消える生徒
クラスメートの南明菜が姿を見せなくなって、もう3日が経つ。他のクラスメートは、気にしたそぶりも見せずにいる。そればかりか、彼女の存在を忘れてしまっているかのようだった。
僕は同じクラスで、幼馴染の大輔に思いきって聞いてみたんだ。
「なあ、大輔。南さん3日も休んでるな。どうしたのかなぁ? 」
「南? ああ、そういえばクラスにいたかな? 休んでるの? 」
僕はびっくりした。だって南明菜は大輔の隣りの席なんだ! 南さんの事は忘れてはいないみたいだけど、まったく視界に入っていないと言うか、何といえば良いのだろう。とにかく不自然だ!
それもあの声が聞こえてからだ。
≪この声が聞こえた君はすぐに体育準備室に来てください≫
そう4日前の昼休みに聞こえてきた声だ。あの日、昼休み明けの授業から南さんは姿を消している。
少なくとも、僕は見ていないんだ。ひょっとしたら、まだ他にもいなくなった人がいるのかもしれない。
「ひかるちゃんのクラスではどう? 」
僕は【あげは】で、ひかるのクラスにもいなくなった人はいないか聞いてみたんだ。
「私のクラスにはいなくなった人はいないわね。舞さんのクラスは? 」
ひかるは、僕の質問に答えて、舞先輩に聞いたんだ。
「いるぞ。」
「えっ!いるの? 」
舞先輩の答えに僕はおもわず大きな声を上げていた。
「ああ、そう、あの声が聞こえた日からだ。その娘はな、もともと目立たない娘なのだ。2年の時はいじめられていた。あまり陰湿なんで、私が『いじめ』をやめさせた。
私も『あの声』が関係あるのかもしれないとは思っていたのだが。ひょっとしたら私の見えない所でいじめられて不登校になったのかもな、とも思っていた所だ。」
「『あの声』ね。タイミングが合いすぎるわ。」
とりあえず僕らは、他にも『消えた』生徒はいないか調べることにした。そして、僕は南さんの家に、舞先輩も消えたクラスメートに電話してみることにしたんだ。
僕はほとんど女の子と話した事がないんだ。ひかると出会って、ひかるや舞先輩とやっと普通に話せるようになったんだ。友達も少ないし、電話なんかかけたことないから緊張するけど、電話したんだ。
メモを握りしめて……。
「もしもし、南さんのお宅でしょうか? 私、望月と言いますが、明菜さんはいらっしゃいますか? 」
「はあ、それが明菜はいないんです。」
「えっ。病気ですか? 入院したとか? 」
「いえ、そうじゃないんです。実は口止めされているんですけど…… 。」
「あの、教えてください。お願いします。あの、えっと、明菜さんに貸してる物があって、そ、その困るんです。いつお帰りですか? 」
「分からないんです。あの、この事は誰にも言わないでくれます? 実は文部科学省の方が見えて、娘は優秀だから、特別にプログラムを組んだのでしばらく預かるって連れて行ったんですの。うちの娘は成績良くないんですけどねぇ。」
「あ、そ、そうなんですか……。わ、わかりました。」
僕は電話を切った。
文部科学省…… きっと『あの男』が連れて行ったんだ。僕はそう思った。
次の日、舞先輩に聞くと舞先輩のクラスメートもやっぱり同じだった。文部科学省の人が連れて行ったらしい。それから、僕の学年ではあと二人が、舞先輩の3年ではもう一人がいなくなっている事が分かったんだ。
僕達が【あげは】でそういう話をしていたらね。マスターが呟いたんだ。
「危ないな。君らもそのいなくなった子達も……。いいかい、ひかる、もう学校で色々探るのはやめるんだ、いいね。私が少し調べて見るから……。」
マスターの顔はいつもの優しい顔じゃなくて、とっても真剣だったんだ。




