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へなちょこESP倶楽部  作者: 鳥越 暁
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3/18

憧れの舞先輩

 重い気持ちで僕が【あげは】に入っていくと、いつもの席にはもうひかるが座っていた。


 「優太君、遅かったね~。」


 「うん、日直だったから…。」


 「ん?どうしたの? 元気ないな~。具合でも悪い? 」


 「ううん、なんか緊張しちゃってさ。ねぇ、ほんとにやるの?」


 「そうだよ。大丈夫だよ。任せて。」


 と胸を張ってひかるが自信満々に答えた。


 「よし!仕方ない頑張るよ!」


 やっと僕は決心したんだ。


 「ふふふ、じゃあ、少し訓練して、備えようね。」


 「えっ! 今日じゃないの? 」


 僕は今日捕まえに行くと思っていたのだ。


 「ぷっ!それで緊張してたのね。きゃはは、でもちゃんと作戦を練って無理のないようにしなくちゃね。」


 「そ、そうだよね。ふ~ぅ、そっか、今日じゃないのかぁ。」


 僕は心の底から安心したんだ。




 『からんっ』


 誰かが【あげは】に入ってきた。僕はそちらに顔を向けて見ると…。


 「あ、舞先輩だ! 」


 そこには憧れの先輩がいた。舞…彼女は優太たちの1年先輩の3年生で日向舞、弓道部の部長だ。全国大会なんかにも入賞するほどの実力の持ち主なんだけど、ボーイッシュで可愛くて全校生徒の憧れの的なんだ。


 「よっ! ひかる、なに? 話って? 」


 舞先輩は僕の事など目に入らないようでひかるに話しかけた。


 「まあ、座って、舞さん。あと、こちらが新しいメンバーの優太君だよ。」


 と言ってひかるは僕を指差した。

 舞先輩は、はじめて気付いたかのように、僕をまじまじと眺めるとこう言ったんだ。


 「ふむ、よろしく。君は線が細いな。」


 舞先輩に話しかけられて、僕のどきどきは最高レベルだ!


 「あ、ああああの、もももも望月ゆゆゆゆゆ優太です! よよよよよよ、よろしくお願いしまちゅ! 」


 緊張のあまり、吃音が激しくなってしまったうえに『ちゅ』ってなんだよ! 僕ってやつは…。僕は顔を真っ赤にして俯いた。


 「はははは、面白いな、君は! 」


 舞先輩は笑いころげた。



 ともあれ簡単な自己紹介が終わり、3人は落ち着いて席についた。

 この頃になると、ようやく落ち着いた僕は舞先輩に聞いた。


 「あの、舞先輩はどんな力を? 」


 「私か? 私は瞬間移動だが…。」


 「す、すげえ!…じゃない、すごいですね! 」


 「いや、すごくはないぞ。なにしろ5分の精神集中を必要とする上に移動できるのは僅かに30cmだからな。」


 「え、でもすごいですよ! 」


 「よく考えて見ろ。30cmを移動するのに君はどの位の時間を必要とする? 」


 言われて考えると確かに、1秒もかからないや。


 「だから、へなちょこな力なんだよ、私も。」


 と舞先輩は照れくさそうに言った。


 「で、でも、やっぱりすごいです。もし何処かに閉じ込められても抜け出せるじゃないですか。」


 と僕は言った。


 「ふむ、その時に壁の厚さが30cm以下ならな。30cm以上なら私は壁の中に取り残されてしまう……。 それに何処かに閉じ込められるような場面はあまりないだろう!?  」


 といって舞先輩は笑う。


 「舞さん、大丈夫だよ。舞さんの力も伸びてきてるわ。」


 「だといいんだが…。ところで今日は何の話なんだ? 」


 「あ、そうだ、実はね…。とその前に、マスター! ニルギリ3つ早く頂戴! 」


 と紅茶を催促した。




 紅茶が来て一口飲むと、ひかるは落ち着いて『万引き犯逮捕大作戦』を話した。


 「そうか、久しぶりの活動だな。楽しみだ。でいつなのだ? 」


 「うん。テストが終わって夏休みにしようと思うんだけど。舞さんは夏休みは忙しい? 」


 「いや、部活は引退したからな、大学も推薦で決まりそうだし、とりたててやることはない。」


 「そう。優太君は? 」


 「僕も大丈夫です。」


 「じゃあ、夏休みに決まりだね。」



 こうして『万引き犯逮捕大作戦』は夏休みに決行と決まった。



 テストの直前まで僕は【あげは】に毎日顔を出した。ひかるから毎日スプーンを曲げるように言われていたんだ。毎日、マスターがスプーンを出してくれる。


 「優太。いいかい、数多く曲げればいいってもんじゃないんだよ。集中して、いかに少ない力で大きく曲げられるかなんだ。」


 とマスターは言う。きっとマスターも力を持っているんだなって思うんだ。

 さすがにテスト期間中は顔を出さずに自宅にすぐに帰ったけど、勉強の合間にスプーンを曲げた。

 


 テストの結果は相変わらずだけど、ようやく終わって久しぶりに【あげは】に顔を出したんだ。

 いよいよ大作戦がはじまる…・

 

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