺を見て唖然とし、次いで驚愕している。
その中で、リリナは嬉しそうに微笑んでいる。
「流石お兄ちゃんだね!!」
「ありがとう」
喋るのも疲れる程に動いたが、それでもお礼は伝えるべきだ。
それに、喋るのも出来ないのなら出発も出来ない。
疲れ切った身体に鞭を打ち、俺は馬に向かって歩いた。
「では、出発!!」
キールさんの声と共に、俺達は進み始めた。
俺は、乗って直ぐに仮眠に入った。
これでは、魔力適正を聞き出すのは無理だろう。
◆◇◆◇◆◇◆
やはり、私の目に狂いは無かった。
リュウ・シルバーという少年は、五歳という歳で既に自立している。
盗賊との戦いでも、かなりの量殺したのに顔色は変わらなかった。
そして今日、朝彼が見せた鍛錬は、非常に高難易度なものだった。
自身に魔法を放ちながら、それを魔法で切り裂くという鍛錬だ。
普通、これは自分の身可愛さに魔法の威力や弾速が遅い場合が多い。
だが、少年の魔法は私でも致死傷を負う速さのものだった。
そして、その速度の弾を全方位から防ぎきっていたのだ。
既に、この少年は騎士団よりも強いだろう。
なんとしても、この少年は手に入れるべきだ。
帰ったら、全騎士団長に必ず報告しなくてはいけない。
◆◇◆◇◆◇◆
翌日。
今日の昼ごろには王都に到着するらしく、そのために鍛錬は無しだ。
午後からたくさん動くのに、今から体力を潰すのは勿体無い。
昨日の鍛錬、アレはかなり良い鍛錬になるようだ。
魔力が大きく上昇し、体力も増えた。
これからも、アレを日課として行うのが良いだろう。
そう決めた俺は、馬の上で魔法の鍛錬をしていた。
これは、ただ魔法と魔法を相殺させるだけで危険は無い。
しかも、疲れることも無く、かなり良い?鍛錬だ。
惜しむらくは、これで消費する魔力が微々たるものなことだ。
しかし、今それを悔やんでも仕方無いだろう。
俺は、キールさんを見上げて聞いた。
「キールさん。この騎士団の者の魔力適正を聞いても良いですか?」
「・・・・・・良いですよ」
「お願いします」
そう、今日こそ魔力適正を聞きだそうと思ったのだ。
そうしないと、このままでは機会が永遠に遠退く。
俺は、かなり焦っていると言っても過言では無いだろう。
「では、この騎士団の魔力適正は私含め五つ。”絶空””閃光””付与””対処””適応”です」
【複製により、”閃光””付与””対処””適応”を取得しました】
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≪名前≫ リュウ・シルバー
≪LV≫ 12
≪魔力適正≫ 複製 神力 氷抵抗 炎電 保管庫 絶空 取得 炎剣 強奪 反撃 弱毒
閃光 付与 対処 適応
≪スキル≫ 魔法技能 暗算 成長促進 剣術 成長補正 自然魔力 舞技
≪称号≫ 女神の慈悲 女神の心 神々の黄昏 神の代行者
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そのステータスを見て、俺はある重大なことに気付いた。
”付与”の効果は<対象に一部を切り渡す>というものだ。
それで”魔法技能”を付与して俺が複製したら、魔法技能を与えられるのではないだろうか。
そう考えた俺は、早速キールさんで試してみた。
まず、付与をしようして魔法技能を与える。
そして、その魔法技能を複製でコピーする。
結果は大成功だ。
見事キールさんのスキルにも俺のスキルにも魔法技能が存在している。
これは、かなり有効な手段となりそうだ。
「キールさん。貴方のスキルを見てください」
それだけ伝えた俺は、魔法の鍛錬に戻った。
前方のキールさんが慌しく騒いでいるが、俺には関係無いことだ。
と、前方に巨大な壁が見えてきた。
これが、王都だそうだ。