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桜沢さんのお嬢さま  作者: 松山みきら
第14章 巫女と妖狐 -棘科輝羽-
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 桜沢文音の晴れ舞台は、取り戻した笑顔と大歓声に包まれて幕を下ろした。フェスティバルは例年以上の盛り上がりを見せて大成功、特に盛り上がったフィナーレでは、地域全体に桜沢文音の存在を知らしめた。彼女の歌声が千人以上の人間に認められ、心を響かせた――新たな歌姫の誕生は、語り継がれていく揺るぎない真実の瞬間となった。

 私と紅羽は来賓への挨拶を済ませ、森林ステージの楽屋へ戻ってふみと合流した。もう一度シャワーで汗を流したというふみは、衣装から余所行きの服に着替えてあやめのメイクを受けていた。

「お疲れ様。大成功だったね!」

 隣へ椅子を持ってきて私も腰を下ろす。私自身が歌を披露したわけではないのに、重たいものがやっと抜け落ちたような心地よい気怠さを感じていた。愛する人の笑顔を取り戻し、大勢の人が彼女を認めてくれた。この心地よさは、私の悲願が今日まさに成就した証明。ふみの姉や文芸部の部長、七倉由佳などがいくらふみを否定しようと、これからは舞台を見てくれた大勢の証人たちが応援してくれる。桜沢文音が闇に負けることは、もう二度とない。

「あきちゃんたちには感謝してもしきれません。歌の楽しさを笑顔と一緒に思い出させてくれました。本当にありがとう」

 鏡に映ったふみがまた、優しく微笑む。あまりにも愛しくて、その笑顔をまともに見れなかった。目を逸らして鼻頭をかくと、後ろで見ていた紅羽が穏やかな笑い声を投げかけてきた。

「照れちゃうわね。とても素晴らしいステージを見せてもらって、私たちも感謝しているの。CMやラジオの仕事、入っちゃったりして」

「それ、もしかするぞ、マジで」

 ふみの顔を手早く整えていきながら、執事がニヤリと笑った。

 聞けば、フェスティバル終了後、楽屋へ戻ったふみのところに報道関係者が怒涛の勢いで流れ込んできたのだという。インタビューや写真撮影を求められ、そういったことが初めてなふみはひどく混乱してしまった。あやめはひとまず、流れ込んできた人々を森林ステージの入り口付近まで誘導し、そこで改めてインタビューと撮影を行うことにしたが……。

「外に出てインタビューや撮影を進めてたら、今度は観客たちが大勢集まってきたんだよ。ありゃすごかった、アイドル扱いだぜ」

 CDやグッズはあるかと聞いてくる人もいたそうだ。アイドルとしてデビューさせるために今回の舞台を企画したわけではないから、CDもグッズも、当然販売していない。そもそも、アイドルデビューなんて『笑顔奪還作戦』の中には予定されていない要素で、完全に想定外だった。私の恋人がアイドル扱い――喜ばしいとは思うが、いやはやまったく、どうしたらいいのか。

 紅羽はふみの人気ぶりに大満足なのか、いつになく明るい笑顔を浮かべていた。

「この土地は今まで伝説に守られてきたけれど、伝説以外で土地を盛り上げる花が咲いたわね。輝羽、あなたの計画は想定以上の結果をもたらした。棘科家当主として、姉として、とても誇りに思うわ。……頑張ったわね」

 紅羽がそっと私に歩み寄り、とても優しく、私の黒髪を撫でてくれた。

 私はふみのことになると見境がなくなり、正直、守護者一族としてやっていけるのか不安だった。そんなとき、救おうとした恋人が私を支えたいと、愛を持って寄り添ってくれた。私の意志に賛同し、自らもう一度立ち上がる決意をした流々さんもそう。守るべき人でありながら、協力者として私を支えてくれた。そして、時に私を厳しく叱りながらも、手伝い、導いてくれた姉と執事。二人だって、この大成功を陰でずっと支え続けてくれた。

 私もふみも、一人で戦ったのではない。

 そばには必ず、誰かがいた。

「私一人の力じゃないよ。紅羽もあやめも、流々さんも、神城先輩も……。みんながふみを支えてくれた。私たちの信頼と絆の力で、今回の成功に繋がったんだよ」

 かつて、棘の巫女が妖狐を信じたように。

 巫女の愛を信じた妖狐のように。

 昔も今も、私たちは信頼と絆、そして愛によって結ばれていくのだ。

 姉を見上げて微笑むと、やはり満足そうにうなずいてくれた。

 楽屋が優しい雰囲気に包まれたそのとき、楽屋のドアが控えめに叩かれた。あやめがメイクの手を止めて、顔をしかめる。

「お、おいおい、またインタビューかぁ?」

 ドアへ向かおうとする執事を、近くに立っていた姉が片手で制した。あやめはもちろん、私もふみも、どうしたのだろうと、紅羽の顔を見上げる。まぶしかった姉の笑顔は、執事がするそれによく似た不敵な笑みに変わっていた。

 紅羽め。何か企んでいるなっ。

「私が呼んだお客様かもしれないわ」

 コツコツとヒールを鳴らして、当主の赤い背中が楽屋の入り口へと歩いていく。ドアを半分ほど開いて、二、三、言葉を交わしたら、廊下に待つ客人を笑顔で招き入れた。

 入ってきたのは、浅黒い肌に太い眉の男性と、丸顔で大きな瞳をした女性。

 二人が何者か認識するよりも早く、恋人が椅子から立ち上がって叫んでいた。

「――お父さん、お母さん!」

 現れたのは、桜沢文音の両親だった。

「晴れ舞台の後だもの。ご両親もふみさんと話をしたいはずだと思って、ここに呼んだの。構わないわね、輝羽」

 晴れ舞台のことは、事前にグループの職員から両親へ連絡してあった。桜沢文音の過去を払拭するための一歩であり、やり直すと決めたその意志を証明する晴れ舞台。彼女の両親は、娘の晴れ舞台をないがしろにせず、きちんと見届けてくれたようだ。

 紅羽の問いかけに、笑顔でうなずいた。

「もちろん。何の問題もないよ」

 ふみは保護中だが、定期的な面会は可能だと伝えてある。その定期面会が晴れ舞台の日になったというだけだ。両親の深い反省は以前の話し合いでも十分理解している。これ以上、両親を責める真似はしないつもりだ。

 椅子から立ち上がって二人に頭を下げた。

「お久しぶりです。晴れ舞台、見届けてくれたのですね」

 できるだけ優しい声色と表情を意識して向き合うと、両親も朗らかな笑顔を返してくれた。父親はもう、それはそれは興奮しきっていて、真っ赤な笑顔で言葉を詰まらせていた。

「娘が見違えるように変わっていて、もう、本当に何と言えばいいのか! なぁ、母さん!」

「ええ、感動して泣きっぱなしでした。実家じゃ、全然笑わなかったのに……」

 言われて、苦笑する母親の目元へ視線が動いた。確かに、目の周りが赤くなっていて、瞳もまだ潤んでいるように見える。彼女の言葉を聞けば、単純な感動で涙したというわけではなさそうだ。

 娘の笑顔が蘇った喜びと、実家では笑顔を取り戻せなかった無念。

 嬉しいのに、嘆いてしまう。

 そんな矛盾に、母として苦しんでいるのか。

「……立ち話も何ですから、奥へどうぞ。あやめ、何か用意できる?」

「任せろ。よく冷えたお茶と、温泉街で評判の茶菓子を持ってきたんだ。ほら、親子三人でゆっくり話をするといい」

 あやめが明るく笑って「こっちへ来い」と大きく腕を振った。ふみも両親を促し、来客用のテーブルへ三人で腰かける。私と紅羽は三人の様子を少し離れたところから見守り、両親の言葉、ふみの言葉に黙って耳を傾けた。満面の笑顔で熱く話す父親、その隣で穏やかに微笑み、うなずく母親。そして、二人にきちんと目を合わせて、笑顔で明るい言葉を返す私の恋人。五月、私たちがふみの実家で話し合いをしたときとは正反対の雰囲気だった。あやめも冷たいお茶とお菓子を用意しながら一言会話に加わると、三人がどっと笑って、もっと楽屋を明るくした。

「絆、できたみたいね」

 私の肩を抱き、紅羽がふっと笑った。

 ふみの保護はまだ続く。両親がふみへ抱く想いや、接し方も改善の途中だ。しかし、今この狭い空間を満たす優しい温もりは、湿った土の下から絆の芽を産み出した。ふみが変わろうと前に進み続ける限り、両親が変わろうとする娘を想い続ける限り、絆の芽は葉を伸ばし、必ずや大輪の花を咲かせる。私たち棘の巫女は、その小さな芽を見守っていこう。

 守護者として、ずっと。

 小さな楽屋に、家族三人の温かい笑顔と声が溢れる。

 見守る私もまた、知らず笑顔になっていた。




 ふみたちの会話の中で桜沢安珠の話題が上がっていた。父親が離れて暮らす安珠を呼び、今日のフィナーレに同席させたのだという。

 先日の話し合いを終えた後、彼女は現在の住まいがある都会の街へ戻ったが、結局両親や棘科グループの説得も届かず、ふみを否定し続けたそうだ。このままでは何も変わらないと懸念した父親が、どうにかしようと一つ策を講じた。

『結婚式の前に少し実家に来ないか。棘科神社の例大祭があるから、遊びに行くと縁起がいいかもしれん』

 今月に予定しているという結婚式の前に神社のお祭りへ出かければ、神様のご加護もあって式も新婚生活も上手くいくかもしれない。両親との関係は比較的良好であったため、安珠は父親の優しい提案に何一つ疑いを持たず快諾した。そして本日、婚約者を伴って帰省、両親と四人で温泉街を巡り、森林ステージのフェスティバルに立ち寄る。

 そこで、彼女はフィナーレを目撃した。

 自らが虐げて泣かせてきた妹が、煌びやかなドレスをまとって舞台に現れ、歌を歌い始めたではないか。ふみが奏でた全力の歌は、初参加にも関わらず千人以上の観客を盛り上げた。否定し続けてきた妹が見せた奇跡の光景を前に、安珠は何も言えなくなってしまったという。

 桜沢安珠は確かに、姉としてふみよりも優れている部分がある。単純な腕っぷしも強く、度胸もあり、世渡り上手。自分に有利な人間関係を築く力も持っている。だからこそ安珠はふみを否定していた。妹は私よりも劣っている、何一つ努力せず、苦しまず、甘えているだけだと。

 それが、あの歌で覆された。

 安珠は高校時代に軽音楽部に所属し、上京後もバンドをしていた。婚約を機に脱退したが、音楽に関しては不動の自信を持っている。しかしこの日、否定していた妹が安珠の持たない『歌』という才能を見せつけてきた。今は陰に消えてしまったとはいえ、過去に歌姫と呼ばれた姫川流々と交流を深め、彼女の曲に詞までつけて歌い切った。音楽を知っているからこそ分かる、ステージに立った人間の本気。桜沢文音の歌声から伝わる努力の欠片。妹は、今日の晴れ舞台のために音楽を聴き、歌い、磨いてきたのだ。

 昔、自身が虐げた弱気な妹の姿は、もうどこにもない。

 ステージに立つ少女は、這い上がるために努力をし続けた若き歌姫。

 歌い終え、笑顔を取り戻した妹を見て、安珠は無言で立ち去ったという――。




 ふみと両親の温かい面会を見届けた後、私は一人、片づけが始まっているステージへやってきた。邪魔にならないよう観客席の中央最後列に座って、会場の掃除や装飾の撤去に汗を流すスタッフたちをぼんやりと眺める。広い席に観客は私だけ、遠くの祭囃子やスタッフたちの声も銀幕の世界みたいにぼやけて聞こえた。傾いた太陽は木々に隠れて、棘の森を夕方、夕方から夜へ、少しずつ導いていく。夜が近づく気配を感じながら、私はこの春の思い出をそっと振り返っていた。

 四月から六月。図書館で彼女を見つけて救おうと決めてから、たくさんの言葉と想いを交わし、互いに傷つけ、傷つき合った。やがて、冷酷だった先輩は私に心を開き、私はそんな彼女に恋をする。そしてついに、この晴れ舞台に至り、大喝采の中で彼女の笑顔を取り戻した。短くも長い、二か月で作った思い出の数々。すべてが胸を締めつけるほどに愛しく、輝かしい日々に思えた。

 白い袖から覗く、私の細い右手。

 棘科家当主、棘科紅羽の妹。肩書や家柄は立派かもしれないが、私はまだ十代の子供で、姉のような苦労や経験をしていない青二才だ。それでも、そんな私でも、誰かを救えた。終わりかけた誰かの人生を未来に繋いだのだ。

 右手を持ち上げて、ぐっ、と握りしめる。

 守護者の一族としてやっていけるかどうか不安だったが、今は違う。ふみが私を信じ、その笑顔を取り戻した事実が、棘の巫女として生きる自信になっていく。彼女のおかげで前を向いていける気がしていた。

「……私も、君の歌に救われたみたいだ」

 握りしめた右手に、自分の温もりと鼓動を感じる。

 決してぼやけずここにある。確かな自信と共に。

 絶対に失わない。失うものか。

「あきちゃん!」

 遠くから呼びかけられて、顔を上げた。

 観客席左手の方から、ふみが穏やかに駆け寄ってくる。慌てて席から立ち上がり、駆け寄ってくる恋人の柔らかな微笑みを見上げた。彼女が取り戻した笑顔はとても気持ちよく、美しい。愛しすぎて照れくさくもあるが、いつまでも見ていたい魔力もあった。

「両親を見送ってきました。二人とも本当に喜んでくれて、嬉しいです」

 胸を両手で押さえてにっこり。両親を大切に想う気持ちが伝わるようだった。恋人の笑顔につられて、私も自然と笑顔になっていた。

「よかった。楽しそうに話もできていたみたいだし、ご両親との関係はいい感じになってきたね」

「はい。姉さんとも、いつか分かり合えたら……」

 せっかく取り戻した笑顔が消えて、悲しく顔を伏せる。

 ふみには姉の安珠や七倉由佳など、改善すべき関係がまだ残っている。しかし、私は大丈夫だと、不思議な確信を覚えていた。

 桜沢文音は、その歌で千人以上の観客を熱狂させ、多くの人々を否定してきた安珠をも沈黙させた。ふみの歌声、歌う姿勢には、人の心を揺さぶる力がある。彼女がこれからも歌を磨き、誰かの光でありたいと歌い続ければ、安珠も七倉も、ふみに対する想いを改めるはずだ。

「大丈夫、分かってもらえるよ。ふみには『歌』があるんだから」

「歌……。私が歌い続ければ、想いは伝わるでしょうか」

「もちろん! 絶対に伝わるよ」

 確信をそのまま言葉にしてうなずく。

 伏せていた顔を上げて、若き歌姫がまた柔らかく、優しく微笑んだ。

「……あきちゃんは、いつもそうですね。あきらめないで、たくさんの奇跡を起こしてくれました」

 微笑んだまま、ゆっくり観客席に座る。私も席に座って身体を寄せた。森から吹く涼しい風がふみをかすめて、私に石鹸の匂いを運んでくれた。

「絶対に変われないと思っていたのに、心を開かれて、恋をして、あれだけの人々を前に歌い上げる勇気をくれた。あなたの言う通り、このまま歌い続ければ、確かに想いが伝わりそうな気がしてきます」

「歌い続けてみたい?」

 微笑む横顔を見上げる。

 私の問いかけから少しの間を置いて、大好きな先輩が深くうなずいた。

「歌い続けたいです。これからも機会があれば、たくさんたくさん、歌いたい。いろんなステージで、もっと大勢の人たちに光を注ぎたい。歌いながら、生きていきたいです」

 私を見下ろして、微笑んだまま首を傾げる。

 さらりと髪が揺れて、また石鹸の匂いが舞った。

 ふみは笑顔と共に、歌に対する楽しみや喜びも取り戻していた。絶望に満ちた終焉を捨て去り、大好きな歌を続けたいと、言葉にしてくれた。ふみの中に残っていた最後の武器、歌の力が、彼女の生きる希望として今まさに輝いているのだ。嬉しくて、私の表情もどんどん明るい笑顔に崩れていく。

「前向きになったね。よし、流々さんとも相談して今後を決めていこっか」

「ありがとうございます。……実は、もう一つお願いがあるのですが聞いていただけますか?」

「もちろんだよ。話してみて」

 笑顔でうなずいたら、私の手がふみの両手に捕まえられた。身体を私に向けて、じいっと私の目を見つめてくる。何度見ても、そのきれいな顔立ちに惹かれてしまう。私の中に熱を宿らせる唇や頬の感触、髪から香る匂い。すべてが愛しくて、胸が締めつけられ、鼓動が高鳴る。もう、このまま館に帰って、一晩中ずっとふみに甘えていたいくらいだった。

「あきちゃん。私はこれからもずっと、一生あなたのそばにいたい。あなたに、私の一生を、何もかもを捧げたい。あなたの『妖狐』として、すべてを……」

 痛みを感じるほど心臓が飛び上がった。

 改めて口にした、私へ向けられた愛の言葉だった。

 私を『棘の巫女』として、自らは巫女に寄り添い続けた『妖狐』でいたいと言ってくれた。以前、聖地で互いに告白し合ったときよりもずっと、愛しさと輝きに溢れていた。

「お嬢様。桜沢文音は、心からあなたを愛しています」

 頬を赤く染めて、柔らかく微笑んで。

 心を込めた、一生の愛を決意した告白だった。

「……嬉しい。すごく嬉しいよ、ふみ」

 笑顔を浮かべているのに、視界が涙に溺れていく。

 お嬢様だから望むものは何でも手に入ると思われていただろう。しかし、家柄や肩書で手に入らないものだって、この世にはある。

 それは真実の愛。

 本当に望む人。心から愛を捧げたい人と結ばれること。

 私は、真実の愛を手にしたのだと思った。

 心から愛する人に、心から愛していると告げられたのだから。

「私も……。私も、桜沢文音を愛してる。世界で一番、誰よりも君が好き。私の妖狐として、ずうっと離さないからね」

 頬は赤いまま。私の返事に、ふみは笑顔でうなずいてくれた。

 君と出会ってから、その手を強引に取って引っ張ってきた。それがやがて、私たちは互いに恋い焦がれ、気がつけば手を引っ張るのではなく、取り合って、支え合って同じ道を歩き出していた。二人とも欠点だらけで、経験も浅くて、悩んで泣いて、たくさん迷子になったのに、大好きな気持ちだけは絶対に見失わなかったよね。愛情を灯火にして、暗い森を二人で抜けて、今日ようやく、君を日差しの下に連れ出せたんだ。

 君と繋いだ手は離さない。

 君を愛し、守る誓いを新たにして、愛情と共に繋ぎ続ける。

 これからも一緒に、ずっと、ずっと生きていこうね。

 浮かんだ涙を拭ったら、短い口づけをして、二人で笑い合った。

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