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東京HEAVEN  作者: いとむぎあむ
Zの章
4/39

託されたものは

 僕は昔っから、左目を触られるのを嫌がっていた。その光景を見るたびに、兄貴は眉間にシワを寄せ、申し訳なさそうにしていた。僕はそれが不思議でならなかった。



 逆東京で出会った歪羅刹と桑田波子。そこへ迷い込んだ少年・高橋哲平は、実は煉獄眼ディスホールドの持ち主だった。そして、哲平の兄・高橋翼は、魔人の一人だった。


「話そう。すべての元凶を」

「元凶?どういうことなの、ツバサ」

「羅刹、そんなに焦るな。まずは、俺が何故現世に足を運んだのかだ」



 *** 回想 ***



「魔人、ツバサをリストから抹消する」

「大魔人様方!何故ですか!?」

「うむ…。あやつは、我が逆東京に災いを齎す者。魔人の名を汚すものをいつまでも、リストに残しておく理由もいらん」

「しかし…」

「桑田君。君は、ただの“管理者”だろう。此方・・の揉め事に口を挿むな。ツバサは、我等が許可するまで、地上に追放する」

「っ…」



「悪かった。なんとか食い止めようとしたんだが…。まるで聞き耳持たなくてな。歪クンには僕から言っておこう」

「あぁ。頼むよ、桑田」

「…いいのか?」

「まぁな。羅刹は怒るだろうな。あまり詳しくは教えるな。アイツ、きっと評議会に文句つけにいっちまうからな」

「ツバサクン。…!それは!?」

「あぁ。俺の最後の研究の成果だ。……煉獄眼ディスホールド。完成とまではいかなかったけどな。これは、地上に行った時、誰かに譲るつもりだ」

「人間に!?」

「まぁ。命の保障は出来かねまいが。ちょっと、面白い家族を見つけてね」

「面白い家族?」

「ま。いずれ分かるさ」

 そう言って、御堂みどうツバサ、第三レベルの魔人は地上へと去っていった。試作品の煉獄眼ディスホールドを持って。



 *** ***


「そんなことが…」

「ツバサクンは、レベル3の中では、得に力の強い魔人だったからね。結構好き勝手にしていたらしい。そのせいで、評議会から追放命令が出されたんだ」

「レベル3?」

「そうだ。魔人にもレベルがあってな。最低レベルが5.最高レベルが1.ツバサクンはその中間ってことになるね」

「兄さんが…、僕にあの目を…」

「分からないわね」

 羅刹がツバサに疑問をぶつけた。いつも以上に不機嫌だった。ツバサはやれやれと言いたげな顔で、溜め息一つ。

「何がだい?」

「なんで、ただの何も知らない人間に、そんなものを託したの?自分に移植すればいいのに」

「そうだな。けど、俺じゃダメなんだ」

「?」

「俺は……、もうすぐ消える」


「「え!?」」


 ツバサの突然の知らせに、羅刹と哲平は、驚きを隠せない。桑田は、その事に苦痛の表情を浮かべた。

「俺の体は、長い間地上にいたせいで、色素が薄くなって、内部はガタガタだ。明日にでも崩れそうだ」

 ツバサは透けていく右手を見つめ、必死に微笑んでみせた。羅刹は握った拳を震わせ、白い頬には、涙が伝った。

「嘘だ!アンタは、母親を超える魔人になるって!言ったじゃないの!!こんなとこで消えてどうすんの!?」

「羅刹……―――ッ」

 ツバサは背後にあった電柱に凭れ掛かり、サラサラと体が所々に砂になっていくのを見ながら、優しく微笑む。

「…優しいね。羅刹は変わらない。いつも頼りない俺を庇ってくれる。そこは…蘭姉さんに似てるね」

「うるさい!最後の最後まで姉さんと一緒にするな!!」

「悪かった。もういいよ。こんな俺のために泣かなくて……。哲平。君に魔人の資格を与える。高橋哲平を捨て、こっちでは『御堂隆樹みどうたかき』と名乗れ。お前は半分人間だ。人間界で過ごしても問題ない。君は、人間の行く末と逆東京の行く末を担う新しい魔人だ。……元気でな。楽しかったよ。……――――」

 砂になった手が崩れて地に虚しく落ちる。除々に砂になっていくツバサを見つめる哲平は、無になった(・・・・・)ツバサに、そっと口を開く。

 それは、ほんの刹那だった。


「ツバサ…?」

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