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東京HEAVEN  作者: いとむぎあむ
Yの章
13/39

犠牲のもとで作られた結末(後編)

あの子は助かる。それならいい。宗助には最後まで迷惑かけちゃったな…。


護柱ナイツ樋口乃輪ひぐちのわ略奪者テレン容疑の疑いで、拘束します!」

「!…………あぁ」

 今日早朝、樋口乃輪、審判者ジャッジメントの署に連行された。

 そのことは、早くも桑田や護柱の全員の耳に入ってきた。

「なんてことだッ!まさか…っ乃輪が……――――!」

「…これはシャレになりませんよ、姉さん」

「フン。桑田、早まるなよ。まずは蘭星さんに任せな。必ず覆してくれる」

「ッ……」

 怒りに震える桑田を冷静に説得するイサナ。しかし、もし本当に乃輪が略奪者テレンで、自分の愛弟子を殺したのかも、と思うだけでイサナもいつ冷静さを失うから分からない。それが心配で仕方ないのは、弟の啓祐だ。

 そして、もう一人混乱している人物がいた。

 羅刹だ。

「…行かなきゃ。行こうよ、桑田」

「………――――そうだね」

 桑田は護柱ナイツの全員を連れて、逆裁判所へ向かう。


 *** …… ***


 略奪者テレン事件の裁判は早くも午後に執り行われることに。そこには、大魔人はもちろん魔王とその息子までもが出席していた。魔力を極限まで封じる特別な手錠をかけられ、乃輪が現れる。

「被告人、樋口乃輪。そなたの言い分を聞こう」

「……ッ」

 乃輪は口を噤む。

 ――――どうしよう。今私が何を言っても信じてもらえない。結局は私が犯人になる。そしたら、絶対私は罪罰牢獄エデン行き。……いや、でも、…………、

 乃輪は他者に気付かれないように、蘭星の横に座る羅刹を盗み見た。

 ――――………いや。それも…、悪くない――――


 乃輪の後ろで無罪を主張してくれることを信じる桑田達。



「……… 私が、略奪者テレンです」



 場が凍りついた。 そして、立ち上がり乃輪に駆け寄ろうとする桑田。

「乃輪!乃輪ァ!!!嘘だと言え!!」

「……、 目をそむけるな。桑田宗助」

「!………の…、わ?」

「私が、皆を殺した」

 混乱する桑田を殺意に満ちた瞳で、睨みつける。そして、瞳の奥で揺らぐ優しい眼差しに、桑田は気付かなかった。ただ、羅刹だけが気付いていた。 

 自分を庇った、のだと。


 *** …… ***


 判決は、自由刑。 特別な魔封じの檻に死ぬまで縛られ続ける。

 裁判所から罪罰牢獄エデンに連行される乃輪。 そんな彼女を引き止める声が響く。

「乃輪!!!」


「ら…せつ?」

 短い足で走ってくる羅刹。そして、乃輪の前に立ちふさがる。

「?」

「羅刹様!危険です。お下がりください!!」


「最後に、抱き締めて、私の頭をいつも見たいに…ッ、撫でてよ!!」


「…… おいで」

 乃輪はしゃがみ、手錠で広げられない両手を差し伸べた。すると、羅刹は目に涙を沢山溜めて飛びついてきた。その際、涙の雫がほろりと零れ落ちる。乃輪は右手で下から羅刹の頭を撫でた。



          ――――― 魂交換ガルフィティア ―――――


「!」

 羅刹が乃輪の耳元で囁いた。その瞬間。乃輪の意識は異様な浮遊感に襲われ、気が付いたら自分の眼の前に、自分がいた。 目の前にいた自分は、立ち上がると用意された車に乗り、走り去っていった。

 暫く呆然と立ち尽くしていた乃輪は、自分が羅刹になっていることに気付いた。


「ぁ……――――ッ あぁ…、 あぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」

*予告

 信じてた。 羅刹は羅刹だって。 でも、皆嘘だった。

 桑田さんも、妖君も、羅刹も、皆…、大嫌いだ!


 次回『少年はそれを、裏切りと言う』

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