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world a king~異世界転生譚~  作者: 抹茶
幼少期編
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女神の心は何処に





俺こと佐藤亮太は、人生最悪に終わった。

これほどまでにつまらない人生だとは、俺ですら思わなかった。

30歳で亡くなった俺の死因は交通事故。


家族もおらず、友達も、知り合いすらいなかった俺に後悔はたった一つしかない。

もし、判断を間違えなければ、俺は幸せになれたのだろうか?

それだけが、俺の最大の難問で、そして求めているものである。



俺の判断で友人が不良に絡まれ、なんとか助かったものの俺は嫌われ者になった。


偶然の産物で仕事には就けず、同期には無職と蔑まれ。


そして、病気で家族が死に。



せめて、最後くらいは幸せになる方法を求めたっていいだろう。



_まあ、その声が届くとは思っていなかったのだが。



「教えましょうか?」


「!?」



突如として聞こえてきた声に、俺は心臓が止まるかと思った。

此処は、何も無い光の空間。

ただ、俺の見上げる先には輪廻が回っていて、死んだということが分かる。


だから、誰もいないはずなのだが。

俺は驚く気持ちを抑えて、後ろに振り返った。


そこには、絶世の美女がいた。


金の髪と瞳、そしてその白い肌は白い服で覆われている。

ギリシャ神話の神様に近いかもしれない。

そんな美少女は、俺に対して微笑みを浮かべていた。


あ、俺は質問をされているんだ。



「それなら、教えてください」



俺は、驚く気持ちを抑えながらそう質問した。



「わかりました。転生してください」



笑みで以って答えた女神。



「・・・・・・・・・・・・・は?」



え、ちょっと待ってこの人。

何言ってんの?

突然の言葉に理解できずに固まる俺に、女神であろう女性は尋ねてきた。



「何を言っているのか、と?」


「!?ま、まあ」



その事に俺が驚くと同時に、女性はさらに言葉を被せてきた。



「簡単です。私の部下が思いっきり貴方の人生を間違えたので、お詫びをしようと」



間違ってた!?

それは、この美女や転生という内容を全て忘れさせるだけの効果があった。

ドス黒い何かが込み上げてくる――



(間違っていた!?・・・・・・・・俺の人生が、お前達の判断で、間違っていた!?あの、辛くて死にそうだった出来事も、苛められていたことも、仕事に就けなかったことも、全て、全て!!!)



「・・・・け・・・・・な」


「なんでしょうか?」



気付けば、俺は小さくそう呟いていた。

不思議そうに、しかし感情も無く首を傾げる女性に、俺は声を荒げて言った。



「ふざけるな!!俺の、俺の人生はお前達のミスだけで地獄にされたのか!?お前達の所為で!!」


「はい。私の部下によるものです。ですから、お詫びに来たのですよ」



淡々と喋る美女の顔からは、表情が抜けている。

まるで、機械のように。

俺は、感情に促されるままに、そして、ある意味で懺悔のように吐き捨てた。



「お詫び!?お前の部下の責任!?ああ確かにそうだろうな!でも!お前の部下の責任なら、お前にも責任があるだろうが!!お前が最初に言うのは、お詫びとか部下の責任とか、そんなんじゃないだろう!!」


「いえ、部下の責任ですので、私の責任ではありません」


「違うだろうが!?お前の部下なんだったら、お前がしっかりと育てないからそうなったんだろう!?お前等の、無駄なプライドが、一人の人間に地獄を与えたんだ!!それを謝りもせずにお詫びをもってきた!?ふざけるのも大概にしろよ!!」



怒りが、最頂点に増した。

それと同時だった。


フッ、と俺の身体が冷たくなった。

ゆっくりと女性を見ると、凍て付いた目線で俺を睨んでいた。

悪寒が走り、逃げ出したくなる。



「無駄なプライド・・・・それは、侮辱ですか?私達のような神という立場に向かって、無駄ですと?」



その言葉は、酷く冷たかった。

表情の抜けていた顔も、怒っているのがよくわかる。

だが、怒りに思考を埋められた俺は、納得出来ない。



(なんだよッ!なんなんだよ!!生まれが違うだけで、地位も違うのか!?こいつが偉いのは、凄いのは!こいつがそれを教われて、そしてそんな空間にいたからだろ!?地上で、地球で、俺と同じ運命を辿れるのか!?)



どうしようもなく、俺が一番変えたかったもの。

それが、自分自身だから。


――だが、急激に頭が冷えていくのを感じた。

俺は、分かってしまったのだ。

一番理解したくなかった事実に。


この美女は、いや、神という存在そのものなのかもしれない。

こいつ等は__



「生きていない・・・・・・・」



そう呟いた俺は、その視線を美女に合わせた。

今も冷たい睨みをしている美女だが、もう怖くない。

いや、違う。怖い感情を押し殺すだけの冷めた感情が充満してきた。


同時に、諦めの感情も。



「確かに、神にとってはそういう常識なのかもしれないな。俺にとって、お前はもう生きていないようなものだ。感情が無いからな。」



ピクリと、女性の肌が震えた。

それは、激怒か。屈辱に耐える姿勢なのか。

俺には、それが分からない。分かりたくもない。


つまり、こいつ等はただの機械。

世界を回すためのただの機械だ。

ならば、この生物達には何を言っても意味が無い。


ただ、淡々と言うことに従えば良いのだ。

俺は、フッ、と表情を緩めた。



「もういいや。じゃ、そのお詫びというのをくれ」


「はい。それでは、行ってらっしゃいませ」



は?え?あ、ちょ待__!!

ゴン!

堅い鈍器で叩かれたような音と衝撃を残して、俺の意識は暗転した。











最後の瞬間、見えたのは幻覚だったのかもしれない。

泣き崩れたように見えた美女のその姿は、先ほどまでのとは違い過ぎた。

もし、それが本当の姿なら――



(そうだ。考えが読めるんだっけ・・・・・・・・・・・)



俺は、もしかしたら馬鹿だったのかもしれない。

確かに、あの淡々とした者が美女なのかもしれない。でも、その中には、もしかしたら――

それなら、さっきみたいに、もう一つ願いを叶えてくれ。



(彼女に、すまない、と伝わってくれ)



もし、それが正解に続く道なら――そうであってほしいと思って。


【称号”神の代行者””女神の慈悲””女神の心”を取得しました】






_________________________________________




目を開くと、見知らぬ天井が見えた。

確か、最初に彼女が言っていたのは転生。

なら、俺はきっと赤ん坊だろう。


その証拠に、俺の意識はすぐに沈んでいった。

耐えることも無く、自然に瞼が落ちていく。



「この子の名前はリュウだ」


「ええ。そして、こっちはリリナ」



_二人とも、幸せに大きく育ってくれよ?


そう、最後に聞こえた。


























さて、物語を進めるための語り部として、仕事をしましょうか。

新しく授かった命。

それを、彼は一体どう使うのか。


そして、最後の瞬間に見えたあの女性の姿は。


それ等全ては、話を進めれば分かるでしょう。

流れるように月日は流れるのですから。

一瞬で、そう、例えば1つの話を超えるだけで何年も経っているかもしれませんね。


私が何者なのかも、何時か分かるでしょう。

それでは、貴方に祝福があらんことを。


またいずれ、私がこの場に戻ってくることもあるでしょう。

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