プロローグ
『逆日本』 そこは、死んだ者と魔人、魔女たちが集う世界。
高橋哲平。別名:御堂隆樹。彼は、魔人科学者、御堂ツバサにすべてを託され、仲間を見つけて、この逆の世界にも身を置いている。けど、もう一人の「哲平」を捨てたわけではない。彼は、二つの仮面を使い分け、この地上で生きていく。
歪羅刹。哲平の同級生の魔女。逆東京都の桑田の作った「護柱」の一人。哲平に煉獄眼を与えた御堂ツバサの恋人。歪蘭玉の妹。現在では珍しい魔女の一族の生き残りである。
桑田宗助。逆東京の管理者にして、護柱を作った人物。だらしなくて、散らかし癖があるが、頼れるお父さんキャラ。いつもニコニコしているけど、怒らせると、羅刹でも手が出せないほど。
彼等の物語は、今始まった。
今日も、学校が終わってから桑田の家に集合することになっている。昼間はバイト、夜は学校で深夜には桑田の家。いくらなんでも、ハード過ぎる。俺の…いや、今は僕か。僕の体が持たない……
そして、深夜零時。いつも通り、適当な電車に乗った。制服のままで。そして、駅名が僕の目を通り過ぎる。
『逆東京駅』
扉が開き、何人もの魔人、魔女が出てきた。哲平も『隆樹』に性格を変えた。そして、駅から10分で、桑田の家に着き、ドアを開ける
「おっス。らせ――「馬鹿者がァ!!!」おぶっ!!」
羅刹の投げた分厚い辞書が、隆樹の顔面に直撃。何故なら、受けるはずだった桑田が避けたからである。
「「あ…」」
「テメーら・・・っ!」
隆樹は怒りパワーによって、辞書を握りつぶした。これには、さすがの羅刹も硬直。ワナワナと拳を震わせる隆樹だったが、さっきので顔を腫らせ、倒れてしまった。
隆樹の額に湿布を叩くように貼る羅刹の機嫌は最悪。
「ありがとう、羅刹」
「別に。アンタのためじゃないし。で、問題は桑田よ」
「アハハ。先ほど説明した通りです」
「コイツ、これからやる筈だった実験用の用具と魔薬をぜーんぶダメにしちゃったのよ!?信じられない!!」
ナルホド。これなら、羅刹じゃなくてもブチ切れるはずだ。で、羅刹の話では、その魔薬が売っている店の店長が、こんなこともあろうと予測して、全部予備に用意していたそうだ。羅刹は、桑田と部屋の掃除をするため、俺一人で行くことに。
『魔薬専門店 蘭瑛』の看板の怪しい店。悪臭漂う店内に進むと、奥の机には、銀髪の煙管を咥えた若い青年がいた。第一印象、銀色の狐…?
「やぁ、いらっしゃい。キミ、桑田のとこの新入りさんやろ?ボクも話聞いとりますわ。ボクは、バイト人の内海妖いいますわァ。以後、よろしゅう。実は、店主が風邪引いといてな、店番やってんのや」
「は、はぁ…」
簡単に握手を交わすと、妖が奥から大量の薬品と器具を持ってきた。
「台車か…、しかも二台。キツイな…」
「なんなら、お手伝いしましょか?」
「え?いいんですか??」
「ええよ。店番も飽きたしなァ」
妖は扉に閉店と板をかけると、二台を引き始めた。
そして、休み休み桑田の家に着いた。
「羅刹!持ってきたよー!」
「はいはーい―――」
「久し振りやなァ、羅刹ちゃん♪」
「なっ!?狐目!!」
羅刹は、殺気を放った。隆樹はどうしたらいいかと、オドオドしていた。すると、そこへ桑田が入り込んできた。
「はいはーい。ここで喧嘩しない。やぁ、久し振りだね。妖クン」
「いやァ。結構な嫌われようやな…。お久しゅう御座いますわ、桑田さん」
「えっと…、どういうこと?」
「あぁ。彼は、護柱の一人、内海妖クンなんだよ。知ってる人は少ないけどね」
「え……?えぇぇぇぇ!!!!????」
ま、マジっすか!?
*予告
俺の新た生活の中、現れた同じ護柱の内海妖。いつも通りと思っていた中、何かが起きようとしていた。
次回『不穏な動き』