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東京HEAVEN  作者: いとむぎあむ
Xの章
21/39

蘇生の魔人

 全部、僕が悪いんや。僕の浅はかな行動で、怪は自由を奪われた。せやから、もう二度と失うわけにはいかへんのや。

 もう、二度と…。



 *** 過去 ***



 妖は呼吸がうまく出来ず朦朧とする意識の中、目の前の男の背後の小さな影に気付いた。

 怪だ。怯えた表情で妖と男を凝視していた。妖は気付かれないように掌に氷で“逃げろ”と形作り、薄く弱々しく微笑んだ。


「やっ、やめてぇぇぇ!!!」


 しかし、怪は逃げなかった。逃げることなく、男の左腕に飛びついた。

「ぐっ!? 離せ!!」

「きゃっ」

 怪は振り落とされ、地に転がった。そして、ハッと振り返ると、顔に鮮血が飛び散った。

「ッ!? 兄さんッ!!!」

「っ…か、い…」

 地に落ちた妖を抱き締め、涙する怪。その怪までも始末しようと手を伸ばす男。しかし、


 (バチッ)


「ッ!?」

 怪の周りの空気が渦巻き、男の手には電流のような衝撃が走った。驚いた男は咄嗟に手を引っ込めた。

 そして、光り出した怪の体。その光りは怪と妖を包み込み、花びらの形になると蕾のようになったのだった。


 *** ***



 逆茨城 逆水戸

 芦原邸宅


「…?」

「…どうかしました? 慧翠けいすい。この歪蘭玉を目の前に余所見ですか」

「…フッ、君があまりに美し過ぎるから直視できないだけさ。愛してるよ、俺の桔梗」

 そう言って蘭玉の顔を上に向かせ、口付けしよとする男の唇に、今度は蘭玉が人差し指を添えて制止した。

「軽々しく愛を口にしないで。悪いクセよ。気付いてるんでしょ?『禁忌の第四の力』を持つ者が覚醒した」


 『禁忌の第四の力』。それは、“蘇生”“破壊”“呪詛”“時渡り”といった四つに関連する能力のこと。この能力は禁忌とされ、今まで四天王と呼ばれる元老院と評議会が保護してきた。


「…内海怪うつみかい。5歳、女子。ずっと前から気付いてたさ。だが、普通に生きてれば覚醒はありえない …はずだった」

「……行きましょう。お茶会は中止ね。仕事に行くわよ、慧翠」

「はいはい。今度は、一緒にアフタヌーンティーでもどうだい?蘭玉」

「…喜んで」

 評議会会長・芦原慧翠あしはらけいすいと大魔女・歪蘭玉が、逆東京へ向かう。


 *** ***


 光の中で、怪は死体になって冷たい妖の名を必死に呼び続ける。


「ねぇ、妖。私、私ね。妖が好きなの。大好きなの。本当は、兄妹きょうだいに生まれたくなかった…。 それぐらい、兄さんのこと、好きだよ」

「だから、死なないでよ。私を、独りにしないでよ……

                      死なないで!兄さん!!」

 

 光の外では、男とその仲間は呆然と見つめていた。

「孤陰様! この能力は…もしや!」

「…っ! 捜したぞ!!」

「やっと、あの方を…」


 やがて、光の蕾は花開き、中から妖を抱き締めた怪が現れた。

「…んっ」

 と、その時。怪に抱かれて死んだはずの妖が、息を吹き返した。

 怪は驚きや何故?という感情よりも先に、嬉しさがこみ上げた。

「兄さん!!」


「フフフ。見つけたぞ、蘇生の魔人よ!!」


「…ぇ?」

 両手を広げ、高笑いする男。そして、興奮が収まると怪に手を差し出した。

「…?」

「来い、この私と。お前のその力が必要だ」

「……行かない」

「…拒めばその少年をもう一度殺し、無理やり連れてゆく。お前の力は、“その対象の人間を一度だけ(・・・・)蘇生する力”だ。次、その少年が死んだら、お前は今度こそ、兄を永久に失うぞ」

 失う。その言葉に、怪は唾を飲む。ついさっきまで感じていた兄を失った悲しみがまた…。

 そう思うと、恐ろしくてたまらなかった。

「……兄さん」

 怪は妖をギュッと抱き締めた後、そっと妖を地に寝かせ、立ち上がる。

「フッ。良い判断だ」

 静かに男へ歩み寄り、差し伸べられたその手をとろうとした、


 その瞬間。


 怪の背後で眩い閃光が光った。

「!?」

「くっ!? 目くらましか!!」

 煙の中から姿を現したのは、上着をはためかせる評議会会長の芦原慧翠あしはらけいすいと、大魔女の歪蘭玉ひずみらんぎょくだった。


「魔王に仇名すテロ組織・莅豹りひょうのリーダー・孤陰!」



            ――――――――――アナタの身柄を拘束します!!――――――――――

*次回予告

 この想いは、誰にも知られてはならない。相手に悟られてはならない。

 この関係を維持するために、私は何も言わず、アナタから去っていく。でも、大丈夫。私とアナタは、対なるペンダントで、繋がっているから…


 次回『愛しき人の言葉』

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