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たくさんの方に見ていただき、嬉しいです、頑張ります。
ある日、夢を見た。一人の美少女に6人の男共が群がり、食事を食べさせたり、美少女の髪を整えたり、跪いている者までいる。何だ、これは。この美少女は女王か何かか。それにしたって、作り物の話の中でしかこんな光景見たことないぞ。
衝撃的だったのは、周りにいる奴らの2人に見覚えがあったことだ。白衣を着た今より若干年齢を重ねたような親友と、俺の母校の制服を着た母に似た少年、恐らく弟だろう。まるでその美少女しか見えていないような感じで、呼びかけてみるも全く反応を示さない。
嫌な汗が出てくる、この状態を何とかしなければ、あの二人をここから救い出さなければ!
俺は目黒光也。普通の、ちょっとぽっちゃりな大学生だ。しかし、そんな俺にも特技がある。予知夢を見ることができるのだ。今朝見た夢は最悪だった。しかもただの夢じゃなくて予知夢だ。何だ、あれ。近い将来この国は一妻多夫制にでもなるのか?ありえないよな。ってことは、一人が夫であとは愛人か?いくら美少女とはいえ、そんな女に可愛い弟と親友をやれないぞ!
しかし、情報が少なすぎる。あの未来を回避するには俺は何をすればいいのだろうか。俺一人では思い浮かぶものがない。俺の彼女に相談してみて、何ができるか一緒に考えてもらおう。
・・・・・
彼女ができたのも、ある意味予知夢のおかげだ。俺は自分の通ってる大学でよく見かける女の子が気になっていた。そのためか、彼女に関する予知夢を見た。
その日、電車に揺られ俺はうとうとしていた。急に大きな声がして、起きたのだ。
「この人痴漢です!!」
「は?何を言ってるんだ、俺はそんなことはしてない。」
「しらばっくれる気?確かに見たわ。」
「俺が誰を痴漢してたって言うんだ。」
「その人よ!」
「あんた、俺に痴漢されたか?」
「い、いいえ。・・・痴漢なんてされて、ません。」
「そんな!!」
「ひどい言いがかりだ。俺を犯罪者に仕立ててどうするつもりだ。」
「わ、私はちゃんと見たの・・」
しまった!今日だったのか!事前に防ごうと思ってたのに寝ちまった。俺は慌ててその揉めてる人たちの中に割り込む。
「痴漢してたかどうかはおいといて、盗撮は犯罪だと思いますよ?」
男の足元にあったカバンを勝手に開ける。男が慌てて防ごうとするが遅い。中からビデオカメラを出す。
「警察に行きましょうか。」
その後、警察に行き、痴漢されてた人も恥ずかしくて言えなかったと証言してくれた。何でカメラの存在に気付いたかと聞かれたので、レンズが光に反射して・・・とか適当なことを言って、痴漢を告発した彼女と一緒に警察を出る。
「あの、ありがとうございました。私は掛川澪と言います。」
「俺は目黒光也。掛川さんは勇気があるよな。もっと早く助けられれば良かったんだけど。周りの人が掛川さんを見る疑いの目、怖かったろ?」
そう、俺の予知夢では彼女、掛川さんが痴漢を吊し上げた後、反撃されたときに周囲の目がすごいという称賛から冤罪で被害者を作ったと掛川さんを責める目に変わり、掛川さんは顔を俯かせ悔しさをにじませながら次の停車駅で降りていくのだった。そのあと勝ち誇った痴漢は電車を降りた後、鞄の中からビデオカメラを取り出し、ニヤニヤと笑う、そういう夢だった。
だから、俺は夢で見たこの時間のこの電車に乗るようにして、彼女が悲しい、怖い思いをする前に自分が痴漢を捕まえようと思ってたんだ。なのに、寝てしまうなんて。
「いいえ、そんなことないです。すぐ目黒さんが助けてくれたので。・・・あの、カメラのレンズがっていう話は嘘ですよね?」
あれ?ばれちゃってるよ。
「何でそう思ったの?」
「目黒さんはその直前まで寝てましたよね?」
うわ。見られてたのか。誤魔化す言葉も出てこなかったので正直に予知夢で見たと話をした。てっきり冗談だと思われると思ったが、彼女は信じてくれた。
「私も、ほんの少しですが、前世の記憶があるんですよ。世の中は結構不思議なことに満ちてると思うんです。だから、目黒さんの話は信じます。助かりました。ありがとうございました。」
この出来事がきっかけで俺に澪ちゃんという素敵な彼女ができたのだ。
・・・・・
「澪ちゃん、俺、予知夢見た。なんか弟の真也と、親友の大橋祐司が一人の女の子に夢中になっててさ、女の子もその状態が当然て感じで君臨してんだよ。他にも侍らせてる男が何人かいるんだけど、そんな状態普通じゃないだろ?俺はその未来を変えたいんだけど、どう思う?」
「光也くん、私その名前に聞き覚えが・・・」
「澪ちゃん?」
「間違ってたら、ごめん。確か、前世で私の妹がやってた乙女ゲームに出てきた攻略対象と同じ名前よ。」
「乙女ゲーム?」
「もしかしたら、その女の子はヒロインで、光也くんが見た夢は逆ハーレムが完成する未来じゃないかしら?」
「逆ハーレム?」
なんかよくわからない単語が出てきたぞ。澪ちゃんに詳しく説明してもらう。ふんふん、なるほど。つまりこの俺たちの暮らしている世界に似たゲームがあって、ヒロインが攻略対象と呼ばれる美形と仲良くなって、恋愛をするんだが、その対象者全員と同じくらい仲良くなると逆ハーレムという、一人の女性に男性が群がるという現象が起きるということか。
「みんな平等に好きだって聞こえはいいけど、酷いよな。」
「うん、その中の一人になったら悲しいわよね。」
「祐司は大勢の中の一人で満足するやつじゃないんだが。」
「あと、その人たちが彼女しか目に入ってないみたいだったって言ったわよね?」
「そうなんだよ。祐司はともかく、真也が周りの声を聞かないなんて考えられない。」
「もしこの世界が乙女ゲームの世界に準ずるものなら、ゲーム強制力って言うか、ゲーム補正って言う見えない力が働くことも考えられるの。下手をすると人の人格も変わってしまうのよ。」
「人格も!?何でそんなことされなきゃなんないんだ。俺たちは普通の人間だぞ。駒のように勝手に動かされるなんて冗談じゃない。」
俺の見た未来を阻止するために、どうすればいいのか。澪ちゃんが言うには、ヒロインは攻略対象のトラウマを癒すことで好意を得るようだ。ならば、そのトラウマを無くしてしまえばいい。
「ごめんなさい。私、そのゲームの内容はほとんど知らなくて。」
「ああ、大丈夫だよ。澪ちゃんがその話をしてくれたから、突破口が見つかったんだ。真也と祐司のトラウマのあたりを見られるように調整してみる。」
予知夢にも慣れたもんだ。見たいと思ったところを詳しく見ることができる。ただし、自分の未来は見られない。見られるなら真っ先に澪ちゃんとの未来を見たいんだけどな。
・・・・・
翌日、澪ちゃんが俺の顔色が悪いのを心配してくれた。二人のトラウマは俺が原因だったのだ。
真也の場合は、兄が亡くなり、母が真也を兄として見るようになった。兄の代わりをしてきたが、いつまでつづければいいのか、真也はいらないのか。そう言った不安や苛立ちをヒロインに話していた。
祐司の場合は、医者になることへの抵抗、家族との軋轢、そして、親友を救えなかった後悔をヒロインに泣きながらぶちまけていた。
俺、死んじゃうの?しかも弟と親友に傷を残すなんて、絶対に嫌だ。俺の予知夢は自分のことは見えない。だから、何が原因で死ぬのかわからない。医者の卵の祐司が後悔していたということはやっぱり病気がらみか。
「祐司、俺が死んじゃうとしたら何が考えられる?」
「メタボ、もしくは糖尿。」
俺のいきなりの質問にもかかわらず、答えてくれるのはいいが、即答かよ!
「俺はぽっちゃりで」
「日本語の曖昧さに救われてるようじゃおしまいだと思わないか。」
ぐうの音も出ない。今まで特に必要だとも思ってなかったが、仕方ない、ダイエットをして痩せよう。少しでもあの未来を変える可能性があるなら、大嫌いな運動だって頑張ってやる。
ダイエットがフラグを折るのか!?次回をお楽しみに。
お読みいただきありがとうございました。