隠された真実
「とりあえず、まだ地元にいるその同級生の人たちに話を聞いてみるのが事件解決の近道だろうな」
「だから、その前に練習だろ」
夏休みも約半分過ぎた頃。
部活などで忙しく、なかなか時間が取れず、結局共通点を見出だしたあの日から数日ほど経ってから俺たちはその亡くなった男子生徒の同級生だった人に会うことができた。
「あー、すいませんこっちです」
ファミレスでの待ち合わせになり、こちらが全額おごりという形で今日のインタビュー(?)に取り繕うことに成功した。
「お忙しい中、わざわざありがとうございます」
「いえ……」
応えてくれるのが女子大生であり、こちらは興奮しそうで・・・というのはさておいて質問しよう。
「早速なんですけど、僕たちは五年前の事故について少し調べておりまして、その事故に関して覚えていますか?」
「は、はい」
「あっ、すいません。ドリンクは自由ですから」
少し緊張が走っているので、緩和するためにあえてどうでもいい話題で場を濁す。
「それで亡くなった男子生徒はどういう人だったんでしょうか?」
「はい、亡くなった田中君は普通の人でした」
普通の人か、あの先輩は酷い奴と言ったが、女子からはそこまで悪い評価を受けてはなかったのか?
「田中さんが転落した状況を覚えてる範囲で教えてもらえますか?」
「唐突だったので、あまり詳しくは分かりませんが突然、大きな声が聞こえて、みるみるそこに人が集まってきて、見ると転落した田中さんがいました」
「その田中さんが転落した時、クラスの雰囲気などはどうでしたか?」
「クラスの雰囲気ですか? 驚いている人がたくさんいました」
それだけなのかと俺は思ってしまう。普通同じクラスの人が窓から転落したとなったら驚くとかそういうレベルではないと思う。
「他に何か田中さんに関しての情報はありますか」
「あの、実はいじめられてたんです」
「それはかなり重要なことですが、いじめられてたというのはどういう話なんですか?」
「暴力を受けたり、物を壊されたりとか色々です」
これはかなり重要なことなのかもしれない。いじめられていた田中さんが、その加害者の度が過ぎたいじめによって殺されたんだ。
しかし、学校側はいじめを認識していない。
つまり、五年前の事故は殺人事件だった。
それなら、誰が階段事故の犯人なんだ?
「あの、もういいですか?」
「あっ、はい、お話聞かせてもらってありがとうございました」
見送りに行き、先輩とは別れる。
「とりあえず、これで色々分かったな。岳」
「あぁ」
「それじゃあ、帰るか」