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あれからかなりの頻度で祐司が家に遊びに来るようになった。それにつれて、女性関係が激しいという噂も下火になっていった。そうだよな、暇があれば俺がいなくても、うちで真也や奏と遊んでるもんな。


俺の見る予知夢も少し変わった。祐司が少しヒロインたちと距離を置き始めたのだ。俺のやってることもまんざら間違ってないんじゃないか?真也はまだ相変わらずヒロインにベッタリだが、真也に関しては何も直すところなんてないもんな。俺が死なないように頑張るだけだ。


遊ぶと言っても、二人の勉強を見てやったり、ただ静かに本を読んだりする時間も多い。もともと二人とも大人しいしな。今日も本を読んでいたんだが、いきなり奏が祐司に質問をした。


「祐司君はお医者様になるの?」


ああ!!奏!!それは今ものすごくデリケートな話題なんだ。今の祐司はそんな軽く聞かれて軽く答えられるような心境じゃないんだよ。


「何で?」


うわ。祐司の機嫌がぐっと悪くなった。どんなフォローをすればいいんだ。俺が迷っていると、奏は気にせず続けた。


「祐司くんは医学部にいるから、将来お医者様になるって聞いたの。」

「奏も医者になりたいの?」

「ううん、なりたくない。ただ、包帯の巻き方を教えてほしいの。」


うん?どういうことだ?


「そんなの知ってどうするんだ?」


祐司も意外な質問だったからか、さっきよりも少し柔らかい感じになった。


「私の友達に、ちょっとドジな子がいて、よく転んだりするの。今はばんそうこうを貼ってあげてるんだけど、もっと怪我が大きかったら包帯を巻いた方がいいでしょ?みちるは落ち着きがないから、すぐ包帯も取れちゃうだろうし。祐司君が知ってるなら教えてもらいたいなと思ったの。」

「奏、そんなに心配な友達がいるなら、奏が医者になればいいじゃないか。怪我だって病気だって治療できるぞ?」

「だって、光也君、お医者様になってもみちるだけ診るわけにはいかないでしょ?別に他の人はいいの。みちるの面倒を見るだけだから。」


うーん。奏はちょっと排他的なところがあるんだよな。そこそこ友達もいるし、聞き分けもいいんだが、ここまでは仲良くする人って言う明確な線引きがあるみたいで・・・とか考えてたら、ものすごく上機嫌な祐司がいた。何があった!?


「そっか、じゃ教えてやるよ、包帯の巻き方。」

「ありがとう、祐司君。」



その日からだ。祐司の中で何があったかは全くわからないのだが、俺の予知夢の中で祐司はヒロインたちとは一緒にいなくなった。でも、相変わらず白衣を着て、ヒロインと同じ制服の女の子の隣にいる。なんか、奏っぽいよなあ。きっとあの学園の保健室の先生あたりになったんだろう、病院に勤めているようには見えない。祐司が奏っぽい女の子の腰のあたりに手を回して、そのたびその女の子に手を叩かれてるのは、気付かなかったことにしたい。



・・・・・・


「・・・俺も、一応祐司に言ってみたんだ。奏は小学生だぞ?とか、未成年者に手を出したら犯罪なんだぞとか。」

「う、うん。」

「でも、『知ってる。だから慎重に進めていってるんだろ』って返ってきたんだ。」

「う、うん。」

「この間、おじさんとおばさんが祐司のことをべた褒めしてたんだ。俺はおじさんとおばさんに祐司を紹介した覚えはないんだよ。あいつ、いつ二人に会ったんだ?」

「光也くん。」

「俺、祐司をヒロインから遠ざけるために頑張ったつもりだったんだけど、奏の将来が!」

「だ、大丈夫よ、光也くん。奏ちゃん嫌がってないわよ?結婚まではまだ考えてないけど、一緒にいるのは好きみたいだから。」

「結婚!?そんな話まで出てるの!?小学生だよ、奏!!!」

「だ、大丈夫よ、光也くん。・・・きっと大橋くんは奏ちゃんを幸せにしてくれるわ。」

「澪ちゃん、奏は祐司から逃げられないってこと!?」


と、澪ちゃんに愚痴ってはみたものの、祐司は俺が見た中で今が一番生き生きしているのは、まあ、いいことだと思うんだ。でも、医学部に入った意味を見つけ出したって言った、その内容を聞いて俺らは祐司の奏に対する執着心にドン引きした。祐司は人の話を聞かない奴だ。自分がこうと決めたら貫き通す。その祐司が奏を大事にしているのは俺から見てもよくわかる。祐司はいい奴だし、奏のことも大切にしてくれるだろう、だから安心して・・・・ごめん、奏。



さて、親友は何とかなった。細かいことは置いといて、ヒロインの呪縛からは逃れられたのだ。あとは可愛い弟のために死なないようにダイエットに励んでいた数日後。


「お兄ちゃん、僕、お嫁さん見つけた!」


いつもの天使の笑顔に、そうかそうかと頷きそうになって、ん?


「お嫁さん?」

「うん。みちるちゃん。」


あれ?その名前どっかで聞いたぞ。


「奏の友達だっけ?仲良くなったのか?」

「ううん、みちるちゃんは初対面の人には緊張しちゃうんだって。だから、全然話せなかったよ。」


話せなかったのに、何でそんな嬉しそうなんだ?しかも、何で嫁?ま、まさかこれって。


「これからだんだん慣れてもらって、少しづつ近づいていくんだ。みちるちゃん仲のいい男の子がいないから、このまま僕以外の男の子を近寄らせないようにしなくちゃね。それにはどうすればいいかなあ。祐司お兄ちゃんに相談にのってもらおう。」


祐司だ!!祐司の悪影響だ!!!俺の、俺の天使が腹黒いこと言ってるぅうう!!!


「お兄ちゃん、みちるちゃんすごく可愛いんだよ。奏ちゃんがすっごく大切にしてて、やっと今日会わせてもらえたんだ。」


ああ、真也と奏は好きなものが被るからなあ。奏がみちるちゃんて子が大好きなら真也もそうなるか。


「お兄ちゃんは特別にみちるちゃんに近寄ってもいいけど、みちるちゃんをお嫁さんにしちゃダメだからね。」


言ってる内容はともかく、うちの真也はやっぱり可愛いなあ。お兄ちゃんが特別だって。


「お兄ちゃんは澪ちゃんていう素敵な彼女がいるから、みちるちゃんをお嫁さんにはしないよ。」

「そうだね。お兄ちゃんにはもう澪お姉ちゃんていうお嫁さんがいるんだった。」

「お、お嫁さん・・・・ま、まだそういうのは、早いかなって・・・お嫁さん・・・。」


澪ちゃんがウェディングドレスを着て俺の横に・・・そ、そんな幸せなことがあっていいのだろうか。


「お兄ちゃん?」

「あ、うん。そ、そうだ、真也。お菓子を買ってあげようか。みちるちゃんと一緒に食べるといいよ。買いに行こう。」

「いいの?わーい。お兄ちゃん大好き。」


ああ、ほんとにうちの真也はかわいいなあ。


その日から俺の予知夢で真也はヒロインの傍から離れ、別の可愛らしい小動物的な女の子といるようになった。あれ?俺、死なないようにダイエットしてるんだけど、もういらない?俺の死が回避したのか、運命の相手を見つけたからヒロインに攻略されないのか、その点が判断がつかない。


その点は予知夢を見てもわからないんだよな、自分のことだから。トラウマをヒロインに話してた場面に予知夢の焦点を当てればと思ったんだが、もうこの二人、全くヒロインを相手にしてないからな。ほぼ会話なしだ。


うーん。もうちょっと続けておくか、ダイエット。澪ちゃんも応援してくれるし、標準体重ってやつまであと少し。俺は『ぽっちゃり』の形容詞の取れた普通の大学生になるぞ。


光也は罪悪感を覚えながら、目標を達するためには犠牲も必要なんだと学びました。

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