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東京HEAVEN  作者: いとむぎあむ
Wの章
32/39

失った魔眼

 大切だった。


 僕にとっても、きっと母さんにとっても。


 父さんを亡くして、母の心の拠り所は、


 俺と兄貴だけだったと思う。


 俺にとっても、兄貴は大事な、兄弟だった。



 *** ***


 煉獄王が、魔王一族の外れ者だと。

 煉獄王の呪いで魔王一族からは必ず煉獄王候補が生まれてしまう。


 一度にその全ての咀嚼しきれずに混乱している隆樹は放心状態で妖たちに引っ張られてながら、追っ手から逃げていた。

 いずれ、海岸に出てしまい、桑田は辺りを見回し、船があるのに気付く。

「妖クン!海に逃げる!時間稼ぎを頼む!!」

「任せときィ!」

 妖は隆樹を桑田に渡すと、来た道を戻り路地で追っ手を足止めした。


 その間に桑田は船の準備をした。エンジンをかけると、隆樹と桑田は乗り込み、妖を呼び戻す。

 妖は路地の道を氷で塞ぐと、海に足場を点々と作り、船に飛び乗った。

「いやァ~。何とか逃げ切れましたねェ」

「そうだね。……… 隆樹クン?」

 桑田が隆樹の方へ視線を移すと、隆樹は両腕で自らの体を抱き締めるようにしてその場にうずくまっていた。

 妖は慌てて隆樹の体を揺さぶりながら、名前を叫んだ。

「隆樹?……っ隆樹!!」

 しかし、隆樹の目は虚ろで、まったくの無反応だった。



 **** 夢の中 ****


(あの後、船に乗った後、俺は……どうしたんだ?)


 深い意識の底で、隆樹は必死に頭を働かそうとした。しかし、自分の今いる場所さえも、よく分からなかった。


(俺… もうこのままでいようかな?桑田さん達のところに戻ったら、煉獄王を倒さなきゃいけないし)


≪ナラ、尚更イケヨ。俺ハ、ソノタメニ イル≫


(ダメだ。この眼は、そんなことに使うために兄貴がくれたんじゃない)


≪ダガ、煉獄眼ディスホールドハ、ソレヲ望ンデイル≫


(何?)


≪破壊シロ!全テヲ無ニ!我ハソノタメニ存在スル!!≫


(っ……なら、こんな力、いるもんか!)


≪……フン。腰抜ケメ。ナライイダロウ、ソノ望ミ、叶エテヤロウ≫


(え…?)


≪ダガ、貴様ハイズレマタ、我ヲ必要トスルゾ!≫


(まっ、待て…っ)


≪己ノ無力サヲトコトン、嘆クガヨイ!フハハハハハ!!!≫



 **** 現実 ****


 意識が浮上した途端、左目に焼きつくような激痛が走った。

「っうぁ…っっ」

「隆樹!?」

「隆樹クン!!」

 俺は、左手で左目を抑え付け、痛みに堪えようとした。しかし、あまりの痛みに手を離し、左目は天を仰いだ。

 その瞬間、鮮血のように真っ赤な光が、両目に広がった。

 煉獄眼から放たれた深紅の光は、真っ直ぐに伸び、空を引き裂いた。そして、左目からは血の涙が流れて、船の上で一瞬結晶化すると、すぐに灰と化して風に流されていった。

 やがて、光は消え、俺の左目の深紅の輝きは、どこかへ消えてしまった。

 俺は空を仰いで、涙した。

「あぁ…。 空って、 こんなに青かった……のか …」

 そして、気が遠くなった。


 *** ***


 同時刻 逆京都府


「お?何や、あの光」

「…… 神宮寺クン。お茶ごちそう様」

「あれ?もう行ってまうの?」

「うん。 息子が、待ってるから」

 縁側に腰掛けていた中年の男は立ち上がって、いそいそと立ち去った。

 残された片眼鏡の青年は、溜め息をついて思う。



          ――――――――――何や、波乱の予感やわァ…――――――――――

*次回予告

 俺は、結局兄貴との約束を失くしてしまった。

 もう、俺はここにはいられない。

 誰か…っ助けてくれ!


 「哲平。まだだ」


 次回『約束を守れなかった少年』

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